2021 Fiscal Year Research-status Report
Historical Reconstruction and Changing Process of the Taiwan Plain Aboriginal Groups of Taiwan
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20K01197
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
清水 純 日本大学, 経済学部, 教授 (30192610)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 台湾 / 平埔族 / クヴァラン / 命名慣行 / 社会組織 / 歴史記録 / 戸口調査簿 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、台湾のオーストロネシア語系諸民族のうち、漢化著しい平埔族と総称される諸族について、個々の伝統社会の家族・親族・社会構造・政治的権威のあり方を、社会人類学的分析によって再構成する試みである。平埔諸族の歴史資料を主たる検討材料とし、過去のデータに現地調査を組み合わせ、個々の平埔族の過去から現在への変化を明らかにすることを目指している。 2021年度は台湾での文献調査とフィールドワークにもとづき、台湾東北部・東部のクヴァラン、トルビアワン、バサイ各族の社会組織と政治的権威の形態について考察する予定であったが、2020年度に拡大したCovid-19の感染症が収束しなかったためフィールドワークが実施できなかった。そこで、テーマを平埔諸族の命名慣行や社会組織にしぼり、タオカス族、バブザ族、バサイ族について歴史学の文献資料を中心に研究を進めた。このうち、クヴァラン族の命名慣行の実態と、日本の植民地戸籍への反映され方についての研究成果は、1月に国際ワークショップ(リモート開催)にて研究発表を行い、台湾の研究者と意見交換をした。発表では、清朝時代の歴史的古文書と、日本統治時代の戸口調査簿という公的記録の性質の違いが連名の記録の多寡に反映していることを指摘した。これにより、クヴァランの連名慣行の特質が浮き彫りとなり、平埔族には制度としての連名制が存在したという従来の議論に一石を投じた。 研究発表は、2022年1月22日(土)に科研費研究ワークショップ「台湾原住民族社会と身分登録書類:多文化時代のエスニシティに関する制度の研究」(研究代表者:松岡格)において、「記録された名前と記録されなかった名前:清代~現代のクヴァラン人の命名慣習」として中国語で行った。このワークショップは台湾の研究者と日本の研究者をオンラインで結んで開催され、有意義な意見交換がなされた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究がやや遅れていることについての理由は以下のとおりである。 ① 2021年度は、台湾での文献調査とフィールドワークを行い、とくに台湾東北部・東部のクヴァラン、トルビアワン、バサイ各族の社会組織と政治的権威の形態について考察する予定であった。しかし2020年度から広がったCovid-19の感染症が収束しなかったため、日本大学においては教員の海外渡航が禁止となり、台湾への渡航と調査研究がかなわず、文献調査に一部とフィールドワークの実施ができなかった。 ② 清水本人の定年退職と重なり、研究室からの退去、特任教授室への移動等の物理的な作業が多くなり、なかでも書籍類の整理には予想外に多くの時間を必要としたため、研究にかける時間がやや少なくなった。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度の研究成果をもとに、さらに平埔族の命名慣行と社会組織についての文献研究を進めていく。感染症の収束が見られなくても、クヴァラン族とトルビアワン族の名前に関しては過去の自分自身の調査データがあるため、それを活用する。 また、クヴァランの儀礼に登場する名前と実際の村人の名前、およびオランダ時代の文献資料中に記録された名前との比較研究を進める。 また、当初の予定であった、タイヴォアン族の植民地時代の戸籍の分析を開始する。戸籍資料はすでに過去の実地調査によって取得したものを利用する。 一方、感染症の収束が見られ、海外渡航が可能になった場合には、台湾調査を行い、文献データの収集とフィールドワークを行って、研究資料の補充に努める予定である。これらの研究成果は、国内外の研究フォーラム、ワークショップ及び研究会などで発表する予定である。
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Causes of Carryover |
台湾調査を予定していたが、実施されなかったため、次年度使用額9万円が生じた。この金額は、およそ台湾への一往復分の航空費とそれに伴う国内外の交通費に相当する。2022年度は感染症の収束が見られることを予測して、台湾への渡航に使用する。台湾では入国後に一定の隔離期間を要求されることも考えられるため、その期間の宿泊費としても使用する予定である。あるいは感染症が再拡大するなどして渡航ができなかった場合には、国内調査費用として活用する予定である。
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