2021 Fiscal Year Annual Research Report
内有毛細胞・蝸牛神経間シナプスをターゲットとした聴覚再生治療の新規開発
Project/Area Number |
20H03833
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
欠畑 誠治 山形大学, 医学部, 教授 (90261619)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
寺田 小百合 山形大学, 医学部, 医員 (40795697)
伊藤 吏 山形大学, 医学部, 准教授 (50344809)
天野 彰子 山形大学, 医学部, 医員 (50787249)
杉山 元康 山形大学, 医学部, 客員研究員 (60637255)
窪田 俊憲 山形大学, 医学部, 客員研究員 (80536954)
小泉 優 山形大学, 医学部, 医員 (80723585)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 内耳 / 聴神経 / 有毛細胞 / シナプス / 再生 / 神経 / 再生医学 / ROCK阻害薬 |
Outline of Annual Research Achievements |
難聴を引き起こす三大原因は、騒音暴露、薬物、そして加齢である。最新の研究により、音響性や薬剤性、加齢性聴覚障害の初期病変として内有毛細胞と蝸牛神経間のシナプス病理、Cochlear Synaptopathy(primary neural degeneration)の病態が注目されている。本研究では、Cochlear Synaptopathyモデルマウスを作成し、内耳障害における内有毛細胞・蝸牛神経間のシナプス再生の可能性を検討する。現在は神経保護効果および神経・シナプス再生作用を有するとされるROCK阻害薬に着目し検討を行っている。ROCK阻害薬は緑内障や脳血管攣縮の分野では保険適応薬剤としてすでに臨床応用されており、本研究により聴神経障害に対して有効性が確認できた場合、聴覚障害に対する画期的な治療薬として内耳再生研究のブレークスルーとなることが期待される。 引き続きROCK阻害薬の蝸牛神経障害に対する再生効果をin vivo実験系で検討するために研究を行っているが、新型コロナウイルスの流行により機能評価に必要なABR、DPOAEの設置が遅れてしまった。このため、当初の予定よりも遅れが生じているが、現在はCochlear synaptopathyモデルの作製、評価開始しており、本年度には予定通りROCK阻害薬を投与し、その効果について検討を行う予定である。 また、前年度より防衛医科大学校の水足らとlaser-induced shock wave(LISW)を用いたCochlear synaptopathyモデルに対するROCK阻害薬の効果の検討を行った。作製したCochlear synaptopathyモデルに、正円窓経由でROCK阻害薬を投与したところ、ROCK阻害薬10 mM投与群で、ABR第I波振幅の再増大及び、シナプス数の増加の可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度は、機能評価に必要なDPOAEを購入したが、新型コロナウイルス流行による緊急事態宣言発令に伴い設置に必要な技術員の移動が制限されたため、本格的な稼働開始が年度末となってしまった。また、前年度は機能評価のためのABRが故障したため一部機材の入替を行ったが、covid-19パンデミックの影響により納入に時間がかかってしまった。このため当初の予定よりも遅れが生じてしまったが、現在はCochlear synaptopathyモデルの評価が行える環境が整ったため、音響障害によるモデル動物の作製、評価を行っている段階である。本年度は実際にROCK阻害薬を投与し、その効果について検討を行う。 一方で、水足らとの共同研究では一定の成果を挙げることができ、結果をまとめて国際論文発表をおこなった。
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Strategy for Future Research Activity |
音響障害モデルはこれまでの報告に基づいて98dB、2時間の条件を中心にして調整を行っている。当科のモデルでも高周波領域でABRのI波の振幅が減少している個体を確認できている。 本年度はこれらの障害群を、生食局所投与群、ROCK阻害薬局所投与群、ROCK阻害薬全身投与群3群に分け、その後の解析の対象とする。障害モデルにROCK阻害薬を局所あるいは全身投与した後の、薬剤効果判定を行う時期としては、およそ2週間前後での評価を予定している。 障害モデルの評価には正常群と障害群の比較評価、治療効果判定には障害群(生食投与コントロール)と治療群(ROCK阻害薬局所投与、ROCK阻害薬全身投与) の比較検討を行う。1. 障害前の機能評価、2. 障害暴露、3. 24時間後に機能評価を行い、一過性閾値上昇を示した個体を選別し形態学的評価、4. 各グループに振り分けて薬剤投与、5. 治療後の機能評価・形態学的評価の流れで行う。 機能評価としては主にABRとDPOAEによる解析を行う。形態学的評価としては免疫化学組織法を行い、有毛細胞マーカーとしてRabbit anti- Myo7a、聴神経マーカーとしてChicken anti-NF200、前シナプスマーカーとしてMouse (IgG1) anti-CtBP2、後シナプスマーカーとしてMouse (IgG2a) anti-GluA2を使用した多重染色により解析する。共焦点レーザー顕微鏡を用いて3次元的な内有毛細胞、蝸牛神経線維、前シナプス、後シナプスの位置関係を確認する。
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Research Products
(7 results)