2020 Fiscal Year Annual Research Report
新規SWI/SNF複合体の機能喪失に基づくMDS発症機構の解明と治療応用
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20H03717
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Research Institution | Foundation for Biomedical Research and Innovation at Kobe |
Principal Investigator |
井上 大地 公益財団法人神戸医療産業都市推進機構, その他部局等, 研究員(副センター長・部長クラス) (80735746)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 骨髄異形成症候群 / 造血幹細胞 / BRD9 / クロマチン / 細胞分化 / 急性骨髄性白血病 / CTCF |
Outline of Annual Research Achievements |
癌横断的に最も高頻度に変異が検出されるSF3B1遺伝子の下流標的であるBRD9の造血における役割を主にノックアウトマウスの作成を通して検証した。ノックアウトマウスはブロモドメインに該当するexon4-6を造血細胞特異的に欠失させるモデルを作成した。 当初の予想どおり、B細胞分化の抑制、好中球系への分化シフト、DNA損傷の蓄積、MDSの発症など、ヒト疾患を模倣する形質が確認できた。その背景にある遺伝子制御機構をRNA-seq, ATAC-seq他、マルチオミックス解析により検討し、エンハンサー、プロモーターを介した分化プログラムの脱制御を同定するに至った。例えば、好中球分化に必要な遺伝子においてスーパーエンハンサーが活性化するなど特徴的な所見が得られた。また、これらの作用はブロモドメイン依存性である一方、BRD9の未知の機能ドメインであるDUFドメインを介して、non canonical BAF (ncBAF)複合体と呼ばれるクロマチンリモデリング複合体を形成することを明らかとした。これらはBRD9がncBAFにおいて機能的に重要であるだけでなく、SF3B1変異細胞では転写後制御機構によりBRD9の喪失を介して、ncBAFの機能喪失をきたしていることを示している。さらに、ChIP-seqによりBRD9とクロマチンの3次元構造においてインシュレーターとなるCTCFがゲノム上で共局在することがあきらかとなっており、今後BRD9の喪失がクロマチン構造にどのように影響するのか、検討する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
BRD9抗体が販売中止となり、予定していたChIP-seqの実施が延長となった以外は、マウスモデルの解析やin vitroにおける培養分化実験、クロマチン状態の評価など、概ね順調に進展している。特に、長期観察することで、Brd9 KOマウスが骨髄異形成症候群や加齢性造血を反映できることが明らかとなり、モデルとしての妥当性も担保されたと期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
Brd9をノックアウトじた造血幹細胞を用いて、マルチオミックス解析で得られたデータを統合的に解釈する。これまでにBrd9がCtcfと共局在することで、クロマチン3次元構造を直接的あるいは間接的に制御するというデータが得られているが、ゲノムワイドにクロマチンループがどのような変化が生じ、とりわけどの領域の転写プログラムの変化が造血幹細胞の運命制御を規定するのか、探究を続けてゆく予定である。
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Research Products
(7 results)