2021 Fiscal Year Research-status Report
Development of syntactic theory using a Minimalist Program-based computer model that generates sentences
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20K00664
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Research Institution | Osaka Kyoiku University |
Principal Investigator |
Ginsburg Jason 大阪教育大学, 教育学部, 准教授 (80571778)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松本 マスミ 大阪教育大学, 教育学部, 教授 (10209653)
寺田 寛 大阪教育大学, 教育学部, 教授 (90263805)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 統合理論 / コンピュータモデル / 樹形図 / 併合 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の主な目的はミニマリスト・プログラムの最新の統語理論を検証するためのコンピュータプログラムを構築することであり、20年度の研究に引き続き21年度もこの目的を達成するために研究を続けた。 本研究で作成しているモデルは自動的に文の樹形図をHTML形式で表示できる。20年度は、モデルの表示機能に力を入れた。特に、半円形で対併合を表すようにモデルを改良した。21年度では、改良された表示機能を利用して、自由併合のモデル化を中心的に研究を進めた。自由併合を無制限に適用すると、1つの文にも無限の数の構造が可能になってしまい、自由併合を制限する必要がある。付票貼付(labeling)とθ理論(主題役割付与に関する理論)上の制約を用いて、自由併合を制限することに成功した。しかし、自由併合は多くの計算を必要とする。例えば、一つの文を正しく生成するには多くの文構造ができるものの破綻してしまうため、非文も大量に生成されてしまう。また自由併合をモデルに取り入れるには多くの時間が必要であった。特に、モデルにおけるバグ(間違い)を直すため、多くの労力を費やした。 自由併合を取り入れたモデルに不定詞、助動詞、そして補部を取る動詞の構文を取り入れた。この構文における付票貼付はどう行われているのかについての論文作成に力を入れ、学術誌に投稿した。不採用になったが現在、この論文を書き直して、別の雑誌に投稿する予定である。また、自由併合はどのように制限されるのかについての論文を学会に投稿した。そして、虚辞構文もモデルに取り入れ、この構文における一致関係はどのように行われているのかについての論文を作成し始めた。学術誌に投稿する予定である。 海外研究協力者Sandiway Fongと分担者の寺田寛らと共同執筆した、動詞が補部に与える制限についての論文は査読を経て、2022年2月に大阪教育大学紀要に掲載された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
21年度には20度予定どおり進まなかった自由併合の研究に取り組み、モデルに取り入れることに成功した。しかし、自由併合を取り入れる作業に時間がかかったため予定していた動名詞構文と同族目的語構文の研究を開始することができなかった。疑問文、基本的な肯定文、そして虚辞構文をモデルに取り入れることに成功した。対象データをモデルに取り入れながら、必要に応じて問題解決を行なった。 いくつかの論文の執筆に努めた。動名詞構文と関係する論文を大阪教育大学紀要に掲載した。また、不定詞、助動詞、そして補部を取る動詞を含む構文における付票貼付についての論文を作成した。この論文で複数の付票貼付の方法を比較して、どの方法がデータを一番良く説明できるか検証した。また、自由併合をどのように制限できるかを論じる論文も執筆した。この論文について特筆すべきことは、項にθ役割が与えられる上で課されるθ理論上の制約と付票貼付の必要性を用いて、自由併合を制限することができることを証明しようとした点である。そして、一致関係についての論文を書き始めた。特に注目した点は、2つの最大投射が姉妹関係にある場合に一致関係を結ぶことで付票が貼付されるという最新の仮定を採用することで、姉妹関係にない要素間の一致関係を説明できないという点である。長距離の一致関係を必要とする虚辞構文をモデルに取り入れて、一致関係についての解決策を模索した。 研究成果の公表が予定どおりに進まなかったが公表できるように努力した。モデルによって得られる多くの分析結果をウェブ上で一般公開している。学術雑誌と学会の論文を投稿したが2つの拙論が審査中である。 新型コロナウィルス蔓延により、海外協力研究者と直接会って研究を予定通り進めることができなったが、Zoomとメールを利用することにより打ち合わせをある程度行うことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度に引き続き、今後、構築中のプログラムを拡大することに取り組む。 21年度には、自由併合を計算できるようにモデルを改良した。しかし、取り組む予定のデータに関して、遅れが生じている。すでに、疑問詞疑問文と虚辞構文をモデルに取り入れた。そして、今までに、付票貼付を利用していないモデルを用いて関係節の分析を行なった。そして、自由併合を取り入れていない付票貼付のモデルを用いて動名詞構文の分析を行った。22年度には、付票貼付と自由併合を取り入れている最新のモデルに関係節、動名詞構文、そして同族構文のデータを取り入れて、対象データにおける付票貼付と自由併合に着目して、分析を行う。 海外協力研究者Sandiway Fongと分担者に相談しながら分析を行う予定である。打ち合わせを行うことでより効率的に、コンピュータモデルの問題点を把握・解決でき、論文作成について話し合うことができる。可能であれば、海外協力研究者と直接会って研究打ち合わせを行う。新型コロナウィルスにより、前年度直接会うことができなかったが、今年の秋、直接会って、打ち合わせを行う予定である。また、打ち合わせのため、ウェブ会議システムとメールなどを適宜利用する。 今年度、自由併合の研究を続ける予定である。そのため、高性能のコンピュータを購入する予定である。購入してから、海外研究協力者Sandiway Fongと一緒に自由併合と付票貼付の研究をさらに押し進める予定である。 研究成果は随時公表する予定である。ウェブ上にモデルの結果を公開する。また、論文作成と学会発表で研究結果を公表する予定である。特に、現在取り掛かっている論文(不定詞、助動詞、そして補部を取る動詞の構文における付票貼付についての論文、虚辞構文における一致関係の論文)の完成に取り組む予定である。そして、自由併合と動名詞構文についての論文にも取り掛かる予定である。
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Causes of Carryover |
2020年度には、購入する予定だったM1チップの高性能のコンピュータの発売延期と新型コロナウィルス感染症のため、旅費を使用できなかったことが原因で1,392,011円の繰越金があった。21年度には、55,000円の物品費と 645,000円の旅費を使用する予定であった。打ち合わせのためのプロジェクターと学術雑誌などに128,998円を支出した。しかし、21年度もアップル社がM1チップの高性能のコンピュータの発売をまたしても延期した。そして、 新型コロナウィルス感染症のため、予定していた旅費を使用することができなかった。そのための累計残高は1,963,013円になった。アップル社がM1チップの高性能のコンピュータをようやく発売したため、今年度、購入する予定である。また可能なら、学会参加や研究打ち合わせのため、旅費を有効に使用する予定である。今年の秋、海外協力研究者のSandiway Fongと打ち合わせをする予定である。
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Research Products
(5 results)