2023 Fiscal Year Annual Research Report
カナダ作家が見/魅せるアントロポセンの文学―脱人間中心性をめざして―
Project/Area Number |
20K00433
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Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
岸野 英美 近畿大学, 経営学部, 准教授 (90512252)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 アヤ子 明治学院大学, 国際平和研究所, 研究員 (70139468)
荒木 陽子 敬和学園大学, 人文学部, 准教授 (90511543)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 馮艶 / Yung Chang / 文学イベント / クロフォード湖 / マッドアダム三部作 |
Outline of Annual Research Achievements |
最終年度の主な成果は以下の通りである。 岸野は、2022年度に分析したWongの"for bing ai"への理解をさらに深めるために、Wongがこの詩を創作する際に参考にした中国人監督馮艶のドキュメンタリー映画『秉愛』の意義を検討した。三峡ダム建設時に中国当局によって移住を勧告された三峡地域の貧困層の住民の状況について調査したうえで、当局の政策に抵抗する張秉愛の映像を分析し、本作品を制作した馮艶の態度や立場を明らかにした。一方、荒木とともに、中国系カナダ人監督Yung Changのドキュメンタリー映画Up the Yangtzeに目を向け、資本主義大国カナダで生まれ育ったChangが、三峡ダム建設後の長江と住民をいかに描いているかを考察した。本作品では、貧困から脱するために、地元の若者たちが欧米観光客向けの豪華客船で働くことによって、グローバル資本主義経済の渦に巻き込まれていることが示唆されている。この点、前述したWongの詩にも通じる。以上2作品について2名は議論を重ね、論文として纏めた(『英語英文學研究』68号)。また9月に同年7月にアントロポセン(人新世)の始まりを示す基準地候補となったクロフォード湖を訪れた。2024年3月に国際地質科学連合(IUGS)の小委員会の審議と投票により、アントロポセン(人新世)は新たな地質時代として認定されなかったが、現地の資料から、1950年以降にプルトニウムやフライアッシュが急増したことを改めて確認し、同時期に加速した人間活動との関係性について考察することができた。佐藤はAtwoodのMaddAddam三部作についての講演を行った(「カナダ文学・文化公開講演会」)。2024年3月にはシアトルとバンクーバーで開催された文学イベントに参加。UBCやSFUの教授と交流し、本研究課題に関して情報交換を行った。
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Research Products
(4 results)