2021 Fiscal Year Research-status Report
Contextual comparisons revisited
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20K00582
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Research Institution | Tokyo Keizai University |
Principal Investigator |
小田 登志子 東京経済大学, 全学共通教育センター, 准教授 (30385132)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 意味論と統語論 / 「~より」と「~とくらべれば」 / コンテクスト比較の幅広い現象 |
Outline of Annual Research Achievements |
まず、本研究の主張のベースとなる論文をJapanese and Korean Linguisticsに発表することができたため、研究の方向は定まったと言える。この論文では、計画通りHohaus (2015)によるコンテクスト比較の枠組みを日本語に応用した。そして、日本語の「~より」を用いた比較構文の一部は英語の「A-er than~」ではなく「compared to~ + A-er(形容詞の比較級)」と同様の分析が行われるべきであると主張した。また、「~より」のコンテクスト比較の特徴をよりいっそう明らかにするために、本研究の主な分析対象である「~より」の比較構文と「~と比べれば」の比較構文の比較検討を行いPenn Linguistics Conference で発表した。「~と比べれば」はコンテクストベースの比較構文としてSawada (2009)等の先行研究によってその性質がよく知られるようになった。この構文との比較により「~より」のコンテクスト比較の特徴をより正確にとらえることができる。そして、今後の課題を洗い出し、研究の方向性にも言及した包括的な発表を「第1回ことばの小宇宙」で行った。 また、「~より」を用いた比較構文の研究と進めると同時に、日本語におけるコンテクスト比較そのものをより明らかにする必要性を感じ、幅広いコンテクスト比較の現象の一つである文末表現「~なあ」に関する研究をA Comparative Approach to the Syntax-Semantics Interfaceに発表した。これは本研究を側面から支援する意味がある。コンテクスト比較が学会で支持を得にくい理由の一つはコンテクスト比較の認知不足にあると感じている。コンテクスト比較は特別なものではなく、日本語に広くみられる現象であり、「~より」はその一部と位置付けられるべきであると主張したい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コロナ禍により本務校から海外渡航禁止令が出ているため、海外研究者への訪問の予定が立てられないままとなっている。オンラインでの交流は技術的には可能であるものの、時差や相手の状況などにより行いにくい場合もある。また、中国の研究者とは、中国側のインターネットの制限によりテレビ会議が接続しにくい状況になっている。 そこで2021年度においてはオンラインでの交流に好意的に協力してくださっているドイツ・チュービンゲン大学のAlex Wimmer氏との共同研究を主に行った。Alex Wimmer氏との共同研究は当初想定していなかったため、本研究課題そのままの研究は難しかったものの、本研究に引用できる関連事項である文末助詞「~なあ」についての論考をまとめ、学術雑誌に論文を投稿した。現在審査中である。本研究の主張である「コンテクスト比較」の概念を推し進めるためには、コンテクストベースの比較現象が特別なものではなく、幅広く観察される現象であることを学会に周知する必要があり、「~なあ」の論考もその一端を担うものと考えている。 特に遅れているのは本研究の主なデータである「~より」を用いた比較構文の意味論による分析と統語論のellipsis(削除)による分析の比較である。これは自分にellipsis(削除)に関する知識が足りないことも影響している。ellipsis(削除)に関しては膨大な研究の蓄積があるため、本研究に対する何等かの示唆を得られることは間違いないと思われる一方、文献の精査に時間を要している。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度については、本務校は条件付きで海外渡航を認める方針であることを明らかにしている。相手側とうまく条件が合った場合は、Linming Zhang氏(中国)、Duk-Ho An氏(韓国)、Vera Hohaus氏(イギリス)、Sigrid Beck氏(ドイツ)のいずれかの研究者を訪問したいと考えている。
特に検討が遅れている意味論による分析と統語論による分析の比較については、韓国語および日本語のellipsis(削除)の研究に詳しいDuk-Ho An氏(韓国)の助言を得たいと考えている。
また、本研究のコンテクスト比較のベースを提供した Hohaus (2015)の筆者であるVera Hohaus氏(イギリス)と対談し、日本語と中国語におけるHohaus (2015)の分析の応用について助言を求めたいと考えている。
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Causes of Carryover |
コロナ禍により本務校からは海外渡航を禁止されていた。そのため、計画していた海外研究者への訪問が実現しなかったため、渡航に関わる費用(航空券代・宿泊代など)が発生しなかった。
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