2021 Fiscal Year Annual Research Report
Why does neuropathic pain spread beyond the area of control of the injured peripheral nerves?
Project/Area Number |
20H03775
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
馬場 洋 新潟大学, 医歯学系, 教授 (00262436)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
倉部 美起 新潟大学, 医歯学系, 助教 (30635579)
渡部 達範 新潟大学, 医歯学総合病院, 特任講師 (30748330)
大西 毅 新潟大学, 医歯学総合病院, 助教 (60804573)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 神経障害性疼痛 / 脊髄 / グリア / トロンボスポンディン / イメージング / パッチクランプ |
Outline of Annual Research Achievements |
令和3年度は週齢10週以上の大型成熟ラットから後根付き脊髄縦断スライスを作成できることを証明することができた。また、この縦断スライスを用いると後根進入部付近の後角細胞の興奮だけでなく、L5腰髄節から頭尾方向に少なくとも2分節くらいは脊髄後角神経細胞の興奮が広がることを証明することができた。また、従来の横断スライスと同様にオピオイドの投与により神経興奮の強さや興奮の広がる面積が縮小することを確認できた。さらに、bicuculline(GABA-A受容体拮抗薬)により興奮の強さが増強することや興奮の頭尾方向への広がりが大きくなることも観察することができた。以上のことから、後根付き脊髄縦断スライスを用いて、脊髄後角神経細胞の興奮の頭尾方向への広がりを評価できる方法論を確立できたと考えられる。 また、脊髄の髄腔内にカテーテルを挿入する技術も確立できた。当初はカテーテルを脊髄腔内に挿入すると約半分のラットで何らかの神経障害が発生し、薬液の作用を観察できるような技術レベルではなかったが、現在ではほぼ全例で神経障害を起こすことなくカテーテルを挿入することが可能になった。そのカテーテルから、局所麻酔薬を注入すると後肢の運動麻痺が起こること、数時間で神経障害を起こすことなく麻痺から回復することも確認できた。逆に、bicucullineを注入すると疼痛閾値が明らかに低下すること、数時間で正常に戻ることも確認できた。以上のことから、トロンボスポンディンを含んだ薬液を注入する技術も確立できたと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和2年度は機器納入の大幅な遅れにより、これまでの脊髄横断スライスを用いて新規に購入したイメージング装置が正常に作動することを確認するだけにとどまった。しかし、令和3年度は本来の目的である脊髄縦断スライス作成が可能であること、そのスライスから神経興奮の強さ及び広がりを記録することができることを証明することができた。また、行動実験では脊髄髄腔内にカテーテルを挿入する技術を確立できたこと、及びそのカテーテルを使って局所麻酔薬をなどを注入し、薬物の作用を確認することができたことから、当初の計画よりは多少遅れ気味ではあるが、初年度の大幅な遅れを考慮すれば令和3年度に関してはおおむね順調に進んでいると判断できると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
令和4年度は、まず脊髄腔内にトロンボスポンディンを注入したラットと生理食塩水を注入したラットを作成し、その後、1日ごとに足底・下腿・大腿をvon Frey hairで刺激して逃避閾値を調べる。令和3年度の予備実験では、トロンボスポンディンの脊髄腔内注入によって後肢足底の疼痛閾値が低下することを確認している。令和4年度は疼痛閾値低下領域が大腿前面や下腿後面(つまり、後肢足底に対して異分節領域)に広がっていくかどうか、もし広がっていくとしたらトロンボスポンディン注入後、最も疼痛閾値低下領域が広がる時期を行動実験によって経時的に調べる。 次に、最も疼痛閾値低下領域が広がった時期のラットを使用して脊髄縦断スライスやin vivoでのカルシウムイメージング及びフラビンイメージングを行い、神経興奮領域が頭尾方向に広がっているか確認する。また、脊髄縦断スライスからのin vitroパッチクランプまたはin vivoパッチクランプ法によって神経興奮が広がっている分節(L3,L4,S1など)の後角細胞から電気生理学的に記録し、自発性シナプス後電流の発生頻度と後根の電気刺激や足底以外の範囲の後肢刺激に対する反応を正常ラットと比較する。 最後に、時間的に可能であるならば、超高解像度顕微鏡を用いてL3,L4,L5,S1レベルの脊髄後角におけるシナプス新生の有無をトロンボスポンディンを注入したラットと正常ラットで比較する予定である。
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