2021 Fiscal Year Annual Research Report
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20H03648
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Research Institution | Jichi Medical University |
Principal Investigator |
小坂 仁 自治医科大学, 医学部, 教授 (90426320)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
秋山 泰 東京工業大学, 情報理工学院, 教授 (30243091)
山口 雄輝 東京工業大学, 生命理工学院, 教授 (50345360)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ミトコンドリア病 / Leigh脳症 / MELAS / アポモルフィン |
Outline of Annual Research Achievements |
ミトコンドリア病は、呼吸鎖複合体をコードする、核あるいはミトコンドリア遺伝子の変異により、ATP産生産生不全と、酸化ストレス; Reactive Oxygen Species (ROS) により、細胞機能不全をおこし、細胞死に陥る疾患である。我々は、ミトコンドリア病患者の皮膚繊維芽細胞を用い中枢神経薬のライブラリースクリーニングを行い、Apomorphine (Apo)がROSによる細胞死を強力に阻害し、かつATP産生増強作用をもつことを初めて見出した(PH-7699-PCT 51802298249)。この研究においてapoの細胞死抑制経路を明らかにし、新規ミトコンドリア病治療薬を創出する。 Apoについて、現在までにミトコンドリア病のうちLeigh脳症とMELASについて、患者細胞を用いてその有効性を確認していたが、更にLeigh脳症とMELAS以外の病型;ミトコンドリア肝症、ミトコンドリア心筋症、Kearns-Sayer症候群(KSS)においてBSOの系を用いてついて患者皮膚線維芽細胞に対するApoの薬効を確認した。またApoのターゲットタンパクの同定として、機能性ナノ磁性微粒子であり半田ビーズを用いたin vitro試験により酵素Xを同定した。Apoが補酵素および基質存在下でApo結合分子の活性を上昇させ、ミトコンドリア病の指標となる還元ストレスの改善を確認した。またこの結合分子はフェロトーシスの防御因子であったため、Apoの抗フェロトーシス作用を検討したところ、Apoのもつ強力な抗フェロトーシス活性を確認した。フェロトーシスは神経変性疾患をはじめ多くの老化に関連した疾患の原因となることが知られるため、Apoの機序を解明するとともに、各種誘導体を作成し抗フェロトーシス薬として広範な疾患への適応を確認していく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Apoが、標的分子である酵素Xの活性を増強することからフェロトーシス阻害作用について詳細に検討した。Leigh脳症患者細胞に対してフェロトーシス誘導薬であるRSL3、FIN56、Artesunateで細胞死を誘導し、Apoを添加したところ、正常細胞よりも脆弱であったが、Apoは各種のフェロトーシス阻害薬であるFerrostatin-1、Liprostatin-1、DFOと同程度に細胞生存率の改善を認めた。RSL3負荷時に、アポトーシス/ネクローシス阻害薬であるZ-VAD-FMK、GSK-872を使用した際は、細胞死は抑制されなかった。さらに、リアルタイムPCRでフェロトーシス関連分子の定量を行ったところフェロトーシスのバイオマーカーであるPTGS2発現がRSL3負荷で20倍に増加するが、Apoの添加により正常化することを示した。 以上より、Apoがミトコンドリア病患者皮膚線維芽細胞のフェロトーシス脆弱性を改善させることを示した。酵素Xの活性向上剤は、今まで知られていない。フェロトーシスが関連する疾患としては、神経変性疾患や虚血再灌流が関与する多くの疾患等が知られている。また、この酵素Xは、酸化還元反応によりNAD+と還元型CoQ10を増加させる。NAD+や還元型CoQ10は加齢・遺伝性および外因性素因によるミトコンドリア機能低下により、神経変性疾患や老化等様々な病態に関わることが知られており、Apoを基に開発した酵素Xの活性向上剤は、フェロトーシス阻害作用とATP産生、NAD+増強作用とを併せ持つ、全く新規の作用様式であることから、ミトコンドリア機能低下に関連した疾患に対して治療薬となる可能性がある。
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Strategy for Future Research Activity |
ミトコンドリア病の治療薬としては、現在のドパミン受容体アゴニストを持たず、嘔吐作用のない薬剤が望ましい。Apoの構造類似性計算から類似化合物26種類を入手し、さらに国内で合成可能な12種類の誘導体を合成した。計38種類の薬剤についてドパミン受容体を安定発現するCHO細胞を用い、FRETでドパミン受容体結合測定系を確立し候補化合物を解析した。ドパミンアゴニスト活性のない薬剤を多数抽出した。また、同時に38種類の薬剤の抗細胞死活性 (EC50) を測定し、Apoと同等の活性を持つ薬剤を見出した。またミトコンドリアでは、エネルギー需要に応じて炭素原子の同化作用と異化反応の調節が行われている。生体エネルギーの大部分をミトコンドリア呼吸鎖複合体によるATP産生によって担われるが、その過程ではROSの発生が不可避であり、それによるタンパク、脂質、DNA損傷は老化関連疾患の発症に密接にかかわるため、ミトコンドリア機能を改善させる薬剤は老化関連疾患の治療・予防薬としての発展性がある。現在Apoは、パーキンソン病患者のオフ期の治療薬として使用されているが、患者の認知機能増強作用が報告されている。また、アルツハイマー病のモデルマウスに対して、短期記憶を改善し病理学的なAβ、リン酸化タウを減少させたと報告がされている、パーキンソン病やアルツハイマー病の発症にはミトコンドリア機能の低下が関与していることが明らかになってきておりApoがミトコンドリア機能を改善する標的分子酵素Xを活性化することで神経変性疾患の治療効果を発現しているものと考えている。今後ミトコンドリア機能低下にかかわる広範囲な疾患への創薬が可能となる可能性がある。アカデミアでの共同研究としてアルツハイマー病モデル、パーキンソン病モデル、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、糖尿病に対する評価を行う。
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Research Products
(7 results)
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[Journal Article] Valine-restricted diet for patients with ECHS1 deficiency: Divergent clinical outcomes in two Japanese siblings2021
Author(s)
Sato-Shirai, I. Ogawa, E. Arisaka, A. Osaka, H. Murayama, K. Kuwajima, M. Watanabe, M. Ichimoto, K. Ohtake, A. Kumada, S.
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Journal Title
Brain Dev
Volume: 43
Pages: 308-313
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Valine metabolites analysis in ECHS1 deficiency2021
Author(s)
Kuwajima, M. Kojima, K. Osaka, H. Hamada, Y. Jimbo, E. Watanabe, M. Aoki, S. Sato-Shirai, I. Ichimoto, K. Fushimi, T. Murayama, K. Ohtake, A. Kohda, M. Kishita, Y. Yatsuka, Y. Uchino, S. Mimaki, M. Miyake, N. Matsumoto, N. Okazaki, Y. Ogata, T. Yamagata, T. Muramatsu, K.
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Journal Title
Mol Genet Metab Rep
Volume: 29
Pages: 100809
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Leigh syndrome-like MRI changes in a patient with biallelic HPDL variants treated with ketogenic diet2021
Author(s)
Numata-Uematsu, Y. Uematsu, M. Yamamoto, T. Saitsu, H. Katata, Y. Oikawa, Y. Saijyo, N. Inui, T. Murayama, K. Ohtake, A. Osaka, H. Takanashi, J. I. Kure, S. Inoue, K.
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Journal Title
Mol Genet Metab Rep
Volume: 29
Pages: 100800
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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