2022 Fiscal Year Research-status Report
Contextual comparisons revisited
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20K00582
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Research Institution | Tokyo Keizai University |
Principal Investigator |
小田 登志子 東京経済大学, 全学共通教育センター, 准教授 (30385132)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | コンテクスト比較の対象 / 多用なFrame Setter / シナー語 |
Outline of Annual Research Achievements |
PLC46での口頭発表を基にした How Various Frame Setters Restrict Interpretations of Contextual ComparisonsをUPenn Working Papers in Linguistics Volume 29に提出した。この論文の中ではコンテクスト比較の対象がHohaus(2015)で議論された内容よりもかなり広い可能性があることを示した。Hohaus(2015)ではコンテクストを制限する前提条件をもたらすFrame Setterとしてcompared to NP1 に相当する表現のみが議論されていた。ここに、NP2, NP3等の複数の対象物をもたらす表現を加えて議論した。また主文にも典型的な比較構文のみならずpositivesと呼ばれるPOSオペレータを用いた比較などを用いた。これによりFrame Setterがもたらす前提条件と主文がうまく合致する場合とそうでない場合、すなわちコンテクスト比較が成功する場合とそうでない場合の事例を示した。 ここで分析の鍵となるのはFrame Setterが前提条件として要求する比較のタイプである。「~より」は>(larger than)の比較を主文内に要求するが、「~と比べると」はより汎用的なR(relation in general)を要求すると論じた。こうした提案により、Hohaus(2015)で扱われたよりも広範囲のデータをフォーマルに記述できるようになった。 2023年2月にパキスタン北部においてシナー語の言語調査を行った。シナー語はインド・ヨーロッパ語族インド・イラン語派ダルド語群に属する。調査の結果、シナー語の程度構文(degree constructions)はヒンディー・ウルドゥー語の程度構文と酷似していると同時に、コンテクスト比較の分析が有力な比較構文(comparatives)のデータが見つかった。これは、シナー語、ヒンディー・ウルドゥー語をはじめとするインド・イラン語派に属する多くの言語において、日本語に似たコンテクスト比較が有力な比較構文が見つかる可能性を示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2022年度においても本課題の主要な活動の一つである海外渡航が実現しないままであった。本務校による渡航禁止が解除され、海外渡航が可能になったものの、訪問を予定していた相手の都合が変わり予定が合わなかった。また中国など短期ビザが発行されない国への渡航は叶わなかった。しかし後述するように、2023年度には訪問を予定していた研究者を日本に招聘する形で面談が実現する運びとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年9月5日~8日にドイツRuhr University Bochumで行われるSinn und BedeutungにてHazel Pearson氏 (Queen Mary University of London)およびAlexander Wimmer 氏(Humboldt Universitat zu Berlin)との懇談を予定。 2023年度第41回英語学会にシンポジウム案Comparatives in English and other languagesが採用された。このシンポジウムに海外からDuk-Ho An氏 (Konkuk University, Korea)とLinmin Zhang氏 (NYU Shanghai, China)氏を招聘するとともに、国内からは神戸大学の澤田治氏および小田がシンポジストとして加わることになった。このシンポジウムでコンテクスト比較の主張を行うとともに、コンテクスト比較と競合する統語論的な分析がどこまで可能であるか、またどちらの分析が有力であると思うか、参加者からの意見を募りたい。 シナー語フィールドワークの成果として、シナー語の程度構文について学会で発表するとともに、収集したデータを公開するために東京経済大学紀要『人文自然科学論集』154号に論文を投稿する予定である。
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Causes of Carryover |
コロナ禍を経て海外渡航がかなり可能になったものの、訪問を予定していた相手の都合が変わったり(韓国)、短期ビザがいまだ発行されない国(中国)があるなどの理由で、海外渡航が実現しなかった。 ただし、2023年度には以下の二つの方法で海外の研究者との面談が実現する予定である。2023年9月にドイツで行われるSinn und Bedeutung 28において研究者との面談を行う予定である。また、韓国と中国の研究者については、2023年11月に開催される日本英語学会第41回年次大会におけるシンポジウムのシンポジストとして招聘できる見込みとなった。
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