2022 Fiscal Year Research-status Report
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20K00344
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Research Institution | Onomichi City University |
Principal Investigator |
藤沢 毅 尾道市立大学, その他部局等, 教授 (20289268)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 則雄 島根大学, 学術研究院人文社会科学系, 教授 (00252891)
中尾 和昇 奈良大学, 文学部, 准教授 (00743741)
菱岡 憲司 山口県立大学, 国際文化学部, 准教授 (10548720)
藤川 玲満 お茶の水女子大学, 基幹研究院, 准教授 (20509674)
菊池 庸介 福岡教育大学, 教育学部, 教授 (30515838)
大屋 多詠子 青山学院大学, 文学部, 教授 (50451779)
天野 聡一 九州産業大学, 国際文化学部, 准教授 (50596418)
木越 俊介 国文学研究資料館, 研究部, 准教授 (80360056)
三宅 宏幸 愛知県立大学, 日本文化学部, 准教授 (90636086)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 読本 / 文化期 / 出版 / 半紙本 / 中本 / 挿絵 |
Outline of Annual Research Achievements |
江戸時代の「読本(よみほん)」というジャンルの中で、刊行数から見てその最盛期と思われる文化5年(1808)、同6年に刊行されたものについて、素材、構成、記述、出版の面から網羅的に精査することによって、この時期の読本が何を目指していたのか、何が評価されていたのかを明らかにすることを目的としている。3年目となる令和4年度もこの目的にそって調査・研究を行ってきた。 コロナ禍によって、調査旅行は制限されているものの、インターネット上で画像公開をされている資料や複写物を取り寄せた資料によって、計画を進めた。研究会は、2022年9月12日(月)(オンライン)と2023年3月28日(火)(対面)の2回を開催した。研究会では、各担当の読本作品の解題を発表しあい、質疑応答によって考察を深め、また情報を共有した。解題発表のあった作品は、読本年表に反映させている。調査によって、これまで刊行年とされていたものに誤りがあることがわかり、これも読本年表に反映させている。 当初、文化5年刊、同6年刊の読本に絞って調査・考察の対象としていたが、調査の結果、読本に該当しない作品や、それ以前に刊行された作品の改題本であったことが判明したものもあり、調査対象を文化7年、また8年のものも含めることとした。当該年度は、文化5年から8年刊の読本の中で、未調査のもの(コロナ禍によって調査が不可能だったものを含む)を確認し、最終年度での調査を計画した。 最終年度に向け、研究全体のまとめに入り、各自、見出した課題をさらに考察すべく、話しあった。この結果は、報告書の前半部の総説で論述する予定である。報告書は、総説、作品解題、年表で構成することを決定した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度研究実績の概要でも述べているように、当初は文化5年刊と同6年刊の読本を対象としていたが、文化7年刊、同8年刊の読本をも対象に入れることができるペースで調査・考察が進んでいる。この意味では、「当初の計画以上に進んでいる」と言えるのだが、コロナ禍のため、原本調査旅行ができず、諸本の書誌学的な考察がやや不足しているのが難点。研究会もこれまでオンラインがほとんどであったため(2023年3月開催のものは対面)、やはり原本を見せ合うなどの情報共有ができなかったこともある。 これまで調査できた読本数は、文化5年刊のもの42点(未調査のもの2点。また『読本事典』『享和・文化初期読本の基礎的研究』『文政期読本の基礎的研究』の中ですでに調査済みのものが16点。合計60点)、同6年刊のもの21点(上記『読本事典』等ですでに調査済みのもの11点。合計32点)、同7年刊のもの14点(上記『読本事典』等ですでに調査済みのもの7点。合計21点)、同8年刊のもの6点(上記『読本事典』等ですでに調査済みのもの7点。合計13点)の計78点である。事前の予想通り文化5年刊のものが圧倒的に多く、ゆえに最盛期読本の研究というテーマにふさわしいものとなっているが、翌文化6年刊の読本の調査により、量だけでない質の変化の様子を考察し、さらに同7年刊、同8年刊の読本の調査をすることにより、文化5年刊からの量と質の変化についてより詳しく考察できるようになった。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度が研究の最終年度となる。文化5年から8年刊の読本について、未調査のものがないか確認しながら、未調査である読本を調査する。また、研究のまとめにとりかかり、これまでの成果を踏まえた研究会を開催し、最盛期読本の特徴について各自の考察を発表しあい、成果をまとめていく予定である。 未調査の読本については、可能な限り調査する。さいわい、新型コロナウイルス感染症が5類に引き下げとなり、調査の制限が緩和されていることから、所蔵機関や国文学研究資料館での調査を実施し、またこれまでできなかった書誌学的な考察も進めていきたい。諸本調査は、特に原本を見ることにより新たな発見をすることがあるため、少しでも多くの原本を見ることができるよう各自が調整して調査にあたりたい。 対象作品の解題すべてが出揃った状況を迎えることで、その読本について、素材、構成、記述、出版の面から特徴を考察ことが可能になる。解題を通覧することが、さらに考察を深めることになるであろう。また、メンバー各自の視点から総説をまとめあげていく。 研究成果は、研究題目をそのまま報告書名とする『最盛期読本の総合的研究』としてまとめる予定である。当該年度「研究実績の概要」でも述べたとおり、この報告書は、総説、読本解題、年表の3部構成で作成する予定である。この研究は、これまで研究対象となっていなかった読本を含めたものを網羅的に調査考察するという点に特徴がある。そのため、多くの読本の調査にあたり、その結果を研究会で報告してきた。これを踏まえ、最盛期の読本の特徴を考察し、またそこからの変化をも含めて成果をまとめあげることになる。
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Causes of Carryover |
コロナ禍によって使用できなかった旅行(原本閲覧調査など、所蔵機関や国文学研究資料館などに出向いての調査のため)を遂行する。また、研究のまとめとしての再確認のための調査があった場合の旅費にあてる。さらに、当初予定の調査研究対象の文化5年刊、同6年刊の読本から、さらに文化7年刊、同8年刊の読本を対象に拡大したため、報告書をより充実した形で作成していくための費用にあてる。
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Research Products
(18 results)