2022 Fiscal Year Research-status Report
ローマ法における無権限者の行為に関する追認理論の再検討
Project/Area Number |
20K01250
|
Research Institution | Kyushu International University |
Principal Investigator |
菅尾 暁 九州国際大学, 法学部, 教授 (20552326)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | ローマ法 / 無権限 / 追認 / 事務管理 / 債権回収 / 表見相続 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、無権限者の行為をなぜ追認できるのかという問いを解明するために、無権限者の行為の法的構成を類型化して、追認対象となる行為の範囲を明らかにすることを目的とする。本年度中は次の点につき研究を進めた。前年度末に行った研究会報告「債権回収における追認と事務管理の成立」における主要法史料であるD. 3,5,5,11-12(Ulp. 10 ad ed.)と、その前後の法史料を検討し、事務管理に関する文献を渉猟した。また、非債の債権回収における追認問題という視点で、関連法史料を抽出し、整理、検討を進めた。 具体的には、D. 3,5,5,11では、法学者ウルピアーヌスが非債の債権回収において事務管理を認めるための「要素」としてcontemplatioを持ち出している。このことは、非債の場合には、contemplatioがなければ債権回収者が誰のために取り立てたのか不明であり、その宛名と追認者が合致しなければ、事務管理が追認者に対して成立しないことに根拠があると思われる。続くD. 3,5,5,12はこのことを前提とするものと考えられ、表見相続人に対する弁済は非債弁済と同視し得る状況になるにもかかわらず、contemplatioについて言及がなされていない。また、弁済者と真正相続人の間で事務管理は成立していないとされる。この両法史料の違いがどこから生じるのかについて、法史料上の文言、そして表見相続人の追認による法的関係(事務管理訴権、相続財産返還請求、非債弁済返還請求)について考察した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
年度前半では前年度の研究をある程度進めることができたものの、年度後半では育児のため研究に注力する時間を割くことができず、研究成果発表にも至らなかったため、上記区分に該当すると判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
非債の債権回収において追認により事務管理が成立する問題を解明するため、関連する法史料の検討をさらに進める。具体的には、追認したとはいえ表見相続人に事務管理訴権が帰属するのはなぜか(D. 3,5,5,12)という問題を中心に据え、密接に関連すると思われるD. 3,5,5,11など関連法史料の検討を通じて明らかにする。
|
Causes of Carryover |
令和4年度に未使用額が発生した理由は次の通りである。(1)新型コロナウイルス感染症対策のために他大学での蔵書閲覧・複写機会が大幅に限定されてしまったこと、(2)国内外での文献調査・収集が難しかったこと、(3)特に年度後半に育児により研究に時間を割くことが困難になったこと、である。 (3)に関しては解消の見込みが立っており、(1)(2)に関しては一部開放を再開した他大学図書館の直接利用、その他については相互貸借・複写依頼を利用して、必要文献の収集に努めることで対応したい。
|