2023 Fiscal Year Annual Research Report
オープンアクセスジャーナル市場における大手出版社の独占力行使の検証
Project/Area Number |
20K01663
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
浅井 澄子 明治大学, 政治経済学部, 専任教授 (00329476)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | オープンアクセス / 論文処理料 / ハイブリッドジャーナル / ゴールドオープンアクセスジャーナル / 転換契約 |
Outline of Annual Research Achievements |
2023年度では、ハイブリッドジャーナルの購読価格が、購読料に加え、オープンアクセスジャーナルの費用を含んでいるのではないかという二重取りの議論を踏まえ、Wileyのハイブリッドジャーナルを対象に、二重取りの有無を購読価格とオープンアクセス料金(論文処理料)の2本の推定式を連立で推定することで検証した。その結果、二重取りの可能性が否定できないこと、論文処理料の水準は購読価格の水準から影響されるが、その逆は明確には成り立たないことが示された。 完全なオープンアクセスジャーナルでは、多くの論文を掲載することが、出版社の収入増加につながる。2番目の本年度の研究課題として、ElsevierとHindawiを対象に、オープンアクセスジャーナルへの論文投稿の決定要因の分析を通じて、論文処理料に対する投稿の弾力性を計測した。その結果、2つの出版社とも、弾力性は非弾力であり、論文処理料を引き上げても、投稿数の減少は小幅であること、すなわち、論文採択率に変化がない限り、論文処理料の値上げは出版社の収入を増加させることを明らかにした。 これまでの4年間の研究を通じて、大手出版社はオープンアクセスジャーナル市場でも影響力を増していること、中小の出版社よりも割高な論文処理料を設定していること、高額な論文処理料が開発途上国の研究者のオープンアクセスでの論文発表の障壁となることを示してきた。本年度の研究結果は、著者側の行動も、大手出版社が存在感を増すことを助長していることも示した。
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