2020 Fiscal Year Research-status Report
オープンアクセスジャーナル市場における大手出版社の独占力行使の検証
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20K01663
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
浅井 澄子 明治大学, 政治経済学部, 専任教授 (00329476)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | オープンアクセス / 論文処理料 / 独占力 |
Outline of Annual Research Achievements |
大手出版社がオープンアクセスジャーナル市場において独占力を有しているか否かについて実証分析を行った。具体的には、ElsevierやSpringer Natureのような出版社が、オープンアクセス論文の発行に際して課す論文処理料(APC)が、過度に高いものであるか否かを検証するため、APC・論文数・引用指標の3つの推定式を連立で推定した。推定により、APCの決定要因を明らかにするとともに、大手出版社が独自に刊行したジャーナルよりも、吸収した企業が刊行したジャーナルに高いAPCが課せられていることが示された。このことは、伝統的な出版社は、高いAPCを課しても多数の論文が投稿されるブランド力のあるジャーナルを刊行する出版社を自社内に取り込んでいることを意味する。 次に、オープンアクセスジャーナル出版社として歴史と実績のあるBMCとHindawiを対象にAPCの変化とその要因について実証分析を行った。より実績のあるBMCは、高い引用指標を持つジャーナルのAPCを引き上げ、引用指標がAPCの水準に大きな影響を与えているのに対し、Hindawiは、多くの論文を集めるジャーナルのAPCを引き上げ、引用指標はAPCの変化に影響を与える指標ではないことを明らかにした。 3番目は、学会や大学などの研究機関が、オープンアクセスジャーナルの刊行を大手出版社に委託することが多い現状を踏まえ、委託によるジャーナルの国際化と引用指標の向上の効果について実証分析を行った。その結果、全体として委託は正の効果を与えるものの、ジャーナル間でその効果の大きさに差異があり、委託以外に研究機関による魅力的な特集号の編集や国際化した編集担当の設置など、さまざまな取り組みが不可欠であることを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Springer Natureが発行するScientometricsに論文2本、Wileyが発行するLearned Publishingに論文1本が受理・発行されており、おおむね順調に進んでいると判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでは、ゴールドオープンアクセスジャーナルを対象に分析を行ってきたが、今後はハイブリッドジャーナルにも対象を広げ、ゴールドオープンアクセスジャーナルの論文処理料との比較分析を行う計画である。 また、昨年度に出版社の合併と研究機関のジャーナル発行の出版社への委託を取り扱ったので、ElsevierとSpringer Natureを対象に、合併とジャーナル発行の受託が、自社のジャーナルポートフォリオに与える効果についても分析する予定である。
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Causes of Carryover |
トナーカートリッジや英文ネイティブチェックなどの支出を必要とするものはあったが、13712円では不足するため、次年度に使用を持ち越すこととした。
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