2020 Fiscal Year Annual Research Report
Tourism as tool for positive peace building - A case study on ecotourism in Central America
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20H04438
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Research Institution | Shizuoka University of Art and Culture |
Principal Investigator |
武田 淳 静岡文化芸術大学, 文化政策学部, 准教授 (00779754)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小谷 博光 人間環境大学, 人間環境学部, 講師 (50845360)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | エコツーリズム / 観光モノカルチャー / COVID-19 / コスタリカ / カリブ海 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度もCOVID-19の影響を受け、当初予定していた中米地域における現地調査が催行できなかった。そこで、文献調査に切り替えて研究を継続した。その成果を以下の通り発表した。 本研究は、安全保障と観光の関係性を明らかにするものである。その前提として、現在(コロナ以前)の中米地域の治安状況を整理し【業績①】を発表した。中米地域は世界的にも治安が不安定な地域であるが、他方、環境保全政策が進んでいるという特徴がある。そして、このようにして守られた自然がエコツーリズムの資源となっている。左記のような環境保全と観光の関係性をまとめたものが【業績②】である。なお、COVID-19の発生を受けて、中米・カリブ海地域の観光は新たな安全保障上のリスクが生じている。具体的には、特にカリブ海島嶼部においては「観光モノカルチャー」とも言えるほど、観光依存度が高い地域において失業者数が増大していることである。このような申請時には想定していたかった新たな社会の課題を整理しつつ、今後の研究の方向性を【業績③】として発表した。
【業績①】武田淳、2021、「なぜ自然保護区は麻薬取引を助長するのか」内田知行・権寧俊編『アヘンからよむアジア史』勉誠出版 【業績②】武田淳、2022、「自然を守ることで経済発展を遂げた国コスタリカ―自然保護区の参加型管理と生態系サービス」日本環境学会幹事編『産官学民コラボレーションによる環境創出』本の泉社, pp.134-141. 【業績③】武田淳、2021、「カリブ海諸国におけるCOVID-19の影響―観光モノカルチャーの処方箋としてのフェアツーリズムへ向けて」『日本国際観光学会論文集』 5 : 40-45.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
海外渡航ができなかったことで、当初予定していた現地調査が行えていない。その分の遅れはあるものの、一方で、研究業績欄に示したように、文献調査は順調に進み成果が出てきている。また、COVID-19を受けて、観光地の状況は申請時には想定してなかった状況に陥っている。こうした想定外の状況を整理できたことも今年度の成果である。以上のように、遅れている海外渡航が再開できた際の準備が整っていることを踏まえ「おおむね順調に進展している」と評価するものである。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の研究成果(COVID-19による中米・カリブ海地域の観光への影響)によって、観光地が抱えている課題の複雑性が明確になった。具体的には、感染症のリスクは平等に訪れるが、被害(例:失業者数)はとりわけ女性に偏っていることである。このような成果を踏まえ、今後はジェンダーにも着目しながら観光地の状況を分析していくことが今後の課題となる。
また、今年度は「観光モノカルチャー」下に置かれたカリブ海島嶼国を対象に、今後の改善策を提案する試論的論文【業績③】を発表した。そこで明らかにしたのは、今回のような「大量失業者」の出現は、気候変動に伴うハリケーンの大型化によって、コロナ以前から度々生じてきたことである。すなわち、COVID-19が落ち着きを見せたのちにも同様の「ショック」は起きうることが想定される。すなわち問題の本質は、観光以外の職業選択肢がない「観光モノカルチャー」の下を生きざるをえない人々がいること、また彼らに対する補償がないことである。【業績③】では、左記の状況を改善するためのヒントとして、2000年前後に議論されたfair tourismを挙げた。来年度は、具体的な提案へ向けてfair tourismの再考を試みる。
最後に、ここまでの文献調査の知見を活かし、現地調査を実施する。本研究は、研究開始年度にコロナショックが起きたため、まだ一度も現地調査が実施できていない。まずは、統計データなどからは見えてこない調査地の現状を明らかにしつつ、今後の調査へ向けた礎を築く。
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