2020 Fiscal Year Annual Research Report
再生分化による網膜の機能再現と網膜変性疾患の新規治療
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20H03845
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Research Institution | National Rehabilitation Center for Persons with Disabilities |
Principal Investigator |
世古 裕子 国立障害者リハビリテーションセンター(研究所), 研究所 感覚機能系障害研究部, 研究部長 (60301157)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
金田 誠 日本医科大学, 大学院医学研究科, 大学院教授 (30214480)
梅澤 明弘 国立研究開発法人国立成育医療研究センター, 再生医療センター, 副所長/再生医療センター長 (70213486)
東 範行 国立研究開発法人国立成育医療研究センター, 感覚器・形態外科部, 診療部長 (10159395)
富田 浩史 岩手大学, 理工学部, 教授 (40302088)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 網膜 / 再生 / ダイレクト・リプログラミング / 網膜視細胞 / 網膜双極細胞 / ミュラー細胞 / 神経節細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
網膜は視覚の最前線を担い、一度損傷を受けると回復しない。本研究は、網膜変性疾患について、試験管内での病態解明や創薬に応用する変性モデル細胞の作製に向けて、低コスト・簡便で汎用性が高い細胞培養システムを確立するための基盤的研究である。我々はこれまでに、“ダイレクト・リプログラミング”と呼ばれる再生技術で、ヒト体細胞から約1週間で光刺激に応答する視細胞様の細胞を分化誘導できることを見つけ、この方法で作製した網膜色素変性患者細胞由来の変性視細胞モデルが病態解析の一助になることを示した。 すでに成功している“視細胞様細胞”の作製における課題を克服し“最終分化した網膜視細胞(杆体と錐体)”と“網膜前駆細胞”を低コスト・簡便・高効率で作製することを目指した。 本研究の初年度である令和2年度には、ヒト皮膚線維芽細胞を用いた“ダイレクト・リプログラミング”によって、①低コスト・鋭敏な評価系を目指し、変性視細胞モデルを用いたアッセイのスモールスケール化を進め、②当研究室で構築した、網膜分化関連転写因子が異なる順でシストロニックに結合された3種類のポリシストロニックベクターを用い、網膜発生過程の再現に関する検証すなわち分化レベルの検証を行った。分担者の東は、iPS細胞或いはES細胞から網膜細胞を分化誘導する研究を進めており、令和2年度には、1.ヒト或いは マウス由来のiPS細胞或いはES細胞から神経節細胞への誘導で、immunopanningによって純化することにも成功した。2.iPS細胞からMuller細胞の作製にも成功した。分子生物学的にはRT-PCRやマイクロアレイによる遺伝子の発現の変化の検討を進めた。 分担者の金田は、網膜双極細胞の代謝型グルタミン酸6型受容体の細胞内輸送や樹状突起への局在メカニズムに、C末領域がどのように関係しているのかについて検討を行い論文化された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和2年度は、目標はおおむね達成した。しかし、年度前半には、COVID-19の感染拡大防止の対策として緊急事態宣言下でもあり、必要最小限の実験に限定して実施した時期があったほか、フィルターチップなどの物品の供給が遅れたこともあり、1~2か月ぐらいの遅れも生じたが、順調に進んだ時期もあったため、全体としては大きな遅れは発生していない。
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Strategy for Future Research Activity |
“ダイレクト・リプログラミング”による網膜視細胞作製の応用範囲を広げることを目指し、ダイレクト・リプログラミングと網膜前駆細胞を経由するインダイレクト・リプログラミングを軸として、すでに成功している“視細胞様細胞”の作製における課題を克服し“最終分化した網膜視細胞(杆体と錐体)”と“網膜前駆細胞”を低コスト・簡便・高効率で作製することを目指す。さらに網膜双極細胞を新規に作製して網膜視細胞―双極細胞間シナプスを再構成し、網膜色素上皮細胞も合わせ、層別再生による網膜組織再構成を行い、病態解析、薬剤のスクリーニング、細胞移植に幅広く応用できるツールを開発し、これまで取り組んできたダイレクト・リプログラミングの技術の医療への応用につなげる基盤研究として知見を蓄積する。 令和3年度の方針としては、①誘導レベルの不完全性と不均一性の改善 ①-1 網膜前駆細胞の作製。遺伝子発現プロファイリングを行い、その結果を培養条件の条件検討にフィードバックしながら、各種網膜細胞への分化誘導を目指す。①-2 ポリシストロニックベクターの導入。昨年度中に構築した網膜分化関連転写因子が異なる順でシストロニックに結合された3種類のポリシストロニックベクターを用い、網膜発生過程の再現に関する検証、分化レベルの検証を行う。②ダイレクト・リプログラミングの適応拡大 ②-1 低コスト・鋭敏な評価系を目指し、変性視細胞モデルを用いたアッセイのスモールスケール化を進める。②-2 スモールスケールでの疾患モデルの検証を進める。昨年度に続き、EYS の変異を保有する網膜色素変性患者細胞にベクターを導入し変性視細胞モデルの作製、転写産物・変性蛋白の解析を行う。EYSと光トランスダクションとの関連等、ゼブラフィッシュモデルの結果も統合し、網膜変性機序につながる因子を同定する。
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Research Products
(11 results)