2020 Fiscal Year Annual Research Report
ポジトロン断層法の物理限界を克服する全ガンマ線イメージング法の開発
Project/Area Number |
20H05667
|
Research Institution | National Institutes for Quantum and Radiological Science and Technology |
Principal Investigator |
山谷 泰賀 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 放射線医学総合研究所 先進核医学基盤研究部, グループリーダー(定常) (40392245)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉川 彰 東北大学, 金属材料研究所, 教授 (50292264)
菅 幹生 千葉大学, フロンティア医工学センター, 准教授 (00294281)
今井 陽一 東京大学, 医科学研究所, 准教授 (10345209)
永津 弘太郎 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 放射線医学総合研究所 先進核医学基盤研究部, 研究統括(定常) (30531529)
高橋 美和子 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 放射線医学総合研究所 先進核医学基盤研究部, 主幹研究員(任常) (00529183)
吉田 英治 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 放射線医学総合研究所 先進核医学基盤研究部, 主幹研究員(定常) (50392246)
田島 英朗 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 放射線医学総合研究所 先進核医学基盤研究部, 主任研究員(定常) (70572907)
|
Project Period (FY) |
2020-08-31 – 2025-03-31
|
Keywords | PET / コンプトンカメラ / SPECT / 核医学 / シンチレータ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、計測可能なすべての放射線を診断に使うという独自アイディアの画像診断法「whole gamma imaging(WGI)」を提案し、その実現に必要な要素技術開発および多発性骨髄腫診断への応用について研究する。具体的には、がん特異性の高い抗体イメージングに最適な次世代核種として期待されるZr-89(ジルコニウム)に着目する。しかし、511keV放射線ペアを同時計測する従来の陽電子断層撮影法(PET)では、180度からのずれによる幾何学的誤差(角度揺動)に加え、従来PET核種のF-18よりも約2倍長い陽電子飛程により、解像度が大きく劣化してしまう。また、陽電子よりも約4倍多く放出される909keVγ線がノイズ源になってしまう問題もある。これに対して提案するWGIでは、909keVγ線を積極的に活用して高解像度・高感度な次世代イメージングを実現する。1年目となる2020年度は以下について研究した。 (1)WGI用シンチレータ開発: 散乱検出器として使用するエネルギ分解能の高いシンチレータ候補の絞り込みを行った。 (2)システム設計最適化: モンテカルロシミュレーションを駆使して、Zr-89に特化したWGIの装置パラメータ設計を行った。 (3)WGI画像再構成法開発: WGIすなわち「すべてのガンマ線の画像化」を具現化する画像再構成アルゴリズムについて研究した。 (4)WGI試作機開発・評価: 開発した要素技術を実証するプラットフォームとしてWGI試作機の開発に着手した。 (5)多発性骨髄腫への応用: 実験に用いるモデルマウスの作成を行い、イメージング試験の一部を先行して実施した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1)WGI用シンチレータ開発: 散乱検出器用のエネルギー分解能の高い新規シンチレータ単結晶の開発を行った。発光量の高いGAGG結晶を基に、元素の置換や陽イオン共添加などを検討した。また、データ収集システムの時定数に合わせて、早い蛍光寿命を持つシンチレータの候補を挙げた。 (2)システム設計最適化: モンテカルロシミュレーションにより,Zr-89に特化したWGIの装置パラメータ設計を行った。吸収検出器のリング数は4リングより6リング、シンチレータ厚は20mmより30mmでの感度が高かった。一方、吸収検出器の素材による角度分解能の差はみられず、リング数は6リングより4リング、シンチレータ厚は30mmより20mmで角度分解能が高い結果となった。 (3)WGI画像再構成法開発: 検出器誤差をモデルに含めて精度を高めたコンプトンカメラ画像再構成法の開発を行った。 (4)WGI試作機開発・評価: 開発した要素技術を実証するプラットフォームとしてWGI試作機の開発に着手した。初年度は、受光素子およびデータ収集システムの仕様設計を行い、必要な部材を調達した。また、Zr-89核種製造も試験的に行い、試作検出器の性能評価を行った。 (5)多発性骨髄腫への応用: In-Vivoイメージングのための細胞株の選定を行い、多発性骨髄腫細胞株の提供および培養、移植、定着法の検討を行った。そして、ヒト由来の多発性骨髄腫細胞株を移植されたマウスを、Zr-89標識抗CD38抗体をもちいてWGI初号機により撮像を行った。投与後4、6、8、12日後に撮像を行い、Zr-89標識抗CD38抗体の経時的な体内動態を確認した。撮像終了後は解剖法により各臓器と腫瘍を摘出し、重量・放射能濃度を計測した。その結果、WGI初号機により描出し得た腫瘍サイズは約4~5mm直径で、Zr-89標識抗CD38抗体の腫瘍集積は数十~数百フェムトモル/mgと算出された。
|
Strategy for Future Research Activity |
(1)WGI用シンチレータ開発: GAGGのGaとAlの比を最適化し、高いエネルギー分解能を持つシンチレータホスト結晶の組成を決定した後、その結晶にMgを共添加することで蛍光寿命の短寿命化を目指す。そして、WGI用のシンチレータ候補を特定し、当該シンチレータを2インチの大型サイズの作製法を確立する。 (2)システム設計最適化: Zr-89に特化したWGIの装置パラメータ設計を継続して行う。具体的には、試作検出器の実測データを反映したイメージングシミュレーションを行い、空間解像度と感度の観点からWGIシステム最適化を行う。 (3)WGI画像再構成法開発: 検出器誤差をモデルに含めて精度を高めたコンプトンカメラ画像再構成法にPET画像再構成法を組み込む手法の開発を行う。 (4)WGI試作機開発・評価: 昨年度調達した受光素子(シリコンフォトマル)およびデータ収集システムを用いて、吸収検出器リングを開発する。また、Zr-89核種製造も継続して行い、試作検出器の性能評価を行う。 (5)多発性骨髄腫への応用: 播種を来す細胞株の選定・作成を行い、より臨床条件に近い実験モデルの作成を試みる。参照として蛍光イメージングを利用できるよう遺伝子導入についても検討を行う。並行して、播種モデルのイメージング準備を進め、WGI画素値から定量値への換算法を検討する。WGI画像値および定量値と病変サイズとの比較のほか、抗原発現量を推定する手法を開発する。
|
Remarks |
「QST国際リサーチイニシアティブ(IRI)シンポジウム次世代PET研究会2021」を主催し、多発性骨髄腫の診断から治療までの現状を解説するとともに、本研究の位置づけについて説明を行った〔 2021/1/23 (webex) (参加者数計155名)〕。
|
Research Products
(19 results)
-
-
-
-
-
-
-
-
-
[Presentation] PET・コンプトンハイブリッド画像再構成の応用2021
Author(s)
田島英朗, 吉田英治, 仁科匠, 田久創大, 錦戸文彦, 菅幹生, 脇坂秀克, 高橋美和子, 永津弘太郎, 辻厚至, 鎌田圭, 吉川彰, Katia Parodi, 山谷泰賀
Organizer
医用画像研究会(JAMIT Frontier)
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-