2021 Fiscal Year Research-status Report
Gender Diversity and Performance in Corporate R&D
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20K01691
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
牛尾 奈緒美 明治大学, 情報コミュニケーション学部, 専任教授 (20310378)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山内 勇 明治大学, 情報コミュニケーション学部, 専任准教授 (40548286)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 多様性 / ダイバーシティ / 女性発明者 / イノベーション / 研究開発 / 特許 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、昨年度に構築したデータセットを活用しつつ分析を発展させた。特に、これまでに蓄積されてきた多数の先行研究を分類・整理し、本研究の位置付けを明確化したうえで、企業の研究開発におけるジェンダー多様性と技術知識の多様性の関係について実証的な分析を行った。その際、先行研究の課題でもある内生性をコントロールすべく、操作変数法による推定を行った。 分析の結果、単純に女性発明者比率を高めても研究開発の成果(特許出願の質で測定)は高まらないことが確認された。そして、女性発明者比率の上昇は、技術的知識の幅の拡大を通じてのみ効果をもたらすことが明らかとなった。すなわち、研究開発活動においてパフォーマンスを向上させる本質的な要因はタスク型多様性の拡大にあり、ジェンダー多様性はタスク型多様性を高める手段に過ぎないことが示された(この成果については、『研究 技術 計画』誌に投稿中である)。したがって、政府や企業が効率性上昇の観点から、ジェンダー多様性を高める政策・戦略を立案するにあたっては、タスク型多様性の向上を第一義的な目的とすべきであり、その間接的な効果を高めることに注力すべきと言える。その際、社会的カテゴリ理論に基づく負の効果を抑制し、タスク型多様性の正の効果を高めるような工夫が必要であり、そのためには、組織におけるインクルージョンの風土を醸成することなどが重要と考えられる。 そこで、今年度はさらに、質問票調査に基づいて職場におけるインクルージョンの風土醸成のメカニズムや効果についても試行的な分析を行った。それによれば、経営層の行動やリーダーシップがインクルージョンの風土醸成に与える影響は強く、それを通じて職場の創造性も高まることが確認された。この研究成果の一部はJournal of Business Science誌や経営論集(明治大学経営学部)に掲載されている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、因果を特定しうる推定方法を用いた厳密な実証分析を行うことができた。また、インクルージョンの重要性に関しても、試行的な分析を行うことができた点で、当初の計画よりもやや進展している。他方で、新型コロナウィルス感染拡大の影響等もあり、インタビュー調査についてはその規模を縮小し、それに代わり、企業におけるインクルージョンに関連する制度の導入状況等を含むCSR情報のデータベースを利用することとした。この変更自体は研究の進捗にはそれほど大きな影響はないと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、今年度に十分な分析が行えなかったインクルージョンの影響を中心に、より厳密な実証分析を行っていく。そこでは、CSR情報のデータベースを活用し、組織におけるインクルージョンに関する客観的な指標を作成して分析を行う。特に、女性の就業環境に関する制度の導入状況や女性役員の比率などを企業別に時系列で整備したうえで、どのような時にインクルージョンの風土の醸成が促進されるのか、また、そうした風土の醸成度合いによって、女性発明者比率の上昇が生産性に与える影響がどの程度変わってくるかといったことについて分析を行う。 最終年度である次年度は、分析結果に基づくインタビューや学会発表等を積極的に行い、結果の妥当性を確認するとともに、得られたフィードバックを分析に反映させて、最終的な成果をとりまとめていく。
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Causes of Carryover |
新型コロナ感染症の影響により、学会発表や対面でのインタビューを見送ったことで未使用額が発生した。この未使用額については、次年度に学会発表を行い、また、分析結果の妥当性を確認するためのインタビューを実施するために使用する。
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Research Products
(10 results)