2021 Fiscal Year Annual Research Report
Role of lysophospholipid metabolism enzyme Gdpd3 in regulating lipoquality in cancer stem cells
Project/Area Number |
20H03517
|
Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
仲 一仁 広島大学, 原爆放射線医科学研究所, 准教授 (70372688)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
坂本 直也 国立研究開発法人国立がん研究センター, 先端医療開発センター, ユニット長 (20571798)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | CML幹細胞 / リゾリン脂質代謝 / リゾホスフォリパーゼD / Gdpd3 / FOXO3a |
Outline of Annual Research Achievements |
近年,脂質代謝産物による生命現象の分子メカニズムの解明を指向した『リポクオリティ制御』の研究が脚光を浴びている.リゾリン脂質やリゾホスファチジン酸 (LPA) はグリセロール骨格に1本の脂肪酸エステル基を持つ脂質分子であり,これまで,グリセロリン脂質や脂質メディエータの生合成中間体として考えられてきた.しかし,近年,リゾリン脂質やLPA自身も親水性が高く,シグナル伝達や遺伝子発現制御を担うセカンドメッセンジャーとしての機能が注目されている.本研究では,慢性骨髄性白血病(CML)のマウスモデルを用いて,リゾリン脂質代謝酵素Gdpd3によるCML幹細胞の自己複製能の維持や抗がん剤抵抗性の制御機構の解明を目的とした研究を実施している. これまでに,Gdpd3遺伝子のノックアウト(KO)マウスを樹立して生体内におけるCML幹細胞の自己複製能の維持について解析を行った.その結果,Gdpd3によるリゾリン脂質代謝はCML幹細胞の長期間の自己複製能の維持に必須な役割を担うことが判明した.また,Gdpd3 KOマウス由来のCML幹細胞は細胞周期の休眠状態の制御が異常となっており,白血病発症能が低下していることが明らかとなった.さらに,野生型CML幹細胞では未分化性の維持に関わるFoxo3aとbeta-cateninの相互作用が検出されたのに対して,Gdpd3 KO CML幹細胞ではFoxo3aが細胞核から細胞質へと排出され,Foxo3aとbeta-cateninとの相互作用が低下していることが判明した.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
CML幹細胞の長期間の自己複製能の維持におけるGdpd3の役割を明らかにするため,Gdpd3 KO幹細胞においてCML幹細胞の維持に必須な細胞周期のG0期での制御の解析を行った.まず,野生型,並びにGdpd3 KOマウスから造血幹細胞を純化し,BCR-ABL1遺伝子を導入後,マウスに移植してCML幹細胞の一次移植を行った.これらのCML発症マウスにBrdUのパルスラベルを行い,生体内でのCML幹細胞における細胞周期分布の解析を行なった.その結果,野生型CML幹細胞と比較してGdpd3 KO CML幹細胞ではDNA合成期 (S期) の細胞頻度が増加していることが判明した. 次いで,蛍光免疫染色を行い,細胞増殖に関わるAktとS6リボソーマルタンパク質のリン酸化状態を解析した.その結果,野生型マウス由来のCML幹細胞ではAktやS6のリン酸化が低下しているのに対して,Gdpd3 KOマウス由来のCML幹細胞では,AktとS6のリン酸化レベルが亢進していることが明らかとなった.従って,Gdpd3 KO CML幹細胞ではPI3K-Akt-mTORC1経路が活性化して細胞周期のS期の細胞頻度が増加していると考えられる. さらに,野生型CML幹細胞において,幹細胞性の未分化性の維持に関わるFoxo3aが細胞核に局在して活性を有していた.それに対してGdpd3 KO CML幹細胞ではFoxo3aは細胞核から細胞質へと排出され,活性を喪失していることが明らかとなった.また,野生型CML幹細胞ではFoxo3aとbeta-cateninとの相互作用が検出されたが,Gdpd3 KO CML幹細胞ではFoxo3aとbeta-cateninとの相互作用が低下していた.
|
Strategy for Future Research Activity |
2022年度は,野生型マウス由来CML幹細胞,並びにGdpd3 KOマウス由来CML幹細胞を用いて,Gdpd3の下流でCML幹細胞の未分化性の維持や抗がん剤抵抗性の制御に関わる分子機構を解明する計画である.まず,Gdpd3 KOマウスとテトラサイクリン誘導型CMLマウスモデル(Scl-tTA・tetO-BCR-ABL1ダブルトランスジェニックマウス)との交配を行い,Gdpd3 KO テトラサイクリン誘導型CMLマウスモデルを樹立する.このCMLマウスモデルは最も未分化な長期CML幹細胞を純化することができるCMLのマウスモデルである.野生型,並びにGdpd3 KO テトラサイクリン誘導型CMLマウスモデルから長期CML幹細胞を純化し,野生型・Gdpd3 KO CML幹細胞におけるRNAシークエンスを行なって,Gdpd3の下流の遺伝子発現解析を行う.一方,野生型・Gdpd3 KO CML幹細胞における脂質代謝産物やリピドメディエータのリピドミクス解析を行い,リゾリン脂質代謝酵素Gdpd3による下流の脂質代謝制御のメカニズムを解析する. また,野生型・Gdpd3 KO CML幹細胞を移植したマウスに対してチロシンキナーゼ阻害剤(TKI)であるイマチニブやダサチニブの投与を行い,CML幹細胞の抗がん剤抵抗性の制御におけるリゾリン脂質代謝の役割を明らかにする.次いで,in vitroで長期CML幹細胞に対してGdpd3を抑制する低分子量化合物の処理を行い,CML幹細胞の抑制効果を有する化合物の探索を行う.さらに,CML幹細胞を移植したマウスに対して上記のin vitroの解析でCML幹細胞の抑制効果の認められた化合物とTKIとの併用投与を行い,リゾリン脂質代謝をターゲットとする抗がん剤抵抗性CML幹細胞の治療方法の開発を行う.
|
Research Products
(16 results)
-
-
-
-
[Journal Article] Pterostilbene downregulates BCR/ABL and induces apoptosis of T315I-mutated BCR/ABL-positive leukemic cells2022
Author(s)
Kawakami S, Tsuma-Kaneko M, Sawanobori M, Uno T, Nakamura Y, Matsuzawa H, Suzuki R, Onizuka M, Yahata T, Naka K, Ando K, Kawada H
-
Journal Title
Scientific Reports
Volume: 12
Pages: 704
DOI
Peer Reviewed / Open Access
-
[Journal Article] RUNX1 transactivates BCR‐ABL1 expression in Philadelphia chromosome positive acute lymphoblastic leukemia2021
Author(s)
Masuda T, Maeda S, Shimada S, Sakuramoto N, Morita K, Koyama A, Suzuki K, Mitsuda Y, Matsuo H, Kubota H, Kato I, Tanaka K, Takita J, Hirata M, Karaoke T, Nakahata T, Adachi S, Hirai H, Mizuta S, Naka K, Imai Y, Kimura S, Sugiyama H, Kamikubo Y
-
Journal Title
Cancer Science
Volume: 113
Pages: 529~539
DOI
Peer Reviewed / Open Access
-
[Journal Article] Statins Enhance the Molecular Response in Chronic Myeloid Leukemia when Combined with Tyrosine Kinase Inhibitors2021
Author(s)
Jang H-J*, Woo YM*, Naka K*(*contributed equally ), Park J-H, Han H-J, Kim H-J, Kim S-H, Ahn JS, KimTH, Kimura S, Zarabi S, Lipton JH, Minden MD, Jung CW, Kim H-J, Kim J-W, Kim DDH.
-
Journal Title
Cancers
Volume: 13
Pages: 5543~5543
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-