2022 Fiscal Year Research-status Report
A Philosophy of Discrimination and Hate Specch
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20K00041
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
堀田 義太郎 東京理科大学, 教養教育研究院野田キャンパス教養部, 准教授 (70469097)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 差別 / ヘイトスピーチ / 推論主義 / プロファイリング |
Outline of Annual Research Achievements |
22年度は前半はヘイトスピーチと蔑称に推論主義を用いてアプローチするリン・ティレルの議論を踏まえ、差別をめぐる既存の諸議論と接続する論文を執筆した。この論文で、差別の不当性の社会的意味説(ヘルマン)の「意味」を、既存の従属または抑圧を正当化する諸言説を是認または正当化するような推論役割として把握することができ、かつその理解には理論的にも大きな可能性があることを示した。この研究成果は、2月15日のWSで英語として発表し、日本語としては23年度中に刊行予定の書籍に所収予定である。 また、「インターセクショナリティ」概念について、マイノリティ集団への差別の交差に限定して用いるべきという点を再確認する論考を執筆した。 年度後半は、特にマイノリティを対象としたレイシャル・プロファイリングの不当性に関する研究成果を論文として執筆した(23年度に刊行予定)。そこでは特にB・アイデルソンとA・モゲンセンの議論を検討し、モゲンセンの議論を部分的に修正する考察を行った。レイシャルプロファイリングおよび統計的差別に関しても集団基準が重要であり、かつそれは当該の不均衡な不利益処遇が、特定の差別的推論に対して寄与する役割をもつからであるという着想を得た。 また、21年に共著で刊行した『差別の哲学入門』に関連して司法書士会および大阪弁護士会で講演・短報を執筆し、曖昧な点の再検討を行った。また本研究と間接的に関連する報告として障害と人生の意味に関する報告を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初予定よりは遅れてはいるが、特に22年度はヘイトスピーチに対する推論主義的アプローチを、従属・抑圧への寄与説と接続することで差別行為の分析に応用可能性が高いことを確認できた。また間接差別に関してもヘルマンとアイデルソンの論争の検討から争点を明確化にすることができた。ただ、計画に対して遅れがあるため、1年の延長を経て取り戻す予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
1)ヘルマン社会的意味説を推論役割としての意味として明確化する論文を執筆する。特に既存の集団間の従属・抑圧関係を正当化する推論ネットワークやパターンへの寄与として「社会的意味」を捉え直すことで、ヘルマン説とモローの従属説を接続し、かつ既存の差別への因果的寄与の側面に加えて意味的寄与の面を提示することで、従来の抑圧論(フライなど)とも整合的にマイノリティ集団への「差別」の特段の不当性を明確にする。 2)害説とりわけ集団的害説の意義と問題点を明らかにする。集団的害説が集団的害をそれ以外の害から区別する基準は、害の集団間の不均衡さと個々人が被る害の大きさの二つがありうるが、いずれも曖昧さを残しており、とりわけ差別の理論としては致命的な問題があると思われるため、この点を検討し、害説の意義と問題点を明らかにする。
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Causes of Carryover |
当初計画では2022年度3月で研究期間終了だったが、研究開始時の2020年度から新型感染症のため研究会および学会での発表機会がすべて中止となり、研究に必要なフィードバックを得られなくなり、研究の進捗が滞ってしまった。 そのため、1年間の研究期間延長により当初計画を完遂する予定である。
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Research Products
(5 results)