2021 Fiscal Year Research-status Report
日本語教師養成における実践的コミュニケーション能力育成プログラムの開発
Project/Area Number |
20K00713
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
嶋津 百代 関西大学, 外国語学部, 教授 (90756868)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
北出 慶子 立命館大学, 文学部, 教授 (60368008)
古川 智樹 関西大学, 国際部, 准教授 (60614617)
義永 美央子 大阪大学, 国際教育交流センター, 教授 (80324838)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 日本語教師養成 / 日本語教育 / 教師教育 / 実践的コミュニケーション能力 / 教室談話 / 言語行動 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、日本語教師の実践的コミュニケーション能力のモデル化と評価指標の構築、および実践的コミュニケーション能力育成のための教材とプログラムを開発することを目的としている。2021年度は、本研究の2年目として、以下の取り組みを実施した。 (1)日本語教師の実践的コミュニケーション能力に関する理論的考察:2020年度に引き続き、本研究に関連する先行研究や文献を収集・参照し、日本語教師の実践的コミュニケーション能力の定義づけとモデル化のための理論的枠組みについて考察を行い、能力の定義と理論的枠組みをより精緻化させた。その成果は、学術論文にまとめ公表した。 (2)当事者による実践的コミュニケーション能力についての議論:さらに、当事者の視点から日本語教師の実践的コミュニケーション能力を検討するために、また教室内コミュニケーションの課題を特定するために、日本語教師養成課程の大学生・大学院生に、日本語教師が必要とする実践的コミュニケーション能力について、グループによる議論を依頼した。この課題は、上記(1)の考察の過程で浮上したものである。また、同様のトピックで教育実習生数名によるフォーカスグループディスカッションも実施した。 (3)授業内の教師と学習者の言語行動のコード化:本研究の1年目であった2020年度は、新型コロナウィルス感染症拡大対策のため、当初の研究方法の変更を余儀なくされ、研究開始前年のパイロット調査で収録していた録画資料を文字化する作業を始めた。2021年度は、パイロット調査時に収集してあった録画資料の文字化を全て済ませた。そして(1)で構築した理論的枠組みに即して、教師と学習者の言語行動をコード化した。 上記(1)から(3)の成果は、本研究を実施するための理論的視座と基礎データをより精緻化させ、本研究を一層前進させる重要なものとなり、2022年度の研究への橋渡しができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2021年度は、日本語教師の実践的コミュニケーション能力を構成する要素を特定し、理論的モデルの精緻化と具体的な評価基準の策定については、一定の成果をあげることができた。しかしながら、日本語教師の実践的コミュニケーション能力の評価指標(ルーブリック)の作成、および評価指標の項目の妥当性の検証(因子分析)までは至らなかった。 また、2021年度の研究の過程で、教室内コミュニケーションの課題を特定するのに、日本語教師養成課程の大学生・大学院生によるグループディスカッションや、教育実習生によるフォーカスグループディスカッションなどの必要性が生じ、実施した。他方、教師と学習者に対するインタビュー調査は行わなかった。上記の評価指標の作成や検証が不十分であったことが理由である。教師と学習者に対するインタビューは、2022年度に実施するとともに、日本語教師養成課程の教育実習生にもインタビューを行う。 なお、初級・中級・上級の3つのクラスで授業観察を予定していた当初の計画だが、課題遂行やデータ分析の過程で、日本語教師の実践的コミュニケーション能力は、初級レベルの学習者に対して最も重要であることが明らかになってきた。そのため、学習者の日本語能力別に対応する実践的コミュニケーション能力については引き続き検討するものの、2022年度も初級レベルの学習者に対する実践的コミュニケーション能力の考察に注力する。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の3年目である2022年度の目標は、以下の通りである。 1)日本語教師の実践的コミュニケーション能力の評価基準の精緻化とルーブリックの作成、および指標項目の妥当性の検証 2)授業内コミュニケーション上の課題を特定・整理するための教師と学習者へのインタビュー調査 3)日本語教師の実践的コミュニケーション能力の事例作成 1)については、2022年度上半期に、速やかに因子分析とルーブリックの作成に入り、代表者と分担者が引き続き検証を繰り返していく。その成果と2021年度の成果を合わせて、2022年8月10-11日にアメリカ・ペンシルバニア大学で開催される“The Second International Symposium for Critical Language Education(第2回批判的言語教育国際シンポジウム”での研究発表を予定している。2)については、2023年度の教材作成に向けて、教師と学習者による授業内コミュニケーション上の課題を特定・整理していく必要があり、教師と学習者に対してインタビュー調査を行う。また、日本語教育の現場からの視点も取り入れたく、日本語学校などの現職日本語教師にもフォーカスグループインタビューを依頼・実施する予定である。このようにして、教師と学習者の視点からの分析を2023年度のプログラム開発にも反映させていく。3)については、日本語教師養成で用いる教材作成の準備段階の課題として位置づけている。まず、2021年度までに作成した文字化資料をもとに、日本語教師の実践的コミュニケーション能力が必要とされる授業内のコミュニケーションの事例をあげる。同時に、日本語教師養成課程の教育実習生にもインタビューを行い、それらの事例の妥当性を確認すると同時に、教材における事例として適切かどうかも検証していく。
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Causes of Carryover |
本研究に必要なデータ収集として、2020年度・2021年度に予定していた授業観察が遠隔授業となり、また対面でのインタビュー調査も実施できなかった。そのため、購入予定であった物品の購入や研究協力者への謝金が必要でなくなり、次年度使用額が生じた。2022年度は、2021年度に実施できなかった教師と学習者に対するインタビュー調査を行い、新たに現職日本語教師数名に対してフォーカスグループインタビューも依頼するので、調査にかかる必要経費として支出を見込んでいる。また、学会での研究発表の旅費としても支出予定である。
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[Book] "Teaching and Learning Second Language Pragmatics for Intercultural Understanding" (分担執筆:Andrew Barke & Momoyo Shimazu )'Mixed-Culture Discussion Activities as a Tool for Developing Pragmatic and Intercultural Awareness'2021
Author(s)
McConachy, T., Liddicoat, A. J., Fujino, H., Savic, M., Myrset, A., Pizziconi, B., Alfred, P., Warner, C., Barke, A., Shimazu, M., Morollon-Marti, N., Ishihara, N., Porcellato, A., Schauer, G. A., Sanchez-Hernandez, A., and Maiz-Arevalo, C.
Total Pages
228
Publisher
Routledge
ISBN
978-0367555788