2020 Fiscal Year Annual Research Report
オイルパーム農園から放出される膨大な量の温室効果ガスと温暖化の影響
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20H04328
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Research Institution | Japan International Research Center for Agricultural Sciences |
Principal Investigator |
近藤 俊明 国立研究開発法人国際農林水産業研究センター, 生物資源・利用領域, 主任研究員 (40391106)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
梁 乃申 国立研究開発法人国立環境研究所, 地球環境研究センター, 室長 (50391173)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | オイルパーム / 温室効果ガス / 土壌フラックス |
Outline of Annual Research Achievements |
オイルパーム農園では、果房収穫のため定期的に剪定される大型葉や、再植栽に伴い伐採されるパーム幹等、膨大な量のパーム残渣が農園内に放置される。こうしたパーム由来の有機物が土壌微生物によって分解される場合、膨大な量のCO2が一時的に大気中に放出されるものの、放出されたCO2は新たに植栽されるパーム樹木によって吸収されるため、気候変動への影響はおおよそニュートラルとなる。一方、シロアリによって採餌される場合には、腸内共生細菌によるセルロースの分解によって、CO2の25倍の温室効果を持つCH4として大気中に放出される。さらに、分解者でもある土壌病害菌の蔓延に伴うパーム樹木の生長不良は過剰な施肥の原因となり、CO2の約300倍の温室効果を持つN2Oの発生源となりうる。そのため、土壌病害菌を含むパーム由来有機物の分解者の特定や、CH4やN2Oを含む温室効果ガス発生量の統合的観測は、気候変動に寄与しない持続的オイルパーム農園経営の実現において重要な指標となる。 本課題では、「次世代シーケンサーを活用した分解者の特定」と「温暖化操作実験下における温室効果ガス(CO2、CH4、N2O)発生量の統合的観測」の異なる二つの分野融合により、パーム由来有機物の農園内放置が土壌病害菌を含む分解者動態および温室効果ガス発生量に及ぼす影響を把握するとともに、将来生じうる温暖化に対して分解者がどのような応答を示し、オイルパーム農園から放出される温室効果ガスがどう変動するのかといった疑問を解明する。 これまでの調査の結果、①パーム残渣の主要な分解者がシロアリであること、②農園管理による土壌踏圧の影響により、好気性であるメタン資化菌が減少し、嫌気性であるメタン生成菌が増えることで土壌によるCH4吸収能が低下すること、③結果的にオイルパーム農園はCH4の発生源となっている可能性があることなどが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コロナ禍の影響による海外渡航制限や、調査対象地であるマレーシア国内における州間移動制限が続き、試料採集を含む野外調査や計測機器の設置にやや遅れが生じていたものの、繰越期間中にリモートで調査を行える体制を構築し、当初予定していた調査をおおむね行うことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
コロナ禍の影響に伴う渡航・移動制限が解除され次第、現地で調査を行える体制が整っている。また、渡航・移動制限が継続した場合にも、現地研究協力者の協力のもと、当初予定していた調査をリモートで行う体制が構築できており、すでに一部の調査についてはリモートで実施している。
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Research Products
(2 results)