2023 Fiscal Year Research-status Report
A Philosophy of Discrimination and Hate Specch
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20K00041
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
堀田 義太郎 東京理科大学, 教養教育研究院野田キャンパス教養部, 准教授 (70469097)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 差別 / 抑圧 / 推論主義 / ヘイトスピーチ / 従属化 / 哲学 |
Outline of Annual Research Achievements |
2023年度は本研究課題にとって三つの進捗があった。(1)レイシャル・プロファイリングの不当性について、統計的差別の不当性も含めて、行為の意味として同定する議論の検討を行った。(2)ヘイトスピーチを推論主義で分析するL・ティレルの議論の検討を通して差別の意味を推論的正当化・是認として把握する可能性を示した。(3)マイクロアグレッション概念についてデラルド・スーの著作の紹介と検討を行い、個々の行為を他の諸行為との関係で評価する視点の重要性を再確認した。 (1)では、マイノリティに対するレイシャル・プロファイリングの(非マイノリティへのそれに比した)特段の不当性を集団に対する害に求めるB・アイデルソンの議論の限界を確認し、アンドレアス・モゲンセンによる抑圧への寄与説を支持する立場から、行為集合が相互に正当化し合うこと自体に問題を見出す仕方でこれを再解釈した。 (2)では、ティレルの議論を基礎として、ヘイトスピーチおよび蔑称に関する近年の議論展開を、差別や差別発言をめぐる日本の諸議論に接続し、推論という観点の意義を確かめた。 (3)は、マイクロアグレッション概念を理解する最も重要な核が、既存の他の諸行為・言説との関係性にあることを再確認し、そこでも推論という見方の意義を示した。マイクロアグレッションは、当該集団を貶め二級市民化するような他の諸行為・状況から切り離して見ると、単発の暴言や侮蔑、些細な侮辱行為や発言との違い全く不明になり、この点が、現代的レイシズムや現代的セクシズムを考える上でも重要であることを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
延長申請を行ったことにより本研究の中核に当たるヘイトスピーチを通して差別を考えるという当初の課題に取り組むことができ、また推論という観点の有意義さを確認したことで、社会的マイノリティへの差別の特質――社会的意味――を考察する上で重要な観点を固めることができたと考える。 また、差別に関連する具体的な問題であるレイシャル・プロファイリング、統計的差別そしてマイクロアグレッションといった概念について、各々考察を行うことで差別とヘイトスピーチの哲学という本研究課題を全体として完成させる各論となる部分にも一定の成果を得た。また、応用問題として障害者差別に関して「社会モデル」をめぐる二つの解釈の対立点を再検討することができた。障害者差別論そのものの検討には程遠いが、その端緒となる考察を行うことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
24年度は最終年度として、これまでの研究成果を取りまとめる単著として『差別の哲学』の執筆に取り組む。 本年度の新たな研究課題は「抑圧」または「従属化」を差別との関係で明確化することであり、現在先行研究の検討を行っている。ソフィア・モローの「従属への寄与」説とヘルマンの社会的意味説の接合可能性をすでに示しており、推論という観点から、これらを一貫した仕方で説明する枠組みを提示することができると考えている。 具体的な差別事象としては障害者差別の考察が残るが、性急に結論を出そうとするよりもまずは理論的な枠組みとして差別の哲学を完成させたうえであらためて取り組む予定である。
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Causes of Carryover |
昨年度まで新型コロナ感染症により学会および研究会が中止となり旅費として予定していた額が二年半分をほぼ使用しなかったため、23年度には一定の旅費の支出があったが、なお余剰しており延長を申請した。
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Research Products
(6 results)