2020 Fiscal Year Research-status Report
A Comparative Study of Constitutional Peace Litigations
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20K01283
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
君島 東彦 立命館大学, 国際関係学部, 教授 (20221921)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
植松 健一 立命館大学, 法学部, 教授 (90359878)
シン ヒョンオ 立命館大学, 国際関係学部, 授業担当講師 (40815487)
河上 暁弘 広島市立大学, 付置研究所, 准教授 (30515391)
三宅 裕一郎 日本福祉大学, 教育・心理学部, 教授 (50535557)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 憲法平和条項 / 憲法平和訴訟 / 平和的生存権 / 安保法制違憲訴訟 / 韓国憲法 / 韓国憲法裁判所 / 米韓同盟 / 良心的兵役拒否 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、日本、韓国、米国、ドイツの4カ国における憲法平和訴訟を包括的にとらえて、それらを比較することで、憲法平和条項に関するできるだけ普遍的・一般的な理論を構築し、その普遍的・一般的な理論の中に日本国憲法9条を位置づけることを目的としている。2020年度は2回の研究会を開催して、本研究の問題意識の確認・共有を行ない、日本と韓国の憲法平和訴訟の分析を行なった。本年度の研究会では次の諸点を確認した。 1) 憲法平和条項を比較するための歴史的・構造的な座標軸・視座が必要であるが、憲法の他の諸条項の国際比較研究と比べると、それはまだ極めて不十分であり、比較のための座標軸・視座の確立は本研究の課題である。憲法平和条項の国際比較研究は世界的にみて未発達であり、日本の研究者の役割が大きい。 2) 憲法平和訴訟=司法過程を、政治過程および社会運動等の大きなプロセスの中に有機的に位置づけてとらえることが必要である。 3) 日本の憲法平和訴訟においては━━これまでの主要な訴訟においても、現在進行中の安保法制違憲訴訟においても━━平和的生存権という憲法が保障する権利をどのようにとらえて、訴訟においてどのように展開するかが大きな論点であった。平和的生存権に関する理論的な検討が深化した一方で、日本の憲法平和訴訟を東アジアの平和秩序をつくるためにどのように活かすかという課題もあるだろう。 4) 韓国の憲法裁判所においても、2000年以降、憲法平和訴訟の提訴、憲法平和論の進展が顕著である。米韓同盟に伴う訴訟(イラク派兵違憲確認、米軍基地移転違憲確認、戦時増員演習違憲確認の3つの訴訟)においても、韓国憲法に依拠する平和的生存権論が争点となった。また、良心的兵役拒否者の憲法上の権利をどのように保障するかが争われた3つの訴訟において、憲法平和論の深化が見られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
日本、韓国、米国、ドイツの4カ国の憲法平和訴訟をまず個々の国ごとに分析することが研究の第一段階であり、2020年度は4カ国のうち日本と韓国についての分析を行なうことができたので、おおむね順調といえる。米国とドイツの分析は2021年度に行なう予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度は米国とドイツの憲法平和訴訟の分析を行なう予定である。2021年度は全体として4回の研究会を開催する(6月、9月、12月、3月に開催予定)。6月と9月の研究会では米国の憲法平和訴訟の分析を行なう。6月は本テーマに関する専門家を報告者として依頼し、9月は研究分担者が報告する。12月と3月の研究会ではドイツの憲法平和訴訟について分析する。12月はゲストの報告者、3月は研究分担者が報告する。 最終年度の2022年度は、日本、韓国、米国、ドイツの4カ国の憲法平和訴訟の分析から憲法平和条項の普遍的・一般的な理論の構築を試みたうえで、本研究を総括する国際シンポジウムを開催する(コロナ感染症の状況次第でオンラインまたは対面で)。また、本研究の内容を、日本平和学会の研究大会で報告する予定である(おそらく2022年度春季研究大会で)。 コロナ禍で外国出張ができないという点を別にすると、当初の研究計画の変更の必要性はないと考えられる。
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Causes of Carryover |
2020年度は新型コロナ感染症のため、研究会に招聘しようとしていた講師を招聘することができず、旅費と謝金の未使用分が生じた。また研究代表者が他の研究費で図書購入をしたため、物品費に未使用分が生じた。これらが次年度使用額を生じた主たる理由である。 次年度使用額は、物品費(図書購入)、2021年度に開催する研究会の講師への旅費・謝金、研究会を手伝ってもらう学生アルバイトの人件費等として使用する予定である。
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