2020 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
20K00615
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
折田 奈甫 早稲田大学, 理工学術院, 准教授 (70781459)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高橋 大厚 東北大学, 国際文化研究科, 教授 (00272021)
酒井 弘 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (50274030)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 心理言語学 / 項省略 / 人工言語実験 / 言語獲得 / 言語間比較 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、日本語などの言語に観察される項省略に関して近年統語論研究で提案されている反一致仮説の妥当性を、人工言語を用いた実験により検証することである。従来の統語論研究は、関連する言語の母語話者を対象に、容認性判断により仮説を検証してきた。本研究は、近年パラダイムが確立されてきた人工言語実験により統語論の仮説の検証を試み、新しい証拠・反証の発見方法の可能性を探る。また、これまでの日本語の項省略に関する第一言語獲得研究では、子どもが大人のような解釈を「いつ」示すかに焦点が当てられてきたが、「どのように」項省略の知識を学習するのかについては推測の域を出ていない。もし一致の有無がその言語の空項の性質の特定に関与するのであれば、インプットに明示的に現れない空項を「どのように」学習するのかについて、より具体的な問題提起ができる。
初年度の2020年は、日本語母語話者に一致を示す準日本語を学習させ、この準日本語の空項をどのように解釈するかを調査するための実験の準備を行った。新型コロナウイルス感染症の影響で実験をする機会が得られなかったが、2021年度に実験を進めるための準備は整った。
また、本研究が基にしている統語理論の検討として、日本語のコーパスにおける空主語・空目的語の分布を調査した。2394の空項に対して、先行詞の位置・人称・数などの情報を人手でアノテーションし、それぞれの情報が空項の分布の予測にどの程度影響するか定量的分析を行った。統語理論(長谷川2007, 髙橋2020など)の予測通り、制限が多い1人称空目的語は13事例のみでほとんど観察されなかった。13事例を質的に分析すると1人称空主語や3人称空項の分布とは異なる特徴が観察された。2021年度以降はこれらの結果をまとめて学会発表を目指し、本研究の実験デザインと実験結果の考察に活用する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新型コロナウイルスの影響で予備実験・本実験を進めることができなかったが、実験の準備はできている。日本語の実験は2020年から2021年にかけて準備・実験・データ分析を行う予定だったので、2021年度に実験データが十分に取得できれば計画に遅れはない。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度に日本語話者対象の実験を一通り行い、国際学会での結果発表を目指す。2020年度に統語理論の検討として行ったコーパス分析の結果についても学会発表を目指す。2022年度はスペイン語話者対象の実験を行う予定であったが、新型コロナウイルス感染症の影響で現地での実施が困難と考えられる。オンライン実験を行うか国内のスペイン語母語話者に実験参加を依頼するか、2021年度中に検討し方針を固める。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの影響で実験実施の機会が得られなかった。また、同左の理由で国内出張がキャンセルになった。次年度使用額については被験者謝金として使用する。
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