2020 Fiscal Year Research-status Report
山口県域の銅生産・銅銭鋳造関係古代出土文字資料を用いた政治・社会的地域特質の解明
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20K00960
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Research Institution | Kyoto Prefectural University |
Principal Investigator |
竹内 亮 京都府立大学, 文学部, 特任准教授 (10403320)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山本 崇 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 都城発掘調査部, 上席研究員 (00359449)
黒羽 亮太 山口大学, 人文学部, 講師 (90867392)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 木簡 / 長登銅山跡 / 長門鋳銭司跡 / 周防鋳銭司跡 / 赤外線 / 出土史料 / 出土銭貨 / 官営工房 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の第1年目に当たる令和2年度は、(1)山口市教育委員会・山口大学による史跡周防鋳銭司跡発掘調査で出土した木簡の整理・釈読・報告、(2)美祢市教育委員会による史跡長登銅山跡発掘調査で出土した木簡の写真・記帳・実測図等整理を主に実施した。(1)については、山口への出張により記帳を木簡全点について完了、発掘調査や木簡洗浄の状況も現地で視察し、木簡保存処理に先立って行う必要のある水漬け状態での木簡の観察と釈読、出土状況等の把握を研究班全員で実施することができた。これに続いて、奈良文化財研究所(奈文研)への委託研究事業として行う木簡保存処理へ向けた作業が分担者山本を中心として進み、奈文研での木簡撮影(可視光・赤外線とも)、木簡接続の検討を含む再観察と記帳などを実施することができた。こうした調査成果に基づき、出土木簡に関する報告文を代表者竹内が執筆し、山口市教育委員会・山口大学が発行する発掘調査報告書に寄稿した。(2)については、美祢への出張により、保存処理前における木簡の赤外線テレビ画像を撮影記録したフィルム・八木充氏等による木簡記帳・池田善文氏等による木簡実測図・木簡番号簿ほかの整理記録類などを一括して借用し、奈文研のフィルムスキャナーや複合機等を使用してデジタルデータ化した。これにより、現在は全点の保存処理が完了している長登銅山跡出土木簡がかつて水漬け状態にあった時点における記録類を全てデジタル化し、第2年目以降に実施予定の木簡デジタル撮影等に向けた調査研究基盤を整備することができた。以上(1)(2)のほか、研究班各位が行った出土文字資料や古代銭貨生産等に関する研究成果を発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1)山口市教育委員会・山口大学による史跡周防鋳銭司跡発掘調査で出土した木簡の整理・釈読・報告については、当初の予定どおり発掘調査が完了し、2021年3月に発掘調査報告書が刊行された。本研究第1年目はこの報告書刊行に間に合うように出土木簡調査を一通り終わらせることを目標としており、報告書への報告文寄稿を実現できたことでこの目標は達成されたと見なし得る。また、本研究での調査協力実績を踏まえて山口市から奈文研への木簡保存処理委託が実現したことも特筆に値しよう。(2)美祢市教育委員会による史跡長登銅山跡発掘調査で出土した木簡の写真・記帳・実測図等整理については、美祢市の協力を得てこれらの借用が円滑に進み、本研究費でのアルバイト学生雇用や奈文研写真室の協力等により順調にデジタル化を実施することができた。デジタル化したデータの整理等の作業が若干残り、第2年目へ持ち越されたものの、基幹となるスキャン作業はおおむね完了することができたので、順調に進展していると評価してよかろう。以上(1)(2)のほか、研究班各位が行った研究成果の発表が進み、次年以降へ向けた研究の展開も期待できる状況で第1年目を終えることができた。本年は、新型コロナウィルス感染拡大に伴う緊急事態宣言等の予期しない事態により出張やアルバイト学生の雇用等に若干の影響が出たものの、おおむね大過なく研究を進めることができたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)山口市教育委員会・山口大学による史跡周防鋳銭司跡発掘調査で出土した木簡の整理・釈読・報告については、本研究第2年目に当たる2021年度に奈文研への委託事業として木簡保存処理等が進められる予定である。本研究ではこの事業に協力し、保存処理後の木簡撮影(可視光・赤外線)による画像データの整理、釈読の再検討、報告文の作成等を実施したい。同事業には奈文研側の担当者として分担者山本が中心となって当たる予定であり、出土史料・保存処理・写真等を専門とする奈文研の研究者との協力体制を構築しながら、この木簡群の調査研究を進めていきたい。(2)美祢市教育委員会による史跡長登銅山跡発掘調査で出土した木簡の写真・記帳・実測図等整理については、第1年目で積み残したデジタルデータ整理等の作業を第2年目の早々に完了させ、これらのデータを用いて長登銅山跡出土木簡の撮影(可視光・赤外線)に向けた準備を開始したい。同木簡群は、所蔵者である美祢市における機材等の制約といった理由から、これまで本格的な撮影が行われてこなかった。本研究では奈文研写真室専門職員の協力を得て、最新のデジタルスチールカメラ他の撮影機材を長登の現地へ搬入して木簡の全点撮影に挑む予定である。新型コロナウィルス感染拡大に伴う緊急事態宣言等の制約もあり、出張を伴う撮影や調査はなかなか予定が立てづらい状況ではあるが、様々な方策を講じて撮影の実現を目指していきたい。また、その他の資料所蔵機関(下関市、防府市ほか)との交渉も随時進めるほか、研究班各位による研究も引き続き進めていく所存である。
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Causes of Carryover |
本研究の当初計画では、第1年目に赤外線デジタルビデオカメラ装置を購入して木簡の観察と釈読に当てる予定であったが、奈文研の機材更新により、現在奈文研で使用している赤外線装置を山口県等の遠隔地へ持ち運んで使用することが可能になる見通しが立った。この機材は分担者山本が勤務する奈文研藤原庁舎で管理しているもので、本研究での使用が可能であることから、新たな機材購入は見送り、予定していた費用を他の用途へと当てることにした。本研究では山口県域への出張を予定しているが、その日数が当初計画よりも増加する見込みであり、また近年の印刷費高騰により最終年度に刊行を計画している『山口県古代出土文字資料集成』の作成費用が当初計画よりも高額になることが予想されるので、費用を繰り越してそれらの用途に当てる所存である。
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Research Products
(6 results)
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[Book] 山口市埋蔵文化財調査報告第125集 史跡周防鋳銭司跡 第3次・4次・5次・6次調査2021
Author(s)
丸尾 弘介, 種浦 加代子, 田中 晋作, 齊藤 大輔, 永井 久美男, 竹内 亮, パリノ・サーヴェイ, 渡辺 正巳, 川本 耕三, 白石 純, 畠山 唯達
Total Pages
206
Publisher
山口市教育委員会,山口大学山口学研究センター
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