2020 Fiscal Year Annual Research Report
A sudy of smellscape as basic concept of tourism planning
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20H04443
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
橋本 俊哉 立教大学, 観光学部, 教授 (50277737)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
海津 ゆりえ 文教大学, 国際学部, 教授 (20453441)
真板 昭夫 嵯峨美術大学, 芸術学部, 名誉教授 (80340537)
岩崎 陽子 嵯峨美術短期大学, その他部局等, 准教授 (70424992)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | スメルスケープ / 嗅覚 / 観光計画 / 「なつかしさ」 / 匂いの地図 |
Outline of Annual Research Achievements |
写真や動画を「記録」して発信することに重きをおく「視覚偏重型」行為に過度に意識が向けられると、観光者が実際に観光地を訪問しても、「記憶」に刻まれるような体験は難しくなってしまう。本研究は、「五感の体験」という観光が本来有する力を取り戻すべく、五感の中でもとくに記憶や感情と密接に結びついている「嗅覚」が果たす役割に着目し、嗅覚的な環境体験の重要性に着目した「スメルスケープ」の視点から、観光地空間整備に向けたソフト面の新たな計画手法を抽出することを目的としている。 本年度は、本研究の目的を遂行するために、観光研究領域における嗅覚に関する理論研究と、嗅覚を活用した展覧会の企画と鑑賞者を対象とした意識調査の設計ならびにその分析を行った。理論研究では、五感の中での嗅覚の位置づけ、嗅覚による記憶の特徴をふまえ、観光における嗅覚体験による「なつかしさ」の想起や「嗅覚的観光資源」の可能性等についての検討を行った。展覧会は2020年10月に京都で開催し、視覚と嗅覚を組み合わせた作品に接した鑑賞者が、いかなる記憶が呼び起こされたかについて意識調査の回答内容を分析し、匂い刺激の提示による「メンタルタイムトラベル」の可能性と、回答結果と年齢や性別、居住地等の属性との関連性が検討された。 「なつかしさ」を感じる匂いの記憶に関する調査に関しては、豊かな匂い環境が維持されている「生産文化圏」の生活空間の事例として二戸市(岩手県)ならびに南大東島(沖縄県)を調査対象地として選定し、調査手法の検討作業を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の予定では、匂いに着目してまちづくりや観光施設を展開している先進事例について、聞き取り調査や踏査等をもとに、そのコンセプトや具体的な展開内容と効果を分析する予定であったが、新型コロナウイルス感染症の影響で現地調査を行う状況ではなかった。そのため調査枠組みを変更し、匂いと観光に関する理論研究ならびに匂いをテーマとした展覧会の企画に注力した。展覧会では、フランスの調査協力者の協力を得て、日仏の視覚と嗅覚を組み合わせた作品に接した鑑賞者に対して、いかなる記憶が呼び起こされたかについて意識調査を設計・実施し、回答内容を詳細に分析する方向で調査を進めてきた。 また、スメルスケープは自然環境やそこでの生活文化が維持されることなしに維持されないので、自然環境と伝統的な生業や生活のシステムが維持されている「生産文化圏」は、記憶を呼び覚ます仕掛けに満ちていると考えられる。こうした特徴を有し、かつ近年観光面でも注目されているにおいて、住民ならびに観光者を対象として「なつかしさ」を感じる匂いの記憶に関する調査を行う計画であった。調査内容の検討と調査対象地を選定したものの、こちらも新型コロナウイルス感染症の影響により、現地調査が叶わない状況が続いたことで、調査方法の検討の段階にとどまっている。
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Strategy for Future Research Activity |
「嗅覚」という現地で感じる感覚を対象とした研究のため、新型コロナウイルス感染症の影響で現地調査に行くことができない中で、どのような調査が進められるか、プロジェクトメンバーと定期的に協議しながら調査内容の検討を進めてきた。 匂いをテーマとした展覧会は、鑑賞者嗅覚体験の意味を考えるうえで有益な示唆が得られるものであり、21年度は、その効果を比較できるような、嗅覚をテーマとした別テーマでの展覧会の企画を検討し、その後の意識調査を分析・検討する。 「生産文化圏」での調査についても、現地入りできるか、新型コロナウイルス感染症の影響次第ということもあり、現地に入れる状況になり次第現地調査を始められるよう、現地の調査協力者と密に連絡をとり、オンライン等で検討を重ねながら準備を進め、感染状況が改善次第、現地調査を行う予定である。
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