2020 Fiscal Year Research-status Report
Historical Reconstruction and Changing Process of the Taiwan Plain Aboriginal Groups of Taiwan
Project/Area Number |
20K01197
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
清水 純 日本大学, 経済学部, 教授 (30192610)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 台湾 / 平埔族 / 命名慣習 / クヴァラン族 / 連名 |
Outline of Annual Research Achievements |
本プロジェクトでは、2020年から2024年までの5年間の計画で、台湾の平埔族社会にの特性を明らかにし、漢族との関係性をはじめ、日本植民地時代の統治、戦後の各政権下での政策などがもたらしてきた影響と変化についての考察を進める。そして平埔族の諸特性を社会人類学の観点に立って検討しようとするものである。 2020年度の研究計画としては、台湾への2回程度の渡航を予定し、文献や論文を収集するとともに、現地の平埔族村落での聞き取り調査によって過去(国民党時代・日本統治時代)に遡るデータを収集する予定であった。しかし、コロナ感染拡大の影響により、台湾でのフィールドワークが実施できなくなったため、予定を変更してまずは2022年度に予定していた研究内容に差し替えて研究を進めた。 取り上げたテーマはクヴァラン族の命名慣行である。すでに1980年代半ばの調査時に収集していた日本統治時代の戸籍資料とフィールドデータを再整理し、さらに2018年度に行った短期補充調査での聞き取り結果を踏まえて、日本時代から現代までの命名慣行の在り方とその変遷について考察した。また、歴史学者によるクヴァランの名前に関する先行研究を、実証データに基づいて検証し、クヴァラン族の社会慣行、親族認識等の社会人類学的なテーマとのかかわりを踏まえて考察した。また、連名制度を持つ山地の原住民族と、クヴァラン族並びに他の平埔族の連名慣行を比較し、家族・親族観念と命名慣行との相関にも考察を進めた。10月には、台湾と日本を結んで開かれたオンラインによる国際フォーラム「第13回日台原住民族研究論壇」において本年度の成果発表を行った。また、2020年11月刊行の『台湾原住民研究』24号にクヴァラン族の命名慣行論文を発表した。さらに2021年2月には日本順益台湾原住民研究会の定例研究会でも連名慣行に関する発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新型コロナウイルスの感染拡大により、今年度の研究計画に織り込んでいた台湾でのフィールドワークができなくなった。そこで、その代わりに、2022年度に予定していた命名慣習のテーマに切り替えて、これまで収集した文献資料とフィールドデータを利用して研究を進めた。その結果、当初想定していた以上の成果があり、研究発表や論文執筆に結びつけることができた。その意味では当初の予定を変更したにもかかわらず、十分な成果を上げることができたと考えている。ただし、論文で取り上げた事例の一部については台湾での補充調査が必要であったにもかかわらず、その補充調査がかなわなかったため、その検討は、先送りとなり、今後の課題として残された。とはいえ、このことは論文自体の出来栄えにおいては大きな影響はなかった。研究内容の口頭での発表に関してはいずれも好評価を得ており、また論文も査読者からも一定以上の評価を得た。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度に入ってもまだ新型コロナウイルスの世界的な感染が収束していないばかりでなく、本年度内に収束するかどうかの見通しも立てにくい状況である。そのため、2020年度同様、予定していた研究計画の一部変更を加えざるを得ないと判断した。そこで、海外での調査をとりあえず計画から外し、2020年度に行った研究と同様に、フィールドワークに代わるものとして、これまで収集した資料や文献資料を利用した研究を実施することとする。まずは昨年来のクヴァラン族の命名慣行についての研究をさらに進め、今年度は、タオカス族やパゼッヘ族、あるいはサイシャット族族などのような連名制度を持つといわれる台湾の他原住民族との命名慣習の比較研究、および、各民族の親族関係の特性と命名慣行との関係について考察する。また、17世紀のオランダ資料中に見られるクヴァランはじめ東海岸の諸民族の名前の資料の整理と分析を進め、クヴァラン族はじめトルビアワン族、ヴァサイ族などの命名慣習の特徴について清朝時代以後の分析結果との比較考察を進め、それらの固有性と変容について検討することとする。
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