2023 Fiscal Year Research-status Report
認知特性により学習に困難を示す日本語学習者への支援体制構築に向けた基礎的研究
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20K00703
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Research Institution | International Christian University |
Principal Investigator |
武田 知子 国際基督教大学, 教養学部, レクチャラー (80409804)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
保坂 明香 立教大学, 国際化推進機構 日本語教育センター, 教育講師 (40833116)
澁川 晶 国際基督教大学, 教養学部, レクチャラー (60322327)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 日本語学習 / 躓き事例 / 指導事例 / 学習者支援 / 質問紙調査 / 聞き取り調査 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、何らかの認知特性によって日本語学習に躓いている事例とその対応や指導事例を収集し、大学等高等教育機関における日本語学習者支援体制構築の一助とすることである。 2023年度は、2022年度に行った聞き取り調査によって得られた9名の日本語教員のインタビューデータを、オープンコーディングの手法を用いて質的に分析した。具体的には、以下のような手順を踏み、分析を行った。 ①9名の聞き取り調査のデータのうち、学習者支援についての記述を特定し、分析対象を絞り込む。 ②データを分析単位に分割(切片化)する。③切片化したデータにラベル名をつける。④ラベル同士をカテゴリーに分類する。⑤カテゴリー同士を関連付け、結果をまとめる。 調査の結果、①支援内容について、教員は配慮依頼のあった項目だけでなく、授業の様子や学習者本人から聞き取った内容、周りの学習者への影響を配慮し、総合的に決定していることがわかった。②支援については、個人指導をする、教材のフォントのデザインや大きさを変更するといった支援対象者に対する個別の対応だけでなく、授業全体の進め方や教材を変更する等のインクルーシブな対応をとっていた。③支援を困難にする要因として、支援依頼のタイミングが学期開始直前であったり開始後で対応を検討する時間がない、担当者間の当該学生に関する情報共有が不十分であるといった点が明らかになった。 これらの分析結果をまとめ、2024年日本語教育国際研究大会に応募をした。その結果、採択され、2024年8月の研究大会で発表をする機会を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2023年度の研究計画は、①SNSによる聞き取り調査参加依頼、研究全体の進捗状況報告、②学習者の学習上の躓き、日本語教員の支援方法に関する事例収集、③日本語教育機関での聞き取り調査の事例分析であった。2022年度に9名の日本語教員に対し、約10時間に及ぶインタビューを行い、十分な事例を収集していた。そのため、2023年度は新たな事例収集は行わず、③の事例の分析に集中し研究を行った。 2023年度に質的分析の結果をまとめ、2024年日本語教育国際研究大会に応募をし、採択された。このことから、本研究課題は概ね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
2024年度の研究計画は以下のとおりである。 最終年度であるため、研究の成果をまとめ、日本語教員に共有することを目的にホームページを作成する。ホームページでは、①事例、指導・支援案の提供、②学習者支援のための情報提供を行う予定である。
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Causes of Carryover |
2023年度は新たなデータ収集は実施しなかっため、聞き取り調査のための出張も行わなかった。そのため、次年度使用額が生じた。 2024年度に、海外での国際研究会にて発表の機会を得たため、出張費用として使用する予定である。
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