2020 Fiscal Year Research-status Report
規範的非難現象を基にした非難の哲学・倫理学理論の評価基盤の構築とその評価
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20K00031
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
佐々木 拓 金沢大学, 人間科学系, 准教授 (70723386)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 非難 / 責任 / ゆるし / 依存症 |
Outline of Annual Research Achievements |
現在、非難の哲学・倫理学という研究分野においては、複数の非難の理論が並列していながら、それらを評価するための共通基盤が存在せず、そのために理論間の優劣を評価できない状況にある。それは、とりわけ「非難」という現象の外延と中心的特徴についての合意がないためだと考えられる。本研究は、この状況を打開するために、規範的非難という現象に焦点をあて、非難の哲学理論が共通して説明すべき非難現象の様態・種類・文脈を規範性の観点から特定することを目指す。この課題にあたって、令和2年度の研究目的は、非難の理論の評価基盤となる事象群を暫定的に特定するために文献調査を行うことであった。 この目的のために、謝罪とゆるし、および差別に関わる侮辱と貶価に関わる哲学、倫理学、社会学の文献調査を行うことが計画されたが、当該年度は通常業務の新型コロナウイルス感染拡大防止対策に大きく時間を割かれたため、十分な文献調査を行うことができなかった。しかしながら、T・スキャンロンの行為評価の多元性に関する論文を執筆することで、道徳的実践のなかで非難が機能する文脈を特定することに成功した。それは、行為の許容可能/不可能性の評価と区別された、行為の事後での行為者についての責任評価という場面である。そこでは、行為に関わる人々が置かれた「関係」、「立場」、「行為が関係に与える影響」の3つの要素が意義をもち、それが非難者に非難のあり様を決定させる。これにより、「これらのファクターがもつ規範性を非難の中心要素と考えるべきか」という問いが今後の研究の方向性として確立された。 令和2年度には、上記の調査に関連して研究会を開催し、研究成果を共有することが計画されていた。これについては、第3回非難の哲学・倫理学研究会をオンラインにて開催した。その中で、ゆるしと非難との関係について研究成果を公開することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウイルス感染拡大防止対策のため、学内外の業務に多くの労力と時間を割かれたために、予定されていた分量の文献調査を行うことができなかった。とはいえ、招待講演や自身の主催する研究会において研究交流を進めることができ、研究の論点・問題点を明確にすることができた。文献調査の遅れは今後取り戻すことが可能であり、全体として本研究の最終的な課題遂行に大きく影響することはない。本年度調査できなかった文献については、令和3年度において研究する。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究で目指されるのは、非難の理論の評価基盤となる事象群を暫定的に特定することと、その評価基盤を実践的な場面において検証・評価することである。令和3年度においては、 前年度に引き続き文献調査を行うとともに、文献調査結果をもとに、非難の評価基盤となる非難現象群について、国内学会において成果を発表する。また、非難の評価基盤の妥当性を評価するために、非難の哲学・倫理学をテーマとした国際研究会を開催する。これについては、オンラインで行うことを計画している。 令和4年度には、令和3年度において開催するオンライン研究会の成果をもとに、依存症者に対する行為評価をテーマとして、対面での国際研究会の開催を目指す。
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Causes of Carryover |
新型コロナ感染拡大対策により、学会等が対面開催されず、オンラインとなっため、旅費を計上することができなかった。交流の不足を図書等での情報収集に切り替えたが、未消化分が出た。
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Research Products
(4 results)