2022 Fiscal Year Research-status Report
インドネシアにおけるフードチェーンの変化による農村世帯生計と農村社会の変動
Project/Area Number |
20K01161
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Research Institution | Tohoku Gakuin University |
Principal Investigator |
遠藤 尚 東北学院大学, 教養学部, 准教授 (40532156)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | フードチェーン / 流通 / 生鮮野菜 / 外資系大型スーパーマーケット / 農村 / 発展途上国 / インドネシア |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,インドネシアを事例に,経済成長に伴うフードチェーンの変化による農村社会,および農村世帯生計の変動について明らかにすることを最終的な目標とした。そして,この点について検討するために2つの副次的な目的を設定した。まず,国内での商品調達が不可欠な生鮮野菜に注目して,外資系大型スーパーに至るフードチェーンの実態を捉えることである。そして,外資系大型スーパー向けの生鮮野菜産地における生産状況,外資系大型スーパー向け野菜導入による世帯,および農村社会への影響を明らかにすることである。 2020年度以降,2022年度前半まで新型コロナウィルスの世界的な感染拡大が進んでいたため現地調査を行うことが困難だったが,2022年度後半には状況が収束に向かったため,インドネシア西ジャワ州,およびバリ州を対象とした予備調査を実施することができた。西ジャワ州,西バンドゥン県,レンバン郡では,まず外資系大型スーパー向けの生鮮野菜の加工・流通を担う業者(PT.Bimandiri)を対象に,取り引きを行っている野菜生産農家数や所在地,農家との関係,出荷先のスーパーなどについての聞き取り調査を実施した。その結果,取り引き先の農家の多くは郡内の狭い範囲にとどまっており,取り引きの契機も人的ネットワークによる情報によるところが大きいことが明らかとなった。次に,この業者と取引関係にある農家2世帯を対象に,農業経営状況等に関する聞き取り調査を行った。また,2014年以降定点調査を行っている同郡内のスンテンジャヤ村において,農家グループの代表を対象とした同様の聞き取り調査を実施した。これらの調査結果から,業者との関係を持つ農家と持たない農家の差異についてある程度把握できた。加えて,バリ州では,同州における生鮮野菜,および神前に供える花卉の生産地とその特徴について確認することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
2022年度前半までは,新型コロナウィルスの世界的な感染拡大のため,海外渡航が難しい状況にあり,国内における先行研究の整理,および現地の研究協力者からの情報収集を実施していた。しかし,2022年度後半には感染拡大状況が落ち着いたため,2023年2月にインドネシア西ジャワ州,およびバリ州を対象とした予備調査を実施することができた。その結果,2023年度に実施を予定している本調査の準備に必要なデータを入手することができた。また,研究協力者と調査対象者から8月の本調査の実施について了承をとることができた。予備調査終了後,8月の予備調査までは,予備調査の結果を元に,外資系大型スーパー向けの生鮮野菜を栽培している農家を対象としたアンケート票を用いた聞き取り調査の調査設計と準備を行う予定である。また,比較のため伝統的な流通ルートで野菜を生産しているスンテンジャヤ村においても同様の農家世帯調査を行う見込みである。一方で,研究全体の遅れの影響から外資系大型スーパーを対象とした聞き取り調査については,具体的な実施時期などが現時点では未定となっている。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度に実施した予備調査の結果を基に本調査の準備を行い,2023年8月には本調査を実施する予定である。本調査で得られたデータの分析から,外資系大型スーパー向けの生鮮野菜産地における生産状況,外資系大型スーパー向け野菜導入による世帯,および農村社会への影響について考察を行い,2023年の秋以降に実施される学会で報告することを目指している。2020年度以降行っている発展途上国における近年のフードチェーンやフードシステムに関する先行研究の整理と展望論文の執筆についても引き続き行う予定である。また,外資系大型スーパーを対象とした聞き取り調査については,8月の本調査時にPT.Bimandiriに取り引き状況などを再確認した上で,調査先とのコンタクトを試みることを想定している。可能であれば2023年度中にスーパーを対象とした調査を行いたいと考えているが,本調査の分析や補足調査の必要性の状況によっては,再度補助事業期間延長申請を行う予定である。
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Causes of Carryover |
2022年度後期には予定していた数回の現地調査の中で,予備調査を実施することができた。これにより予定していた物品費,旅費,謝金の支出があった。一方,予備調査の実施準備等のために,文献レビューの成果に関する学会発表は見送ったため,成果報告に伴う旅費の支出は2023年度となる見込みである。また,新型コロナウイルスの世界的な感染拡大による研究計画の後ろ倒しの影響で2022年度内に実施できなかった本調査は,2023年度8月に実施するため,それに伴う物品費,旅費,謝金も2023年度に支出予定である。 新型コロナウイルスの感染拡大の落ち着きに伴い2022年度後半から急ピッチで研究を進めているが,研究計画全体の遅れは取り戻せていない。企業に対する調査と補足調査を同時に行うなど,調査回数を減らす努力はしているものの,2023年度内の研究完了は困難である。このため,補助事業期間延長申請を行った上で2024年度の予算使用も想定している。
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