2020 Fiscal Year Research-status Report
A study of voluntary provision of environmental offsets under monopolistic competition
Project/Area Number |
20K01570
|
Research Institution | Association of Urban Housing Sciences |
Principal Investigator |
吉田 雅敏 公益社団法人都市住宅学会(都市住宅研究センター), 都市住宅研究センター, 研究員 (00201012)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
太田 充 筑波大学, システム情報系, 准教授 (10176901)
S.J Turnbull 筑波大学, システム情報系, 准教授 (90240621)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 環境オフセット / カーボンニュートラル / 独占的競争 / 一般均衡 / 公共財の自発的供給 / 消費の環境外部性 / 生産の環境外部性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の初年度における研究計画である関連分野(環境経済学・公共経済学・理論経済学・ゲーム理論)の文献調査・研究を行い、独占的競争下での環境オフセットの自発的供給に関する研究を可能にするモデルを構築した。 具体的には、バーグストロームなどによる公共財の自発的供給にかんする伝統的な部分均衡モデルとコーチンによる消費外部性下での環境オフセットの部分均衡モデルを統合した独占的競争の一般均衡モデルを作成し、以下の主要結果を導出した。 「独占的競争企業により生産される差別化された財を消費することにより生じる環境質の悪化を補正するオフセットを各人が自発的に供給する一般均衡モデルの中では、人口規模の増加はグロス・オフセットと消費による環境悪化要因を差し引いたネット・オフセットの均衡水準に重大な影響を及ぼす。結果は、消費と環境質から成る効用関数の特定化に依存する。しかし、多数の個人から成る経済では、これらのオフセットはこの特定化から独立である。グロス・オフセットは正で、その結果ネット・オフセットがゼロであるいわゆる“カーボン中立性”が成立する。」 この結果とモデルのパラメータ(環境質の自然水準、消費の環境悪化因子、独占的生産の固定・限界費用など)の変化によるの比較静学分析結果は、英文論文(Voluntary provision of environmental offsets under monopolistic competition)として取りまとめられ、国際雑誌(International Tax and Public Finance)に投稿された。この論文は、「環境経済学と公共経済学の新しいパスを切り開く画期的な論文である」と二人の審査員及び編集者の一人から高く評価され、受理された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
初年度の研究計画であった独占的競争下での環境オフセットの自発的供給に関する研究を可能にする既存文献の調査・研究と一般均衡モデルの作成が予定通りに行われ、このモデルに基づくいくつかの研究課題に対する様々な分析も行われた。また、研究実績の概要にも記したように、分析結果の一部は英文論文としてまとめられ、国際雑誌に投稿・受理された。 新型コロナの感染下で予定されていた国内・国外の学会での報告や研究会への参加が取りやめになったにもかかわらず、このような当初の計画以上の大きな進展があった理由は本研究の事前準備が研究代表者と分担者の間で十分に行われたことと、都市住宅研究センターと筑波大学を起点にした代表者・分担者間の連絡と研究会が頻繁に行われたことである。
|
Strategy for Future Research Activity |
研究計画の初年度では、環境外部性は消費活動が原因であるモデルの中でオフセットの自発的供給の分析が行われた。研究計画に従い、本年度は生産活動が環境悪化要因であるモデルの中で分析を行う。具体的には、所得を稼得する活動により引き起こされる環境質の悪化を補正するオフセットを各人が自発的に供給する生産外部性がある場合の独占的競争の一般均衡モデルの中で、人口増加が環境質、グロス・オフセット、およびネット・オフセットに及ぼす影響を分析する。このモデルにおけるグロス・オフセットは、消費外部性におけるオフセット市場からの環境財購入のみならず労働市場への労働供給の調整(結果として生産水準の調整)と各人による自主的な汚染削減活動から成る。 環境悪化が消費活動により引き起こされる場合のモデルと同様に、それが生産活動による場合のモデルも現在内外で深刻になっている新型コロナ感染を分析し、適切な政策を考案していく際に非常に有益である。消費外部性があるときには、人口が増加しても環境質は減少あるいは増加しながら、正の水準に収束することが初年度の研究から明らかにされた。かくして、この場合には感染者数などの指標で測られる環境質の水準は最悪な状況にはならない。しかし、生産外部性があるときには、人口規模が大きいと、環境質は減少し、最悪な状況になるかもしれない。この結果の検討が今後の大きな研究課題である。 消費外部性の場合には人口規模の大きな中国・米国のような国や東京・大阪のような地域でも感染(環境質)レベルを正の均衡水準に維持できるから、この水準を是とする限り政府の干渉は必要ない。しかし、生産外部性の場合には均衡での感染状況は最悪になるので、人口規模が大きい国や地域では、ロックアウト・緊急事態宣言のような強い規制や無料のワクチン接種などの政府政策が必要になるだろう。
|
Causes of Carryover |
新型コロナの感染流行のため、旅費を伴う内外の学会・研究会に出席ができなかったため。今後、流行が収まれば、旅費として使用する。
|
Research Products
(1 results)