2020 Fiscal Year Research-status Report
男女間の差異と経済発展・経済成長の間の相互作用に関する研究
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20K01545
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
安井 大真 京都大学, 経済学研究科, 准教授 (30584560)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 教育 / ジェンダー / 出生率 / 経済成長 |
Outline of Annual Research Achievements |
男女の大学進学率の逆転現象(20世紀後半に、ほとんどの先進国といくつかの新興国や途上国において、女性の大学進学率が急上昇し、男性の大学進学率を逆転した)について、クロスカントリーのパネルデータを用いて調査したところ、様々な現象(一人当たり所得の増加、乳幼児死亡率の低下、平均余命の増加、出生率の低下など)の中で出生率の低下と非常に関連が強く、その関係は頑健であることを発見した。また、先行研究から、男女の身体的な強さの違いは、文化的差異や経済発展の度合いに関わらず、多くの国で似通っているという情報を得た。そのような発見および情報に基づき、男女間で身体的な強さに違いが存在する状況の中で、高等教育に関する意思決定と出生に関する意思決定の両方が行われるような動学的一般均衡モデルを構築した。 そのようなモデルを分析した結果、頭脳偏向的技術変化(労働市場において肉体の屈強さよりも頭脳の明晰さが重要になるような技術の変化)が生じると、婚姻率の低下、出生率の低下、大卒賃金プレミアムの上昇、男女の賃金ギャップの縮小、男女両方の大学進学率の上昇、男女の大学進学率の逆転、という多くの先進国で観察された現象が説明可能であることがわかった。現時点で得られた結果は理論的な結果が中心であるが、上記のような現象をすべて一つのモデルで説明可能な動学的一般均衡モデルは既存研究には存在せず、本研究の新たな理論的貢献と言える。 今後は、構築した理論モデルに基づいて量的な分析を行う。アメリカのマイクロデータを利用してカリブレーションおよびシミュレーションを行う計画である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までに行ったことを列挙すると以下の通りである。ほぼ当初の計画通りに進行していると言える。 ・クロスカントリーのパネルデータ分析に基づいて、男女の大学進学率の逆転現象を説明する際に焦点を当てる要素(出生率の低下、男女の身体的差異の存在、頭脳偏向的技術変化)を特定できた。 ・そのような要素を盛り込んだ理論モデルを構築できた。 ・そのような理論モデルを解析的に分析し、検証すべき仮説を導き出せた。
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Strategy for Future Research Activity |
現在までで理論的な結果を得ることはできたが、今後は数量的な分析を行うことで、どの要素が量的にどのくらい重要な役割を果たすのかを突き止める必要がある。 そのために、次年度はアメリカのマイクロデータに基づいてカリブレーションを行ってパラメータを特定化し、そのようなモデルを使って反実仮想実験などを行う計画である。 現在までに構築した理論モデルは複雑で、非常に多くの要素が入っているために、要素間の相互作用がどのように働いているかがわかりにくいという問題がある。単純化などが必要になった場合は、数量的分析を行いながら、必要に応じて理論モデルに変更・修正を加えていく。
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Causes of Carryover |
解析的分析の後に数量的分析に進み、その数量的分析を行うためのパソコンなどを購入する予定であったが、解析的分析を終えるのに年度末までかかったために、次年度使用額が生じた。 解析的分析はおおむね終了し、これから本格的に数量的分析に移行する。したがって、次年度使用額は、当初の計画通り、パソコンなどの数量的分析に必要な物品の購入を中心に使用する予定である。
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