2020 Fiscal Year Annual Research Report
Compensatory contribution of linguistic and social factors for early language acquisition: Cross linguistic study between European and Asian languages
Project/Area Number |
20H05617
|
Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
馬塚 れい子 国立研究開発法人理化学研究所, 脳神経科学研究センター, チームリーダー (00392126)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
窪薗 晴夫 大学共同利用機関法人人間文化研究機構国立国語研究所, 理論・対照研究領域, 教授 (80153328)
酒井 弘 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (50274030)
小磯 花絵 大学共同利用機関法人人間文化研究機構国立国語研究所, 音声言語研究領域, 教授 (30312200)
田中 章浩 東京女子大学, 現代教養学部, 教授 (80396530)
宇都木 昭 名古屋大学, 人文学研究科, 准教授 (60548999)
川原 繁人 慶應義塾大学, 言語文化研究所(三田), 准教授 (80718792)
辻 晶 東京大学, ニューロインテリジェンス国際研究機構, 助教 (30850490)
石原 尚 大阪大学, 工学研究科, 講師 (90615808)
|
Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2025-03-31
|
Keywords | 言語獲得 / 音声発達 / 語彙発達 / 言語比較 / 乳幼児実験 |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題は、アジアと欧米の言語を比較し母子の対話のスタイルが乳幼児の音声や語彙の発達に及ぼす影響を調べることを目的とし、日本語、韓国語、中国語、タイ語、英語、フランス語(一部イタリア語)を実験的に比較し、母親と子供のコミュニケーションのスタイルの違いが初期言語発達に及ぼす影響を調べるものである。
2020年度は立ち上げの準備にあてる計画で、国際共同研究メンバーが日本に集まる準備会議、海外の講演者を招聘しての国際シンポジウム、研究員を相互の研究室に派遣して実験準備や研究者間の交流を深める等を予定していた。しかし本課題が開始した2020年8月から年度末までの時期は、コロナ感染症の影響で世界的に外出や移動が制限されていた時期で、計画していた国際イベントは実施できず、研究員の雇用もできなかった。その為、予算の大半を2021年度に繰り越し、更に一部は部は2022年度に再繰り越しして、コロナの影響下でも出来ることを精査して研究を進めた。
まずは国内外の共同研究者達とオンラインでのミーティングを重ね、各国の状況の情報交換し、対応策を練った。21年の夏までには、制限はあるものの被験者を呼んでの実験が認められる国も出てきた。そこで一部の国で対乳児発話の録音など一部の実験を開始した。大規模な予備実験が必要な実験については、代表者の日本のラボが中心となって予備実験を開始した。しかし、21年度中もコロナ感染症は収まらず、代表者の研究室でも感染する者が続出し、予備実験も度々中断を余儀なくされた。このため、予備実験の一部は予算を再繰り越しして2022年度に実施した。この期間、講演者の招聘や聴衆が多く集まる講演会の開催は難しかったが、Zoomが広く使われるようになったことを利用して、オンラインで開催するJEWELセミナーを実施することにし、21年12月までに4回のセミナーを実施した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2020年度はコロナ感染症が世界的に拡大した最初の年で、大学や研究所が閉鎖されたり、厳しい外出制限が出されていた時期であった。このため計画していた国際準備会議や、国際シンポジウム、研究員の相互訪問等の活動は実施できなかった。新規に研究員やRAを雇用することも難しく、実験に必要な刺激の準備や予備実験にも着手できなかった。このため、使い切れなかった予算を2021年度に繰り越し共同研究者たちと相談しながら制限下でもできることから漸次研究を再開することとした。
2021年度の夏ごろにはマスクの着用や消毒、対人距離の確保などの制限はあるが、人を呼んでの実験が可能となる国も出てきたため、いくつかの実験を開始することができた。例えば、フランスでは母子対話の音声を記録する実験を実施することができた。また、タイでは他の共同研究参加国のように、標準化された乳幼児の語彙検査が存在しないため、Tammasat大学の共同研究者等が乳幼児の母親を対象とした子供の語彙調査を実施し、本実験に参加する乳幼児の語彙調査が可能になった。
併行して、計画している実験の中には予備実験が必要となるものがあるため、代表者の日本のラボで予備実験を開始した。しかし、2021年に入ってもコロナの感染は収まらず、代表者のラボでも感染者が続出した。その度にラボ全体で乳幼児を呼ぶ実験が数週間に渡って中断され年度内に終了できなかったため、予算を再繰り越しして22年も継続して実施し第一段階の予備実験は終了し、一部では本実験も開始できた。また21年度後半にはオンラインでの講演会としてJEWELセミナーシリーズを開始し、年内に4回開催した。海外からの参加者も多く、オフラインでの聴取も含めて平均で100名を超える盛況となっている。全体としてコロナの影響による遅れはあるが、共同研究者たちの協力もあり着実に遅れを取り返しつつある。
|
Strategy for Future Research Activity |
2020年度は研究がほとんど実施できない状況にあったものの、各年度の予算を順次繰り越しながら研究を進めてきており、当初の計画より遅れている部分もあるが全体としては遅れを取り戻しつつある。
2021年夏ごろからは実験も感染対策を施した上での実験も可能になった。各実験の予備実験や、各国の担当者らと連携しながら本実験で用いる刺激の作成や実験プログラムを各ラボの装置に実装するなどの準備をすすめており、まだ本実験が開始できていない実験を迅速に開始できるようにする。すでに本実験のデータ収集がすすんでいる対乳児発話や、場面記述の実験では各国で収集したデータを日本に集め、言語比較のために必要な解析基準の作成を進める。
並行して、コロナ禍の制限があっても実施可能な研究や、コロナの影響を逆手にとった研究もすすめる。例えば、既存の対乳児発話音声コーパスや、幼児、児童の発話を録音したデータベースを利用した解析をすすめ、論文化する。コロナ禍で母親と乳児との対話の際にマスクを着用する機会が増えたが、それが子供の言語発達にどのような影響を及ぼすかを調べる研究や、コロナ禍で、小さい子供でもオンラインで他者とコミュニケーションをとることが増えたことを鑑み、自宅にいる子供にオンラインで課題をやってもらう実験等を計画している。さらに、Zoomを利用したオンラインセミナーを継続して開催し乳幼児言語発達について発信を続ける。また、国内の分担者で一般の読者にも分かりやすい著書がある研究者を講演者に招いて、高校生や言語科学に興味のある大学生むけの日本語での講演会を開催する準備をしている。
|
Research Products
(20 results)