2021 Fiscal Year Research-status Report
時間/空間の変容の分析による現代ドイツの歴史的特性の解明
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20K01070
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
高橋 秀寿 立命館大学, 文学部, 教授 (70309095)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 時間/空間 / 犠牲者 / 記憶 / 反ユダヤ主義 / 過去の克服 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、「犠牲者」概念をめぐる問題にも取り組み、戦後ドイツにおけるその概念の変遷と、その歴史的変遷を日本との比較において行った。その研究成果は単著『ドイツ人犠牲者の戦後史――戦争・反ナチス・追放・性暴力』にまとめた。そこでは戦争や反ナチ抵抗運動、戦後の故郷からの追放、性暴力といった犠牲がどのようなものであったのか、犠牲者は戦後社会でどのような扱いを受けたのか、どのように記憶されていったのか、その扱いと記憶は戦後のなかでどのように変化していったのかを論じることで、戦後世界の時間と空間の変遷を明らかにした。原稿はすでに書き終わっているが、出版社との関係でまだ公表されていない。 この単著の執筆と同時に、ドイツにおける反ユダヤ主義の研究を行い、それを「過去の克服」の問題とかかわらせながら、現在はそれを『反ユダヤ主義と「過去の克服」――戦後ドイツ国民はユダヤ人とどのように向き合ってきたのか?』(仮題)と題して出版することを目指し、執筆に取り組んでいる。序章と終章を含めて全8章からなるが、そのうちの4章の執筆はすでに終えている。 これと並行して、二つの書評を公表した。一つが「水野博子著『戦後オーストリアにおける犠牲者ナショナリズム――戦争とナチズムの記憶をめぐって』が『歴史学研究』2021年8月号に、「ベティーナ・シュタングネト著『エルサレム<以前>のアイヒマン』」が『公明新聞』2021年8月23日号に掲載された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コロナ禍でドイツに研究調査に行くことができず、ドイツ史における時間/空間研究の重要な研究テーマである記念碑研究に支障が生じている。また、出版社との関係で、研究成果の公表がかなり遅れている。 しかしそれ以外ではおおむね研究計画通りに研究は進んでいる。ただ、反ユダヤ主義研究に時間がかかりすぎて、ほかのテーマがやや手薄になっていることはいがめない。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策として、 1)単著『ドイツ人犠牲者の戦後史――戦争・反ナチス・追放・性暴力』ができるかぎり早く出版されるよう、出版社との交渉などを進めていく。 2)次の単著として考えている『反ユダヤ主義と「過去の克服」――戦後ドイツ国民はユダヤ人とどのように向き合ってきたのか?』(仮題)の執筆を進めていく。 3)この次の単著の「序論」でその理論的考察を行うつもりであるが、その内容をあまり専門的に書くと一般読者層には理解できない内容になってしまう。したがってその「序論」の部分の理論的な説明を専門的に正確かつ詳細に行うために、べっ甲で執筆し、学術誌に論文として載せることを考えている。 4)コロナ禍が収まり、ドイツに研究調査に向かうことが可能になったならば、ドイツの記念碑を訪れ、その研究を進めていくことにする。
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Causes of Carryover |
コロナ禍のため、国内出張が制限され、またドイツへの研究旅行を断念しなければならなかったために、その経費が残った。ドイツへの研究旅行を夏季休暇と春期休暇において計画しており、次年度使用額はその費用に充てるつもりである。
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Research Products
(2 results)