2022 Fiscal Year Research-status Report
Development of the Idea on Yoginis in Esoteric Buddhism in South Asia: A Critical Study of the Sanskrit Manuscripts of Kambala' Sādhananidhi
Project/Area Number |
20K00054
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
杉木 恒彦 広島大学, 人間社会科学研究科(総), 教授 (40422349)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | サーダナニディ / カンバラ / 後期密教 / サンヴァラ / タントラ |
Outline of Annual Research Achievements |
本件研究課題は、10世紀頃にインドで編纂された密教文献であるカンバラ作『成就法の蔵庫』のヨーギニー関連の合計23の章(第1~3、15~24、26~27、29、33、35~36、38~39、41~42章)の梵語校訂テキストと英語訳注の作成を完成することを目的とする。これらが刊行に至れば、該当諸章の校訂テキスト・訳注の世界初の刊行となり、国際的なインド密教研究の基礎研究の進展に対する着実な貢献となる。 2022年度、研究代表者は、全ての該当章について梵語校訂テキストと英語訳注の草稿を完成させ、校訂テキストと英訳の精緻化と英文注の充実化を進めた。研究協力者の方々と2022年9月と2023年3月にオンラインで2回研究会を行って研究代表者作成の梵語校訂テキストと英語訳注の内容を議論し、2023年1月には国際サンスクリット学会(オンライン)において研究成果の一部を含めた口頭発表を行った。また、必要な補助資料(サンスクリット語写本群)をドイツのゲッチンゲン大学からオンラインで取り寄せた。 以上の成果に加え、『成就法の蔵庫』が、『ヴァジュラダーカ・タントラ』等のヨーギニータントラの諸伝統のみならず、真実摂経系や秘密集会系やチャトゥシュピータ系などの様々なインド密教の諸伝統の経典・論書や、さらに12世紀にインド密教の綜合を試みたアバヤーカラグプタ作『伝承の花房』との類似文を多く含んでいることを確認することができた。これにより、『成就法の蔵庫』の文献史上の意義もより明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コロナ過により対面をともなう出張を行うことに慎重でなければならず、また国際学会もオンライン開催が決定される等、とりわけ海外での活動についてはその全てをオンラインで実行した。それでも研究を大分進めることはできたが、当初予定していたインドやネパールでの現地写本調査を行うことはできなかった。これが「おおむね順調に進展している」と自己評価した理由である。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度は対面での海外出張が通常通り可能となるので、研究代表者は、これまでできなかった現地調査を進めていく(海外出張費使用)。また、研究代表者は、引き続き『成就法の蔵庫』の梵語校訂テキストと英語訳の精緻化を高めていく。同時に、調査する文献の範囲もさらに広げつつ、『成就法の蔵庫』と他文献の間の類似文をできる限り多く探し出し、英文注の内容をより充実させていくとともに、それら類似文を梵語校訂テキストと英訳の精緻化へとフィードバックさせていく。さらに、研究成果の刊行(英語論文)のために、英文校閲費用と論文掲載料(APC)の支出も多く計画している。
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Causes of Carryover |
2022年度は、当初予定していた海外出張3回分(インド・ネパールへの1ヶ月程度の調査出張、ドイツへの一週間程度の調査出張、オーストラリアへの一週間程度の学会出張)が全て、コロナ過によりキャンセル(インド・ネパール出張)あるいはオンライン化(ドイツ・オーストラリア出張)した。これにより海外出張費の支出が0円となったことが、次年度使用額が生じた主な理由である。 2023年度は、これまでできなかった海外への対面調査出張(とりわけインド・ネパールへの現地写本調査出張)を行う。幸い研究代表者は2023年度にサバティカルを得ていることから、海外出張を行いやすい環境にある。上述の次年度使用額を主にこの用途に充てる。
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