2021 Fiscal Year Research-status Report
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20K00344
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Research Institution | Onomichi City University |
Principal Investigator |
藤沢 毅 尾道市立大学, その他部局等, 教授 (20289268)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 則雄 島根大学, 学術研究院人文社会科学系, 教授 (00252891)
中尾 和昇 奈良大学, 文学部, 准教授 (00743741)
菱岡 憲司 山口県立大学, 国際文化学部, 准教授 (10548720)
藤川 玲満 お茶の水女子大学, 基幹研究院, 准教授 (20509674)
菊池 庸介 福岡教育大学, 教育学部, 教授 (30515838)
大屋 多詠子 青山学院大学, 文学部, 教授 (50451779)
天野 聡一 九州産業大学, 国際文化学部, 准教授 (50596418)
木越 俊介 国文学研究資料館, 研究部, 准教授 (80360056)
三宅 宏幸 愛知県立大学, 日本文化学部, 准教授 (90636086)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 読本 / 文化期 / 出版 / 半紙本 / 中本 / 挿絵 |
Outline of Annual Research Achievements |
江戸時代の「読本(よみほん)」というジャンルの中で、刊行数から見てその最盛期と思われる文化5年、文化6年に刊行された読本について、素材、構成、記述、出版の面から網羅的に精査することによって、この時期の読本が何を目指していたのか、何が評価されていたのかを明らかにすることを目的としている。これまでの研究と違い、著名な作者や作品に注目するのではなく、この時期に刊行された読本を網羅的に精査するところに特色があり、著名な作者・作品の研究に偏った志向を是正するということにもなると考えられる。初年度(令和2年度)はまず文化年間に刊行された読本の年表を仮に作成し、その中で文化5年あるいは文化6年刊の読本について、担当を決め、解題を作成していった。 2年目となる令和3年度も同様に、まずは文化5年刊および文化6年刊の読本について、解題作業を進めていった。解題の中で、文化7年の刊行であることがわかったものもあり、また、比較のため、あえて文化7年刊の読本の解題を行ったこともあった。結果として、この年度には計26点の読本の解題を作成することができた(継続されて出版された読本で刊行時期が異なるものは、それぞれ別の点数として数えた)。解題は年2回のオンライン研究会で発表し、質疑応答によってさらに検討を加えた。解題には、出版における書肆、挿絵、半紙本であるか中本であるかという書物の形態についても意識的に考察した。 作成した解題には、対象としたテキストの書誌情報(内題、作者、画師、書肆、形態、巻構成、冊数、序跋、刊記、刊印修)、梗概、特色をあげ、研究会ではこれをもとに他研究者が質問をしていく。こうした情報を他の読本と比較することで、その読本の特色がはっきりし、また複数の読本の特色が集められることによって、この時期に刊行された読本の特色が顕在化するのである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
調査件数(解題作成対象読本数)から言えば、予定よりも早いペースで進めている。文化5年刊ならびに6年刊の読本のみでなく、文化7年刊の読本の解題にも手をつけることができている。その一方で、新型コロナウイルス感染症の拡大はいまだ収束せず、各研究者が読本の所蔵機関に直接赴き、閲覧の上で、諸本の比較考察を行うという作業がほとんどできない状態が続いている。オンライン上で閲覧できるものは数が限られ、また、直接閲覧しないことには判断できないこともあるため、解題における書誌学的記載には足りない点が生じている恐れがある。この点は、残り2年の研究期間で、対処できるような状況になることを期待するのみである。また、研究会もオンラインでのものを余儀なくされているため、各研究者が所蔵する本を直接見せることができず、深い議論ができないこともある。 初年度に作成した読本年表は、研究会開催のたびごとに改訂している。これまで認識されていた刊行年が違った場合は、正しい刊行年の位置へ移動させる。また、解題によって判明した情報を年表の中に落とし込んでいくことで、大きな流れが見えやすくなっている。併せて、このたびは、江戸での出版記録である『割印帳』に記載されている出版情報を仮に年表に落とし込んでみた。これによって、中心となって出版に向けて動いた書肆、また刊記に現れていない実際の刊行発売日の推測など、出版状況を考える上での補助がなしえた。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、まずは文化5年刊および文化6年刊の読本の解題作成を最優先として進めていく。また、文化7年刊の読本についても進めていく。現存数が少なく、簡単に閲覧できないものは、新型コロナウイルス感染症の拡大が収束しないうちには難しいこともあり、それ以外の読本の解題を先にしておくしかない。できれば、研究会も対面でのものが望ましい。 また、3年目ということであり、この時期の読本の傾向分析を始めることとなる。各研究者が問題として捉えたものを発表し、討議によってより深い考察へと進めていく予定である。現段階では、文化5年刊の読本の刊行数が多いことからの、文化6年刊、同7年刊の読本への影響ということも視野に入れていく。また、曲亭馬琴、山東京伝といった著名作者による執筆作品の影響ということも考えねばならないだろう。この点については、馬琴や京伝読本の特徴と類似した趣向がとられているのか、とられているとすればどのようなものなのかを検討していく必要がある。その一方で、実録を典拠とする絵本読本の考察は、実録との内容面での比較を踏まえ、どういった特徴を与えることで読本らしさを獲得していったのか、また享和・文化初期のそれとは違いがあるのかを考察していく。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症拡大の影響によって、旅費の使用が不可能であった。本来であれば、調査対象書籍の所蔵機関を訪れ、原本を調査する、あるいは複数本の比較調査をするのが必要であるが、それがなしえない状態であった。また、研究会開催もオンラインでのものに余儀なくされ、研究会の参加のための出張経費も使用できなかった。この代わりに、複写物を作成し取り寄せる、書籍を購入するなどの対応を行った。 今後は、新型コロナウイルス感染症が収束し、移動が可能になることを前提に、これまで調査できなかった所蔵機関に集中的に出向き、調査をする。現存数が少なく、複写の作成が不可能である本や、またオンラインでの対応を行っていない所蔵機関に対しては、直接訪れての調査が必要となってくる。また、対面での研究会を開催し、資料を持ち寄り、つき合わせるという方法をも用い、これまで以上の深い討論を重ねていくことを目標としたい。
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Research Products
(12 results)
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[Book] 城郭の怪異2021
Author(s)
菊池 庸介、ほか計10名
Total Pages
219
Publisher
三弥井書店
ISBN
978-4-8382-3384-7