2022 Fiscal Year Research-status Report
Natural philosophy of the evolution of warfare and morality
Project/Area Number |
20K00019
|
Research Institution | Nanzan University |
Principal Investigator |
中尾 央 南山大学, 人文学部, 准教授 (20720824)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | 戦争 / 心理学 / 文化人類学 |
Outline of Annual Research Achievements |
三年目には生物学,主に霊長類学における集団間闘争の研究を調査することを予定していた.しかし,心理学の研究者との議論や各種共同研究の進捗を踏まえ,本年度は四年目以降に予定していた心理学や文化人類学における紛争・戦争研究を批判的に検討した.心理学でもさまざまな紛争・集団間闘争に関わる研究が蓄積されており,そこでは偏狭な利他性(parochial altruism)と呼ばれる利他性の進化に関して,集団間闘争が大きな役割を果たしていたのではないかという研究が心理学的側面から検討されている.本年はこの研究を批判的に検討した上で,集団間闘争が利他性の進化にはそこまで大きな影響を与えてこなかったのではないかと暫定的に結論した.同様に,文化人類学においてはさまざまな戦争・紛争研究が蓄積されている.好戦的な民族に関する研究などもあり,これらの研究から人間の利他性・道徳性に関して戦争・集団間闘争が与える影響を検討した.その結果,さまざまな民族において必ずしも集団間闘争が,偏狭な利他性の進化モデルが想定していたような形で集団内の利他性と集団間の敵意を増長させる要因にはなっておらず,やはり偏狭な利他性の進化モデルは民族誌や文化人類学のデータともうまく合わない部分が大きいのではないかと暫定的に結論した.本年度はここまでの研究をまとめ,『心理学評論』においてレビュー論文を執筆する事ができた(中尾央・田村光平・中川朋美.2023.人間進化における集団間紛争:偏狭な利他性モデルを中心に. 『心理学評論』65(2):119-134.).
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画とは少し前後したが,四年目に予定していた研究内容を先取りして遂行できたため.
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度は次年度に予定していた研究内容を先取りして遂行したため,次年度は本年度に予定していた霊長類学や生物学における戦争・紛争研究について批判的に検討を行う予定である.
|
Causes of Carryover |
国際学会への出張などが感染症問題で制限されたため.次年度国際学会出張の旅費などに使用予定である.
|
Research Products
(6 results)