2020 Fiscal Year Annual Research Report
Uncover pathomechanism of megalencephaly using brain organdies.
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20H03646
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
齋藤 伸治 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 教授 (00281824)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
加藤 洋一 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 教授 (10815161)
大石 久史 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 教授 (30375513)
嶋田 逸誠 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 講師 (40833265)
宮 冬樹 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 講師 (50415311)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 巨脳症 / 脳オルガノイド / iPS細胞 / 神経発生 |
Outline of Annual Research Achievements |
巨脳症患者を対象としたパネル解析を2020年度は30名に実施した。そのうち、12名(40%)に原因変異を同定した。変異が同定された遺伝子はPTENが7例と最も多く、次にPIK3CA 3例、AKT3 2例であった。PIK3CA 3例は全てモザイク例であった。患者情報(臨床症状及びMRI)と遺伝子変異情報を蓄積し、データベースの作成を行なった。 脳オルガノイドによる実験系を確立するとともに、神経幹細胞からの分化の評価を行うために、脳形成障害の原因遺伝子の一つであるPNPLA8遺伝子変異を正常ヒトiPS細胞に導入し、ノックアウト細胞を作成した。このPNPLA8 KO iPS細胞から脳オルガノイドを作成し、正常脳オルガノイドと比較検討した。その結果、PNPLA8 KO脳オルガノイドでは神経細胞の分化が障害され、脳オルガノイドサイズが増大することを示した。これらの実験を通して、iPS細胞への変異導入、脳オルガノイドの分化誘導、脳皮質発生の再現を確認した。さらに、PNPLA8変異での脳形成障害を脳オルガノイドで再現することができた。 マウスモデル作成については、MYCNの機能亢進型変異及び機能喪失型変異導入マウスについて解析を進めた。機能亢進型変異は妊孕性が低下するため、人工授精による変異マウスの作成が必要であった。変異マウスの脳組織での解析により、機能亢進型変異では大脳皮質の厚さが増すのに対して、機能喪失型変異マウスでは大脳皮質の厚さが減少することが再現できた。さらに、機能亢進型マウスでは多指症が再現され、ヒト患者での病態が再現された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
巨脳症患者を対象とした遺伝学的解析は、全国から患者解析を依頼されている。2020年度は例年と同様の患者数を解析しており、順調に経過している。解析した患者データによるデータベースは順調に増加しており、患者数の増加により質が向上した。我が国における巨脳症の解析拠点としての責任を果たしていると考える。 iPS細胞から脳オルガノイドを作成する系については、すでに確立していたが、2020年度においては脳形成障害の原因遺伝子の一つであるPNPLA8遺伝子変異を導入した脳オルガノイド作成を行い、大脳皮質発生の再現に成功した。この解析を通して、神経幹細胞からの分化過程を精緻に解析することができ、患者由来変異を用いた脳オルガノイドによる解析系が完成したと考えている。 さらに、遺伝子改変マウスを用いた解析においては、私たちが世界に先駆けて同定したMYCNの機能亢進型変異導入マウス、及び機能喪失型変異導入マウスの解析を進めた。大脳皮質の表現型として、それぞれ皮質厚の増大と減少を再現することに成功した。遺伝子改変マウスの解析については順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は、巨脳症患者の集積と解析及びデータベースの作成、脳オルガノイドを用いた解析および遺伝子改変マウスによる解析を統合的に実施することで巨脳症の病態を解明し、治療法の開発のシーズを得ることを目的としている。そのため、それぞれのパートが連携を保ちつつ、着実に進捗することが重要である。その意味で、2020年度はそれぞれのパートにおいて予定通りの進捗が得られており、順調に経過している。今後は予定通り、それぞれのパートの研究を推進する。 患者解析については、我が国唯一の巨脳症解析センターとしての機能を維持している。引き続き解析を継続することで、患者を集積し、データベースの充実を図る。新規の疾患が予想される場合は積極的にゲノム解析を行い、新規原因遺伝子の同定を目指す。 脳オルガノイド研究ではヒト疾患の再現ができており、解析系は完成している。すでにPNPLA8遺伝子機能について、脳オルガノイドを用いて、疾患の再現をするとともに、病態についてのデータを得ている。これらの結果は世界初であり、脳オルガノイドを用いた研究の優位性を確信している。今後、他の遺伝子変異の導入を進め、さらにデータの蓄積を図る。 遺伝子改変マウスはMYCN変異マウスにおいて順調にデータを得ており、MYCNの脳発生における役割の解明に資している。今後マウスの行動解析を予定しており、質の高いデータ収集を予定している。 これらを連携して継続することで、統合的な巨脳症研究を推進する。
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Research Products
(9 results)
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[Presentation] 当院でエキソーム解析を実施した小児神経疾患症例の臨床的検討.2020
Author(s)
堀いくみ, 宮冬樹, 中島光子, 中村勇治, 家田大輔, 大橋圭, 根岸豊, 服部文子, 安藤直樹, 角田達彦, 才津浩智, 金村米博, 小崎健次郎, 齋藤伸治
Organizer
第62回日本小児神経学会学術集会
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