2020 Fiscal Year Research-status Report
自己調整理論とS2Rモデルを援用した読解方略指導教材の開発と評価
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20K00767
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Research Institution | Anan National College of Technology |
Principal Investigator |
勝藤 和子 阿南工業高等専門学校, 創造技術工学科, 教授 (50363130)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 学習観 / 学習方略 / 自己調整学習 / 高専生 / 英語学習 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は学習方略に関する文献精査を中心に行った。 1. 高校生の英語学習における学習動機と学習方略(堀野・市川,1995):学習動機,学習方略,学業成績からなるモデルを基本に,各成分を明らかにし,関連を検討した。「賞罰の直接性」の要因よりも,「学習内容の重要性」の要因によって学習動機は区分された。対象は,高校3年生の英単語学習,方法は,質問紙によって調査,因子分析した。 2. 高校生の学習観の構造(植木,2002):学習観に関する質問票を高校生の自由記述から作成し,BALLIとは異なる教科共通の尺度となっている。「方略志向」,「学習量志向」という従来の学習観の他に,「環境指向」という新たな学習観が見出された。学習方略との関連から「環境志向」の学習者は,精緻化方略については「方略志向」の学習者と同じくらい使用するが,モニタリング方略になると「学習量志向」の学習者と同程度にしか使用しない傾向がわかった。 3. 日本人大学生の英語学習における目標志向性と学習観および学習方略の関係のモデル化とその検討(中山,2005):英語学習動機と学習方略の中間要因として学習観を考え,目標志向性とともに学習方略選択を予測するモデル化を試みた。大学生の英語学習を調査対象とし,遂行目標への高い志向性は,推測方略の選択に負の影響を与え,学習目標への高い志向性は,メタ認知方略や発音方略,体制化方略の選択に正の影響を与えた。 4. 高校生の英語の学習観と学習方略(赤松,2017):英語学習観と学習方略,学業成績の関連を検討した研究。因子分析により,教科共有の学習観として,学習量志向と方略志向,英語教科固有の学習観として伝統的志向と活用志向,間接的方略としてメタ認知的方略,直接的方略として体制化方略,イメージ化方略,反復方略,音声記憶方略が見出された。パス解析では,学習観内と学習方略観内に規定関係が確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
文献精査については,概ね順調にすすんでいる。 質問票については,多くの過去の文献を精査し,必要なものに絞り込むために,時間を要している。 なお,学生からのボトムアップによる質問項目の作成も計画していたが,コロナ禍で遠隔授業の教材準備に時間が費やされてしまい,順調に進められなかった。また,後期から始まった対面授業の回数が限られていたことから,少ない授業時間を割いて,アンケートを実施したり回答を収集することが困難だった。
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Strategy for Future Research Activity |
令和3年度は,まず,自己調整学習理論やS2Rモデルに基づいた質問票を開発する。White et al (2007) の行った調査を基に,自己調整学習と読解方略の調査のためのアンケート項目を検討する。LASSI(The Learning and Study Strategies Inventory)や MSLQ(Motivated Strategies for learning Questionnaire)などを参考にする。次に,アンケートの実施と分析を行う。高専生1年生と2年生からデータを収集し,因子分析する。学習ストラテジーの現状,資質,環境などの関係を分析し,指導を強化するストラテジーを見極める。その後,学生の英語読解力の現状の把握のため,客観テストを用いて,指導前の英語力を把握しておく。 引き続き,国内におけるストラテジー指導の実証的な研究を文献精査する。特に,Anderson(1991))や Ikeda & Takeuchi(2003)や Ozeki (2000)らの実証的研究について精査を深め,学習ストラテジー指導教材の開発の基とする。 次に,読解方略の指導教材の開発する。読解方略指導教材の開発は,読解教材そのものの選定も重要になることから,自身の過去の研究(勝藤, 2014)を参考に,読解指導教材の検討もここで行う。リーディングに関するストラテジーの指導教材とリーディング指導を試行する。実験群と統制群に分けて読解方略指導の効果を測る。学習者の読解使用の記録を行う。Lee (2007) によるカラーコーディング法による記録や学生の内省的記述や個人インタビューによる記録を用いる。 収集した記録を質的・量的の両側面から分析する。これらの分析を考察し,教育的提案を行う。
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Causes of Carryover |
コロナ禍で参加を予定していた学会がオンライン開催となり,また,感染予防の面から県外への出張は不要不急とされていたので,旅費が使用できなかった。また,謝金やその他についてもデータ入力のアルバイト学生を雇って,その費用や文房具購入費と考えていたが,コロナ禍の影響で実施できなかった。理由は,学生はコロナの感染が拡大している時は登校が制限されており,対面授業が始まってからも,オンライン授業に追われて多忙だったりした。また,感染予防に万全をはかったアルバイトの場所や道具の確保にも課題があった。 令和3年度は,旅費については,県外への出張が許可されるようになれば活用する予定だが,令和2年度のように予算の執行が困難な場合は,文献,コンピュータソフトウェア,遠隔授業や会議に必要な機器などの購入に充てて,有効な予算執行を行う考えている。謝金の使用については,感染予防を徹底して場所を確保した上で,アルバイト学生を雇い,予算執行を確実に行う予定である。
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