2020 Fiscal Year Research-status Report
グローバルな視野からみる和漢の「文」と日本古典籍をめぐる学術文化史研究
Project/Area Number |
20K00303
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
河野 貴美子 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (20386569)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高松 寿夫 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (40287933)
陣野 英則 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (40339627)
田中 史生 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (50308318)
吉原 浩人 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (80230796)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 文 / 日本古典籍 / 学術文化史 / 和漢 / 東アジア / 中国古典籍 / 世界の古典学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、人文学の危機、あるいは古典をめぐる研究や教育の危機ということが盛んに唱えられる学界の現状に正面から向き合い、人文学や古典の歴史と現在におけるあり方を再考し、将来への指針を打ち出そうとするものである。具体的には、日本における和漢の「文」と、日本古典籍をめぐる学術文化史をグローバルな視野から捉え、過去から現在に至る人文知の歩みについて研究を進めることにより、古典学の課題や意義を改めて問い直し、発信していくことを目指し、以下の3点、すなわち、①日本における「文」の概念をめぐる通史を描き出す研究、②東アジアと世界の古典学の比較研究、③日中古典籍の交流と融合をめぐる研究を柱として、研究を進めている。 ①については、文・史・哲の枠を超えた日本の学知の歴史を「文」の概念の変遷や画期から描き出す著作を執筆することを目標とし、そのための準備として、マサチューセッツ工科大学Wiebke DENECKE 教授と「文」の概念や文学史研究に関する先行研究や原文資料をオンラインによる共同研究の形で読み進め、『日本「文」学史 通史篇(仮)』の概要や具体的目次について検討を進めた。②についてもWiebke DENECKE 教授と共同研究を進め、論文集作成に向けたコンセプト抽出のためのディスカッションを重ねた。そして以上の研究に伴う成果の一部を論文として執筆、公表した。また③については、2018年と2019年に開催した「中日古典学ワークショップ」の成果論文集の刊行に向けて論文を執筆し、編集作業を進行するとともに、今後の同ワークショップ開催のための準備を北京大学劉玉才教授、杜暁勤教授と連携し進めた。国境を越えた移動が制限される中ではあったが、オンラインなどの通信手段を活用しつつ、論文執筆や出版計画に関わる協議、論文集の編集などを優先して行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新型コロナウイルス感染症の拡大により、対面型の研究活動は延期せざるを得なくなった。そのため、人文学の課題をグローバルな視野から捉えるべく海外研究者との連携や協働を大きな柱とした本研究も、少なからぬ影響を受けた。具体的には、三本の柱のうち、②東アジアと世界の古典学の比較研究において開催を予定していたトークイベント、また③日中古典籍の交流と融合をめぐる研究において開催を予定していた中日古典学ワークショップは、いずれも2020年度から2021年度に延期の予定とした。しかし、2020年度は、②については論文集作成のためのコンセプトの検討を重ねて2021年度に向けた準備を進め、③については2021年度のワークショップ開催に向けた協議を行いつつ、論文を執筆し、2018年および2019年に行った中日古典学ワークショップを総括する論文集の編集を進めることができた。論文集は2021年に公刊できる予定である。また①日本における「文」の概念をめぐる通史を描き出す研究については、「文」の概念を基軸にした「日本「文」学史」の執筆に向けて、目次の構成や主要な内容について検討、協議するためのミーティングを重ねて設け、順調に準備を進め、書籍の全体像や具体的プランの構築を達成することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の三本の柱のうち、①日本における「文」の概念をめぐる通史を描き出す研究については、目次構成や各章の内容についてさらに詳細な検討、協議を進めるとともに、執筆に必要となる具体的資料やデータの収集を行っていく。②東アジアと世界の古典学の比較研究については、論文集のコンセプトや具体的な内容の検討を引き続き行いつつ、2020年度に開催延期としたトークイベントを開催すべく準備を進める。③日中古典籍の交流と融合をめぐる研究については、論文集の公刊に向けた編集作業を継続して進め、それと並行して中日古典学ワークショップ開催のための協議、準備を行う。次回ワークショップの主要テーマは「類書」とすることを既に計画している。ワークショップに向けた研究を進めるとともに、新型コロナウイルス感染症の状況をみながら、開催時期や開催方法について慎重に検討していく。
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Causes of Carryover |
2020年度は、新型コロナウイルス感染症の影響により、海外への渡航や、海外からの招聘に関わる予算の執行が不可能であった。そのため、それらのために計画していた予算を2021年度に繰り越し、2021年度に開催を予定しているトークイベントやワークショップの必要費用に使用する計画である。
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