2020 Fiscal Year Annual Research Report
腸内細菌由来のメッセージ物質の機能解明と循環器疾患との関連解明研究
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20H03676
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
平田 健一 神戸大学, 医学研究科, 教授 (20283880)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉田 尚史 神戸大学, 医学研究科, 医学研究員 (00846321)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 腸内細菌 / リポ多糖 / 外膜小胞 / 炎症 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、循環器疾患と腸内細菌叢との関連調査研究の中で注目することになった腸内グラム陰性桿菌由来の『リポ多糖(lipopolysaccharide; LPS)』と『外膜小胞(Outer membrane vesicles; OMVs)』が持つ生体作用を解明し、疾患発症との関連を探究する事である。そのために、腸内細菌から①LPS と②外膜小胞 を独自に単離し、その機能や体内動態を明らかとする。加えて、③腸管内のLPSや外膜小胞が遠隔臓器である心・血管に与える影響をマウスを用いて検証し、患者糞便を用いたトランスレーショナルリサーチに展開する礎となる研究を行う。 当研究室の研究の成果として見出され、以前から注目している動脈硬化予防菌Bacteroides 2菌種からの高純度LPSの単離(京都大学農学部との共同研究)はできており、細胞実験や動物実験を実施している。Bacteroides-LPSの活性をLPS活性測定法(LAL法)にて評価すると、大腸菌由来LPSに比較して、約7~10分の1程度の活性であった。さらに、単球系培養細胞を刺激した際の、サイトカイン産生能に関しても、大腸菌LPSに比較して10倍以上の濃度での刺激でも同等にはならない結果であり、Bacteroides-LPSは非常に炎症惹起性が弱いということが示された。 細菌由来のOMVsの単離に関しては、商業販売されているキットを用いて実施したが、電子顕微鏡で確認するとうまく単離ができていなかった。そこで、培養液から超遠心法を用いてヒトのエキソソームの抽出方法に準じて実施することで単離することに成功できた。以上、LPSもOMVsも、各種実験に使用できる環境を整えることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
LPSを用いた細胞実験も動物実験も順調に進行している。 OMVsの単離に、かなりの時間を要する印象を持っていたが、初年度内に成功し、電子顕微鏡で確認しても、実験に使用できるレベルの不純物の少ない安定したOMVsを確保できたので、計画を順調に進めることができている。
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Strategy for Future Research Activity |
LPS・OMVsともに培養細胞の刺激実験やマウスへの投与実験を実施し、両細菌由来物質の生体内機能への影響を評価する。投与実験は、(1)腹腔内に直接投与して全身や各種病態モデルへの影響と作用機序を確認すること (2)腸管内に投与して、実際に腸内細菌由来のOMVsの血中への移行を調査する。LPSもOMVsも、常識的に考えられている生体移行機序をあてにせず、科学的に再評価する実験を実施していく。 LPSに関しては、腸管内の糞便の活性に比較して、血液中の活性は10万分の1程度であり、腸管からの吸収機構・透過性・不活化機構などの様々な生体機能によって維持され、炎症から生体を守っている現状があると考えられる。これらを解明することで、抗炎症的な環境を維持するような、炎症・免疫疾患の治療法の創出につながる可能性があり、研究を進める。OMVsに関しては、さまざまな細菌由来蛋白やmicroRNAを含有しており、宿主の生体内で、ヒト由来のエキソソームを同じように遠隔臓器の機能・遺伝子発現に影響を与える可能性がある。単離に成功したOMVsを用いて、まずは科学的に、OMVsが腸管内から血液中に移行するかどうかの検証を実施する。
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Research Products
(9 results)