2022 Fiscal Year Research-status Report
A study on ethical expertise of professionals
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20K00012
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
田中 朋弘 熊本大学, 大学院人文社会科学研究部(文), 教授 (90295288)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 技能からの類推 / 自己秘匿性 / 徳の統一性 / フィルター性 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度はアナス(2011)における徳に関する「技能からの類推」概念の検討を中心に行った。そこで以下の事柄が明らかになった。ただし成果として公表することはできなかった。1)アナス(1995)では、プラトン=ソクラテス的な徳の知性モデルを支持し、アリストテレス的な徳の経験モデルを支持していなかったが、アナス(2011)ではプラトン=ソクラテス的な説明はかなり少なくなり、かなりの程度アリストテレスに依拠している。また、2)アナス(1995)では、技能と徳には合理的な説明可能性が必要だと考えており、それはソクラテス的なモデルであった。それゆえこの解釈に従うと、技能や徳に関して、理由が説明できない状況をうまくカバーできないという問題が生じた。それをアナス(2011)は、徳の「自己秘匿性」概念で説明した。この概念の導入によって、自分の行為を説明できない有徳な人の存在も説明できるようになる。さらに3) アナス(1995)は、一方では本物の技能には、初心者と熟達者という違いがあると説明しており、他方では、技能には統一的把握が必要で、それがなければ全く技能がないのと同じだというソクラテス的な解釈を採用している。だがアナス(2011)では、徳と技能の統一性について、徳は統一性を必要とするが、技能には統一性を必要としないものもあるとして、徳と技能の類比性を統一性解釈においては弱めている。4)徳が相互に連関し、統一性を持つという議論に関して、アナスは、一貫して支持する立場をとっている。そして、アナス(2011)における徳の統一性解釈を支える概念装置は、その「フィルター性」である。アナスは、徳と似てはいるが徳ではないものとを見極めるためのフィルターとして、枢要徳の相互関係性を理解している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本年度は、まだ終結しないコロナ対応において、本務校の管理職としての業務が極めて多忙になり、加えてコース主任としての学生指導業務も加わり、十分に時間を確保することがかなわなかった。そのため、予定していた最終年度のとりまとめ作業を十分に遂行できず、そのために必要な文献の半分程度の分析にとどまった。
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Strategy for Future Research Activity |
研究期間を一年延長できたので、今年度はこれまでに遅れた分を取り戻して、最終的なとりまとめ作業を行う。研究の方針には変更がないので、時間が確保できる見込みのR5年度末には、最終的なとりまとめが可能になる。
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Causes of Carryover |
業務多忙のため当初計画通りに進めることができず、研究計画を一年延長して認められた。残額はすべて、次年度の文献の購入、学会出張のための旅費、謝金などに用いる。
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