2022 Fiscal Year Annual Research Report
ウロコの同位体比を利用した、魚類の生活史推定手法の開発とその応用
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20H04376
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
太田 民久 富山大学, 学術研究部理学系, 助教 (60747591)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 拓哉 京都大学, 生態学研究センター, 准教授 (30456743)
飯塚 毅 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 准教授 (70614569)
末吉 正尚 国立研究開発法人土木研究所, 土木研究所(つくば中央研究所), 専門研究員 (70792927)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ストロンチウム同位体比 / サツキマス / 同位体地図 / 耳石 / ウロコ |
Outline of Annual Research Achievements |
河川のストロンチウム同位体地図および耳石のストロンチウム同位体分析結果を用いて対象魚(サツキマス)の移動履歴推定を行うために、状態空間モデルの開発を実施した。その結果、長良川流域においてサツキマスを生産している支川が3-4箇所存在していることが推定できた。また、そのサツキマスを生産している支川間の生産性は年次変動している可能性が示唆された。つまり本結果は、繁殖や成長がある場所でうまくいかない年に、別の場所の個体が補償することで、生息地全体の個体数が毎年、安定的に維持されるというレジリエンス機能(ポートフォリオ効果)の存在を強く示唆していると考えている。長良川流域全体においてサツキマスの生産性を維持していくためには複数のが必要である可能性が高い。 また、琵琶湖に流入する河川においても多地点から河川水を収集しストロンチウム同位体比を分析するとともに、国内外来種である琵琶湖サツキマスの母河川を推定した。その結果、琵琶湖固有のサツキマス亜種であるビワマスと母河川が完全にはオーバーラップしていないことが推定された。 さらに、ダム湖の建設が淡水魚の移動履歴に与える影響を検証するために、木曽川に建設されたダム湖に流れ込む支川で採集されたカワムツおよびカワヨシノボリの耳石のストロンチウム同位体比分析を実施し、ダム湖のある河川と無い河川で、淡水魚の支流間移動に違いがあるかを推定した。その結果、ダム湖に流れ込む支川では、個体の支川間移動がほとんど観察されなかった。一方、流水環境が維持された河川に流れ込む支川では、個体の支川間移動が頻繁に観察された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
調査河川の同位体マップの描画およびサツキマスの耳石同位体分析を終え、解析手法もほぼ確立させた。また、すでに250個体以上の分析が完了しており予定通り分析は進んでいる。また、移動履歴推定に用いるモデルの開発にも着手できている。しかし、ウロコの分析に関しては検討課題が出てきたため、分析手法を推敲する必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、得られたデータを国際学会で発表するとともに、科学論文として国際誌に投稿する予定である。また、解析モデルに関しては、必要に応じて改定を進める。
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