2022 Fiscal Year Annual Research Report
Faust-Literature and Genealogy of the Death of God
Project/Area Number |
20K00511
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Research Institution | Heian Jogakuin(St.Agnes')University |
Principal Investigator |
高橋 義人 平安女学院大学, 国際観光学部, 教授 (70051852)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
増本 浩子 神戸大学, 人文学研究科, 教授 (10199713)
宮田 眞治 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 教授 (70229863)
細見 和之 京都大学, 人間・環境学研究科, 教授 (90238759)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ファウスト / キリスト教 / 神の死 / 人間の死 / ゲーテ / ニーチェ / T・マン / ブルガーコフ |
Outline of Annual Research Achievements |
ヨーロッパにファウスト文学は20以上もある。ファウスト文学とは、神に反抗し、悪魔と契約した男の物語で、ファウスト文学の作者たちは、自分が時代の過渡期に立っていることを意識しつつ、作品のなかでキリスト教との対決、個人主義的な自我の拡張、宗教の衰微、神の死、悪魔のように暗い時代の影などを描いた。本研究会の目的は、これらファウスト文学の流れを時代を追ってたどりつつ、近代ヨーロッパにおいて「神の死」と「人間の死」が次第に進行していった過程を精神史的に明らかにすることにあり、それはかなりの程度なしとげられたと思われる。コロナ禍によって「人間の死」が現実のものと化す状況のなかで研究会はオンラインを中心に隔月に開かれた。研究分担者が毎回一人発表した後、みなで討議する形式を取った。取り上げられたのは、ゲーテ時代ではゲーテの『ファウスト』(担当:高橋義人)、ヴィーラント『ペレグリーヌス・プロートイス』(担当:宮田真治)、ロマン派以降ではハイネ(細見和之)とニーチェ(担当:細見)、20世紀ではT・マンの『ファウストゥス博士』(担当:高橋)、ヴァレリーの『わがファウスト』(担当:宮田)、デュレンマットの『ファウスト』(担当:増本浩子)、ブルガーコフ『巨匠とマルガリータ』(担当:増本)だった。他に、関連するものとして「三島由紀夫と反近代の思想」(担当:高橋)も開いた。議論は活発に進み、現代がまさに「神の死」と「人間の死」が進行しつつあることを確認する機会になった。19世紀までの作家が抱いていたのは、このまま近代(近代科学・帝国主義・産業革命・祖国喪失)が進んだら大変なことになる、という思いだったが、それは20世紀になると、キリスト教の神が死んだ後、その代わりになる神がいない、帝国主義は進み、ナチスやスターリンによって世界が脅かされる大変な時代が来た、という切迫した危機感になっていった。
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