2021 Fiscal Year Annual Research Report
RNA結合タンパク質Musashiが骨格筋の萎縮を防ぐ機序の解明
Project/Area Number |
20H04079
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
古市 泰郎 東京都立大学, 人間健康科学研究科, 助教 (40733035)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
眞鍋 康子 東京都立大学, 人間健康科学研究科, 准教授 (60467412)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 骨格筋 / 幹細胞 / 筋再生 |
Outline of Annual Research Achievements |
骨格筋の萎縮は生活の質の低下に直結するため、その機序を解明して予防法を確立することが求められている。申請者はこれまで、筋萎縮を引き起こす新規因子を探索してきた結果、Musashi2(Msi2)を発見した。Msi2は神経前駆細胞において、特定のmRNAに結合してその発現量を調節し、細胞が分化するか否かを決める運命決定因子として発見されたが、骨格筋での働きは不明であった。申請者はこれまで、Msi2タンパク質は骨格筋線維および、筋の再生と肥大を担う骨格筋の体性幹細胞(筋幹細胞)に発現することを明らかにした。また、筋幹細胞におけるMsi2の発現量は筋分化が開始して、筋芽細胞および筋管細胞に成るにつれて増加することを見出した。また、生体では筋損傷後の再生時にMsi2の発現量は一過的に増加し、筋再生が終了した段階に元のレベルまで低下した。したがって、Msi2は筋再生に何らかの働きを示すことが示唆された。そこで、Msi2を欠損したマウスを用いて、骨格筋におけるMsi2の機能を解析した。Msi2欠損マウスの骨格筋は野生型マウスに比べて筋が萎縮しているだけでなく、筋再生のマーカーおよび筋サイズが低下しており筋再生に障害が現れた。また、マウス骨格筋から筋幹細胞を初代培養してMsi2の筋発生における役割をin vitroで検討したところ、筋幹細胞の自己複製能力および筋芽細胞細胞の増殖力がMsi2の欠損で低下していた。そこで、Msi2が制御する分子機序を明らかにするために、RNAシーケンスによる網羅的な遺伝子発現解析を行い、Msi2の欠損によって変化する遺伝子とその経路を同定した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2021年度は、Msi2が筋幹細胞の維持に寄与することを示すために、筋の再生が終了した損傷4週間後の骨格筋を解析した。免疫染色によって筋幹細胞の数を計測したところ、Msi2欠損マウスで細胞数は減少していた。また、定量PCRによって筋幹細胞のマーカー遺伝子の発現量を測定したところ、Msi2欠損によって低下していることが確認された。そこで損傷再生中の骨格筋からRNAを抽出し、RNAシーケンス解析を行った。Msi2によって発現量が増加した遺伝子と低下した遺伝子はそれぞれ424個、395個同定された。この中から細胞の運命制御に関わる遺伝子を抽出し、Msi2が筋分化を制御する情報伝達経路を解析している。また、野生型マウスとMsi2欠損マウスから単離した筋幹細胞を培養し、Msi2タンパクに結合しているmRNAの検出を行った。培養7日後の筋細胞にUVを照射してタンパク質とRNAの架橋を行い、免疫沈降によってMsi2に結合しているRNAを抽出した。PCRによってMsi2と結合している遺伝子を同定した。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度以降は、Msi2が筋幹細胞の運命を制御するその分子機序について詳細な解析を進める。骨格筋からMsi2遺伝子をクローニングし、生体骨格筋および培養細胞にMsi2の遺伝子導入を行う。Msi2を過剰発現させた際の影響を解析し、Msi2に結合しているmRNAおよび遺伝子産物であるタンパク質の発現量がMsi2の発現増加によって上昇するかどうかを検証する。Msi2発現量の増減が骨格筋の再生能力と筋量維持、そして骨格筋の収縮力に及ぼす影響を検討し、骨格筋におけるMsi2の生理作用を明らかにする。
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