2023 Fiscal Year Research-status Report
ローマ法における無権限者の行為に関する追認理論の再検討
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20K01250
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Research Institution | Kyushu International University |
Principal Investigator |
菅尾 暁 九州国際大学, 法学部, 教授 (20552326)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | ローマ法 / 追認 / 事務管理 / 債権回収 / 無権限 / 表見相続 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、無権限者の行為をなぜ追認できるのかという問いを解明するために、無権限者の行為の法的構成を類型化して、追認対象となる行為の範囲を明らかにすることを目的とする。本年度中は次の点につき研究を進めた。前年度から取り組んでいるD. 3,5,5,11-12(Ulp. 10 ad ed.)を中心に法史料の検討をさらに進め、事務管理成立事案における債務者の免責問題と関連付けて研究を行った。 具体的には次の通りである。管理者が本人を誤信して管理した場合に、誰の事務であるかは客観的に決まるのが原則とされるものの、主要法史料と位置付けるウルピアーヌスのD. 3,5,5,12においては、管理者が表見相続人のために債権回収した場合に、表見相続人の追認によって表見相続人と管理者間で事務管理が成立するとされる。この事務管理成立後に真正相続人は表見相続人に対して相続財産回復請求権を持つことになる。このことから、ウルピアーヌスは債務者が支払った金銭については表見相続人と真正相続人間で決着をつけさせることを想定していると考えられるところ、債務者の免責については当該法史料は言及していない。先行研究においては、債務者の免責時点について見解が分かれている。 具体的な成果として発表するには至らなかったが、ローマ法研究会(九州大学、令和5年12月7日開催)において、「表見相続人の追認による事務管理成立事案における債務者免責問題」と題して、報告した。報告に対する意見などを踏まえて、令和6年度に成果を公表する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
年度前半では育児などのため研究に注力する時間が限定されてしまい、年度後半から研究を進めることができるようになったものの、具体的な成果を公表できなかったため、上記区分に該当すると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
非債の債権回収において追認により事務管理が成立する問題を解明するため、関連する法史料の検討をさらに進める。また、前年度の研究会報告で頂戴した意見などを踏まえ、債務者免責問題はひとまず切り離し、無権限者の追認と事務管理の成立に対象を限定して考察する予定である。
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Causes of Carryover |
令和5年度に未使用額が発生した理由は次の通りである。(1)家庭の事情により遠方への出張が難しく、文献調査・収集が難しかったこと、(2)特に年度前半は育児により研究に時間を割くことが困難な状況が依然として継続してしまったこと、である。(1)については来年度も一定程度影響があるが、(2)についてはほぼ解消している。文献などについては、必要に応じて、購入や他大学図書館の直接利用、相互貸借・複写依頼を通じて入手していくことで対応したい。
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