2022 Fiscal Year Research-status Report
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20K00094
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
榑沼 範久 横浜国立大学, 大学院都市イノベーション研究院, 教授 (20313166)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 下村寅太郎 / 京都学派 / 日本近代哲学 |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度は夏に京都大学文学部日本哲学史専修の上原麻有子教授に連絡を取り、「下村家から京都大学文学部の日本哲学史専修に寄託された」資料のうち、「上原麻有子主任教授の研究室に保管されている」資料(「京都学派アーカイヴ」<https://www.kyoto-gakuha.org/index.php>>「下村寅太郎-京都大学の下村寅太郎文書」)に含まれるカセットテープ(22本)の存在を確認することができた。そして上原教授のご協力のもと、秋から本研究の基盤であるカセットテープの調査に当たらせていただけることになった。カセットテープを再生して聴いたところ、録音がされていない空テープが1本、音楽テープが1本、そして「大拙 晁水 寸心 鼎談」が1本あったが、残る19本には、テープに貼られたラベルの記載通り、「日本の近代化における士(サムライ)の役割について」「世界史に於ける戦争について」「科学史に於ける医学の地位について」「世界史に於ける農学について」「ルネッサンスにおける種々なる革命について」など、下村寅太郎の談話が録音がされていた。しかしながら、経年によって聴きづらい部分、聴き取れない部分がかなりあるほか、テープの劣化により再生困難なものも一部あった。まずは本研究の予算で購入したオーディオ機器を用いて、再生可能なテープの音声をデジタル(mp3形式)の音声ファイルに変換して保存し、続いて冬にかけて既知の編集会社に発注して文字起こしを行った。歴史的資料のため、編集を加えない「素起こし」である。やはり聴きづらかった部分、聴き取れなかった部分が「素起こし」全体として相当にあり、今後の編集作業の難航が予想されるものの、まずはカセットテープに「潜在」していた下村の音声を、デジタル化して長期保存に備えることが出来たこと、そして、文字化によって今後読みうる資料に編集する下地が出来たことは大きな前進だった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
下村寅太郎に師事し、下村の談話会( 「プリムツァール会」)の常連でもあった方とは、本研究を開始する以前から連絡を取り合い、氏の所持する下村の談話の録音テープを調査させていただけることになっていた。しかしながら、ご体調からテープのご整理も難しく、さらには新型コロナウイルス感染症の流行状況でお会いすることが叶わなかった。そのため当初から計画していた経路での下村テープの調査が、本研究を進めるにあたって全く出来ていない。この遅延状況は2023年春の現在も続いている。2021年度は本研究に基づく論考「下村寅太郎の哲学に向かう」(『常盤台人間文化論叢』8 (1), 横浜国立大学都市イノベーション研究院、2022年3月、131-142頁)を辛うじて発表したものの、2022年度は本研究の実質的な進捗がなかなか得られず、本研究に関する成果発表に至らなかったのが痛恨の限りである。ただ、「研究実績の概要」に記したように、京都大学文学部日本哲学史専修の上原麻有子教授の研究室で保管されている下村テープには、上原教授から許可をいただいてアクセスすることが実現し、音声のデジタル化や文字化を進めることが出来た。研究期間の終了も近づいてくるなか、2023年度は上記の遅延状況を可能な限り改善することをはかりつつ、文字化に成功した記録に関しては自身で編集作業を進め、研究成果として発表することが出来る段階まで到達する計画である。
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Strategy for Future Research Activity |
まずは「研究実績の概要」に記した編集作業を推進させ、可読可能な文章に編集していくと同時に、京都大学文学部日本哲学史専修の上原麻有子教授に相談しながら、この新資料に関する報告・発表を行なっていく。元資料のカセットテープを保管しているのは京都大学文学部日本哲学史専修であり、上原教授のご協力あってはじめて可能になった作業であるため、この報告・発表の場所の選定にあたっては、上原教授と連携しながら進めていく打ち合わせをしている。ご提案いただいている『日本哲学史研究』『哲学研究』への掲載・寄稿や、日本哲学史フォーラムや西田哲学会での報告・発表も、素材から可能な限り積極的に進めていくことは言うまでもない。そして同時に、今年度は是非とも本研究の当初から計画していた経路での下村テープへのアクセスも実現させ、研究を加速させていく所存である。
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