2023 Fiscal Year Research-status Report
小地域レベルにおける地域産業連関表の推計に関する新しいノン・サーベイ法の開発
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20K01680
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Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
中澤 純治 高知大学, 教育研究部総合科学系地域協働教育学部門, 准教授 (30346704)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 地域産業連関表 / LQ法 / CB法 / ノンサーベイ法 |
Outline of Annual Research Achievements |
2023年度の研究実績としては、学会報告として環太平洋産業連関分析学会第34回全国大会(開催場所:大東文化大学板橋キャンパス)会場4「地域産業連関表の作成」セッションにおいて「CB 法を用いた小地域レベルの地域産業連関表の試行」の報告を行った。これは、本研究で実施している小地域レベルの産業連関表の推計方法を総括し、競争移入型産業連関表の推計時にLQ系の推計方法を使用するときの注意点や限界を鑑みたときに、CB(Commodity Balance)法といわれる方法の方が適用可能性が高いことを示す内容である。ただし、移輸出、移輸入、自給率を確定するそれぞれの方に対して検証データが少ないためにまだ実用性については担保できない状況である。また、同セッションにおいて「ノンサーベイ法の精度向上のための都道府県産業連関表の移出入に関する相関分析」についてもCB法やLQ法での推計に関して指定討論者としてコメントを行った。 上記の新しい地域産業連関表の推計方法を検証するための実証データとして、高知県梼原町の移輸出入実態調査(実施は2022年3月)の追跡調査(2023年6月-12月)を実施しデータベースを完成させた。また、高知県黒潮町においても同調査を実施(2024年2月開始)し、2024年度5月末に調査が完了する見込みである。 またこれらの知見を活かし、株式会社八千代エンジニアリングと「調査データによる市町村IO表の精度向上効果の定量化と特別調査の枠組み検討」をテーマに共同研究を開始した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新型コロナ感染症の影響のため、市町村と計画していた移輸出入実態調査の実施が半年から1年程度遅れている。これらは市町村役場のみならず、調査協力をお願いしていた関係諸団体においても新型コロナウイルスの5類移行が行われていても、通常業務に戻れないばかりか、その間の対応事務や新しいリスク対応など、当初、想定外であった事案が続いているためと考えられる。また、調査対象の地域の事業者にとっても移輸出入実態調査に対応できるような経営状態ではなかった。 ただし、一昨年度末から徐々に調査を実施できる状態が見られたため、半年から1年程度の遅れではあるが、計画通り実態調査を実施している状況にある。計画の順番とは逆になるが、地域産業連関表を推計する新しい手法については、理論的に検討する時間があったためこちらの方を優先して行っていたため、総合的に見れば「おおむね順調に進展している」と考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策としては、現在、実施している高知県黒潮町での移輸出入実態調査の完了(5月末)と追跡調査の実施(6月)を完了させ、高知県土佐町での新たな調査を行う予定をしている。モデルを検証するデータとしては、高知県地域間産業連関表の推計時の交易データ(2013年)、梼原町(2022年)、黒潮町(2015年、2023年)、土佐町(2024年)のデータセット、都道府県と県庁所在地のデータセット(12市県)を用いて、CB法の検証を行う予定である。その結果は、環太平洋産業連関表分析学会第35回全国大会にて報告する予定である。またこれまでの知見については環太平洋産業連関分析学会発行の『産業連関』に投稿する予定でいる。
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Causes of Carryover |
人件費・謝金に関しては、新型コロナウイルスのため当初予定していた謝金による移輸出実態調査の実施が困難となったため、調査協力を依頼する黒潮町商工会と相談し、委託による実施に変更した。そのため実施期間と費目に変更が生じた。また旅費に関しては、当初、想定していた海外学会への参加は、上記の調査の遅れや新型コロナウイルスによる学会の対面式での非開催などによって、支出の必要なくなった。ただし、オンラインによる海外研究者との交流等が可能になったため、費用をかけずに意見交換等の機会は以前よりも確保できるようになった。今年度に関しては、産業連関表に関する国際学会・国際会議での報告を予定している。余った旅費の一部は上記の委託費に割り振り、実証データの入手に全力を注ぎたい。
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