2020 Fiscal Year Annual Research Report
海氷表面に見られる有機臭素ガスの高濃度現象―低温化学反応チャンバー実験による検証
Project/Area Number |
20H04345
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
野村 大樹 北海道大学, 北方生物圏フィールド科学センター, 准教授 (70550739)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
薮下 彰啓 九州大学, 総合理工学研究院, 准教授 (70371151)
山下 洋平 北海道大学, 地球環境科学研究院, 准教授 (50432224)
大木 淳之 北海道大学, 水産科学研究院, 准教授 (70450252)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 海氷 / 揮発性ガス |
Outline of Annual Research Achievements |
対流圏のオゾンは、大気の酸化性を決める重要な反応性気体である。また、メタンに次ぐ温室効果ガスである。そのため、対流圏オゾンの収支を制御する要因を解明する必要がある。北極・南極などの極域においては、晩冬に、地上付近のオゾン濃度が急激に減少する。これは、オゾン消失現象と呼ばれている。オゾン消失現象は、臭素化合物濃度の急激な増加と同期して起きる。よって、臭素化合物が対流圏オゾンを分解する物質として注目されている。しかし、臭素化合物の発生源が特定されておらず、対流圏オゾンの収支の解明には至っていない。本研究では、自然界で起こる結氷現象を室内でのチャンバー実験で再現し、有機臭素ガス、特にブロモホルムに関して、海氷表面での化学反応機構・大気への放出過程を明らかにすることを目的とする。本課題は、極域大気中オゾン濃度の急激な減少を招く有機臭素ガスの発生源が特定されていないことから設定した。本研究で提唱する海氷表面でのブロモホルム生成は、有機臭素ガスの大気への新たな発生源の提案となり、長年謎とされてきた大気中オゾン消失現象の原因解明に一石を投じることとなる。しかし、これまでの応募者らによる観測事実と低温環境での化学反応の新たな知見により、反応仮説を提唱するに至ったが、反応機構は検証されていない。そこで本年度は、反応仮説を提唱するために実施するチャンバー実験の設計を行なった。また、これまでの観測において得られたでデータの解析作業を実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、自然界で起こる結氷現象を室内でのチャンバー実験で再現し、有機臭素ガス、特にブロモホルムに関して、海氷表面での化学反応機構・大気への放出過程を明らかにするために、チャンバー内での反応実験を実施する必要がある。そのため、今年度は、チャンバーの使用に関する設計について分担者と議論をし進めた。また、観測データについても揮発性ガスだけでなく、海氷の物理環境や大気情報も含め検討することができた。よって、研究が順調に進んだと言える。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの応募者らによる観測事実と低温環境での化学反応の新たな知見により、反応仮説を提唱するに至ったが、反応機構は検証されていない。そこで来年度は、今年行った反応仮説を提唱するために実施するチャンバー実験の設計について、再度議論をし、具体的な実験を進める。また、観測データについてもさらに解析を進め論文執筆ができるよう詰めの作業を実施する。
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Research Products
(10 results)