2021 Fiscal Year Research-status Report
公務員および公務員志望者の不正行動傾向の分析とその抑止方法
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20K01626
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Research Institution | Fukushima University |
Principal Investigator |
小島 健 福島大学, 経済経営学類, 准教授 (60754827)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
林 嶺那 福島大学, 行政政策学類, 准教授 (60846236)
森川 想 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 講師 (10736226)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 公共部門 / 経済実験 / 不正行動 / 公民比較 |
Outline of Annual Research Achievements |
公務員と民間で働いている正社員(以下、会社員)を対象として、オンラインでズル行動を調査し、公務員の方がズルをしないことを明らかにした。この調査は、ズルをすることで実際に利益を得られる質問をアンケート回答者にすることで、回答者の不正回避選好を計測したものである。公共部門では、1つの不正行為が社会に大きな影響をもたらす一方で、不正に対する過剰な監視が費用となり、また革新を妨げる要因ともなりえる。したがって、その集団の不正選好は不正防止を設計するうえで重要な指標となる。本研究は、平均的な会社員よりも平均的な公務員の方が、不正を嫌う傾向があることから、公務員の不正防止にかけるべき費用は会社員のそれよりも低いことを示唆している。他方、同調査より、公務員の方が会社員よりもリスク回避的であることが示された。これは、不正発覚による損失を嫌うと同時に、リスクの伴う革新も嫌う傾向にあることを示唆し、したがって、民間部門に比べて公共部門は不正防止費用を節約し、一方で革新促進費用に費やすべきであるという政策的含意を示唆する。 続いて、ズル行為がもたらす利得が、自身のものとなる場合、知らない他者(以下、パートナー)のものとなる場合、自身とパートナーのものとなる場合、募金される場合の4つのケースを調査した。どの場合においても、公務員の方が会社員よりもズルをしないことが明らかとなった。加えて、会社員は利得が自身のものになる場合に最もズル行為をするが、公務員は利得が自身とパートナーのものになる場合に最もズル行為をすることが明らかとなった。詳細な分析は今後行う予定だが、不正回避選好が最も低くなる環境が、民間と公務員で異なることを示唆しており、特に公務員は、自身を含む多くの人の利得になる場合にズルを容認する傾向があることを示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
先行刺激と公務員志望者の不正行動については、東北大学大学院政策デザイン研究センターのワーキングペーパーとしてまとめあげた。順次国際雑誌に投稿している。 続いて、オンラインアンケートの調査結果は2つのテーマでまとめあげ、国内学会と国際学会で報告を行い、有益なコメントをいただいた。現時点で、2本のプロシーディングとなった。2022年度に論文としてまとめ上げ、投稿予定である。 また、倫理審査結果の有効期間が所属機関在籍中に限られることから、所属機関の変更に伴い、新たなオンラインアンケートと経済実験の実施を2022年度へと遅らせることとしたが、2022年度の前半中に倫理審査を申請し、経済実験を実施する計画であるため、十分に後れを取り戻せる範囲である。したがって、やや遅れているが、おおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、経済実験案を確定し、倫理審査を申請し、日本国内と海外にて経済実験を実施する。国内では大阪大学社会経済研究所を、海外ではスリランカを予定している。ただし、スリランカへの渡航が不可能であった場合を想定し、フィリピンでの実施およびオンラインアンケートによる調査を同時に計画していく。調査が終了し次第、最後の分析と報告を進めていく。
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Causes of Carryover |
研究代表者の所属機関変更に伴い、倫理審査結果の適用期間が2021年度末までとなった。そのため、新たに実施するオンライン調査を2022年度に行うこととし、新しい所属機関における倫理審査を適用させることとした。そのため、2021年度に予定していた調査を2022年度に変更することに伴い、次年度使用額が生じることとなった。
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